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スキルをよみ解く転生者〜文字化けスキルは日本語でした〜  作者: よつ葉あき
海の街、クリスディア

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146.クラース団長の受難


「ミーナが……侍女と一緒に料理を作ってる……だと……?」


クラース団長は驚愕の表情で、ふらふらとしたかと思うと頭を抱えた。そして、何やらブツブツ呟いていた。

よく耳を澄ませてみれば


「……だめだ……絶対にだめだ……。失礼な対応をしてしまったら……最悪、一家全員……処分される……かも……」


全部聞き取ることは出来なかったが、そんなようなことを言っていた。

クラース団長を見て、ダンさんが口を開く。


「お前なぁ、そんなに難しいことばっかり考えてると、白髪どころかハゲるぞ?」


「うるせぇ!! 誰のせいでこうなってると思ってるんだ! ハゲたら慰謝料請求するからな!?

ミーナの手綱を握っておくのはお前の仕事だろうが!」


クラース団長は叫んだ。

叫んだあと、ハッとした様子で私たちを見ると「お見苦しいところをお見せして申し訳ございません」とまた小さくなった。


「あの、大丈夫ですから、本当に気にしないでください。

私は貴族ですが、ミーナたちと仲良くしたくて、私の方から気楽に接するようにお願いしたんです」


いい加減可哀想になってきたので、そう言ったあと、頭を下げた。


「これから先、貴族だからといって威張ったり、理不尽なことを言ったりは絶対にしません。

ミーナたちとは対等な関係でいたいんです。だから、どうか安心してください」


そんな私を見て、クラース団長は青ざめた顔で、慌てて止めに入った。


「おやめ下さい! 分かりましたから、顔を上げてください」



パンっ!


大きい音がして、反射的にそちらを見るとそこには笑顔で手を合わせたロベールさん。

どうやら彼が、手を叩いたようだ。


「はい、そこまで! この話はキリがないから、もう終わり!

正直、俺も……ティアナちゃんとエリザベスさんが貴族だって知った時は、やっぱり怖かったよ。貴族の横暴さは身に染みて知ってたし、出会いのきっかけもあれだったし……何より、ネロたちが処分されるんじゃないかって心配だった。

まだ、知り合ってそんなに経ってないけど……金銭的に助けてくれただけじゃない。俺も子どもたちもたくさん助けてもらったし、優しくしてくれた。

クラース、大丈夫だ。彼女たちは、信じていい」


ロベールさん……っ!


感動しているとダンさんが言った。


「ロベールの言うとおりだっ! あと、この前持ってきた上級ポーションだって、この子たちが用意してくれたんだからな!?」


「……え?」


「あっ!」


クラース団長が驚くと同時に、私はあることを思い出し、マジック(バック)を探る。


取り出したのは、ポーション。

私が作った、下級、中級、上級ポーションだ。


実は初めて【錬金術】で下級ポーションを作ってから、あれから毎日子どもたちが採ってきてくれた素材を使って下級ポーションを作っていたら、

中級、上級まで作れるようになったのだ!

……まだ上級の成功率はあまり高くないけど。


ちなみに中級、上級ポーションの素材は主にロベールさんたちが声をかけてくれた冒険者から買い取った素材を使ったので、普通に購入するよりも、かなりコストを抑えられた。


「みんなが頑張ってくれたおかげで、ポーションをたくさん用意できました。上級も、また追加で10本持ってきたのですが、どうすればいいですか?」


上級ポーションだけで10本。中級、下級の物と合わせるとかなりの量だ。ここで出してもいいけど、運ぶのも大変だろう。

倉庫とかで出した方がいい? と考え、尋ねた。


「また、10本も用意してくれたのか……本当にありがとう。ティアナちゃんっ!」


「よかったな。前回のと合わせて、20本。これだけあればかなり安心だ。な? クラースっ!」


ロベールさんが嬉しそうに安堵の表情を浮かべ、ダンさんはクラース団長の肩を叩いた。


「……クラース?」


喜んで貰えると思ったのに、クラース団長の様子がおかしい。ダンさんが心配そうに彼の名前を呼んだが、耳に入ってないようで、口元を押さえて何も言わない。

そしてその顔色はみるみるうちに悪くなった。


皆が心配そうに見守る中、クラース団長がゆっくりと口を開いた。


「……追加で10本……『この前持ってきた上級ポーション』と合わせて20本って……。


この前持ってきてくれたのは……3本じゃなかったのか?」



「……は?」



先ほどまでとは部屋の空気が一気に変わり、静かな部屋にダンさんの低い声が響いた。

ロベールさんが、硬い表情で言う。


「……今日、門の前で俺たちに会った時……なにか違和感があったんだ。

クラースの性格からして、俺たちに久しぶりに会った第一声は上級ポーションについて聞かれると思ったからだ。なのに、何も聞かれなかった……」


「俺は……上級ポーションが手に入ったという報告は受けた。

だが、持ってきてくれたのは善良な町民とだけで、お前たちが持ってきてくれたなんて知らなかった」


「どういうことだ? 俺たちは確かに、ロベールの後任の副隊長──コルパに上級ポーションを10本預けたはずだ!」



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