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スキルをよみ解く転生者〜文字化けスキルは日本語でした〜  作者: よつ葉あき
海の街、クリスディア

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135.おにぎりの種類


「…………こめ? て、なんだ?」


ダンさんがポツリと言った後、「知ってるか?」とロベールさんに視線を向けるが、彼も首を横に振った。レーヴェも不思議そうな顔をしている。


それに対して、すでに米のことを知っているエレーネさんは「やっぱり、お米作るんですね!?」と笑顔を浮かべる。一方、リズも呆れたようにエレーネさんを見つめながらも、どこか嬉しそうだ。


よしよし……おにぎりの魅力にハマったようね!


私は男性陣の為に説明する。


「お米っていうのは、穀物の一種で、ある国ではパンの代わりに食べる主食なの。……て、言われてもよく分からないわよね?

説明するのは難しいから、とりあえず食べてみて」


そう言って、あらかじめ何個かマジック(バック)に移しておいた、おにぎりを取り出した。


「具のない塩むすびと……鮭、ツナマヨ、昆布、カツオ、明太子、梅があるけど、どれがいいかな?」

「「!?」」


それに反応したのは女性陣だった。


「昆布、カツオ、明太子、梅ってなんですか!?」

「まだ、そんなに種類があるんですか?」


ふたりは驚き、私に詰め寄りくる。私はにっこりと笑顔で答えた。


「おにぎりの種類はこんなもんじゃないわ。今、持ってるのは7種類しかないけど、まだまだあるわよ」

「まだまだある……!?」


エレーネさんの目がギラリと光る。

「でも……」と私は目を伏せて続ける。


「でもね、今は手持ちのお米が少ないの。お米が手に入れば、もっとたくさんの色々な種類のおにぎりが作れるんだけど……」


ガガーン! と聞こえそうな、ショックを受けた顔で、ふたりは固まった。

しばらくして、エレーネさんがロベールさんに近づくと、彼の手を両手で握りながら叫ぶ。


「ロベールさん! 仕事が出来そうな人を紹介して下さい!! 一刻も早く、お米を作りましょう!!」

「いや、だから……米ってなんなんだよ──!?」


ロベールさんの叫びが部屋に響いた。



とりあえず、男性陣の前におにぎりを並べる。

まずはしっかり米の味を感じてもらうために、塩むすびは全員に。あとは、それぞれ違う具材のおにぎりを配った。

「エレーネさんとリズはもう、お米のこと分かってるよね」と、おにぎりをしまおうとしたら泣きそうな顔をされたので、1個ずつあげたらとても喜ばれた。


「……何だ、これはっ!?」


ダンさんが目を見開き、おにぎりを見ただけで驚愕の声をあげた。


「これがお米を使った、おにぎりって料理よ。さあ、食べてみて」

「食べてみてって……どうやって食べるんだ? この黒いのを取ればいいのか??」


そう言って海苔を取ろうとしたので、慌てて止めた。


「ちょ、ちょっと待って! 海苔は取らなくていいのよ!」


私は慌ててダンさんの手を止める。


「えっ? でも、この黒いの……」


「それは『海苔』っていって、お米を包んでるものなの。食べられるから、そのまま食べてみて」


「……そうなのか?」


ダンさんは怪訝そうな顔をしていると、エレーネさんが「ふふん」と笑う。


「ダンさん。おにぎりはこうやって食べるんですよ!」


得意げに言った後、両手で持ったおにぎりに、がぶりと一口食べた。そして──


「……! なにこれ!? すっぱーーい!!」


……どうやら、梅おにぎりだったようだ。


最初は眉間にシワを寄せていたが、すぐに嬉しそうな顔に変わった。


「酸っぱいですが、ごはんと一緒に食べると不思議と美味しいですね! どんどん食べたくなっちゃいます!」


そう言ってもう一口食べると「すっぱい! でも美味しい」と笑った。


「え……? 嬢ちゃんたちは、おにぎり食べたことあったんだろ?」


エレーネさんをぽかんと見ながら、ダンさんが呟くと、リズが言った。


「私たちも先ほど初めておにぎりを食べたんです。おにぎりはとてもたくさん種類があるらしく、エレーネもその梅、という味のおにぎりは初めて食べてるんですよ」

「──はぁ、そうだったのか。よし……」


ダンさんは、おにぎりを持ち直すと、おそるおそる口に運ぶ。そして──


「……!」


口を大きく開けたまま、驚いた表情で固まった。


「お、おい……これは……」

「どう? お米の味が分かった?」

「これは……何とも言えないが……なんだか……やさしい味がするな」


ダンさんがしみじみと呟く。


「えっ、やさしい味?」


私は思わず首を傾げるが、ダンさんが続ける。


「こんな食べ物はじめてだ。──なのに、何故か懐かしいような、不思議な感覚になるんだ。

うん、とても美味いよ!」


そう言って、改めてまじまじとおにぎりを見つめる。


「これって……どうやって作るんだ? 単純そうだが、このふんわりとした食感を出すのが意外と難しそうだな」

「あら、流石はダンさんね! おにぎりはね、とりあえず作るだけなら簡単なの。子供でもできるわ。でもね、ふんわりと美味しく作るには、意外と技術が必要なの。私だって──」

「……うん?」


そこまで言って、もしかしたら……と思った。不自然に止まった私の言葉にダンさんが不思議そうな顔で見てくる。が、私はそれどころじゃなかった。


そう、おにぎりは日本では誰もが家で作るような簡単なものだ。もちろん、私だって何度も作った。

でも、おにぎりはとっても奥が深い。握り方や塩の塩梅で出来上がりが変わり、おにぎり専門店のような、ふわっとした美味しいおにぎりを作るのは意外と難しい。私も有名店をマネして、ふんわり力を込めずに握ってみれば、ボロボロと崩れてしまったし、特に卵黄の醤油漬けなんかは具を上手くごはんで包み込むのが難しかった。


でも今なら──。今の私には【調理】スキルがある!

おにぎり専門店顔負けの、これより数段おいしいおにぎりが作れるのでは!?


目の前にある、美味しいが平凡なおにぎりを見つめた。


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