表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スキルをよみ解く転生者〜文字化けスキルは日本語でした〜  作者: よつ葉あき
海の街、クリスディア

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

129/349

128.おにぎりの魅力


おにぎりの美味しさに感動するエレーネさん。

その横で、リズは何やら複雑そうな顔をしていた。


「……そんなに美味しいんですか?」

「はい、とても!」


エレーネさんが力強く拳を握りながら答えた。

私は、その間に手を素早く動かした。


──シュッ!


「はい、どうぞ」


出てきたおにぎりを受け止め、リズにずずいと差し出した。


リズはじっとおにぎりを見つめた。

私とエレーネさんは、その様子を見守る。


少し警戒しているけれど、私たちの期待に押されるように、ゆっくりと手を伸ばした。


「……では、いただきます」


ひと口、かじる。

もぐもぐ……ごくん。


「…………」


リズの表情が変わった。

さっきまでの警戒心はどこへやら、目を大きく見開く。


「おいしい……っ」


エレーネさんと同じように、驚きと感動の声をあげた。


「最初は味が薄いように思いましたが、噛むほどほんのり甘みを感じますね。あ、これは……魚ですか?」


ふふふ、気付いたようだ。

リズがかじったおにぎりをまじまじと見つめる。それを見て、エレーネさんもおにぎりを覗く。


「なっ! なんですか、これ!? 何か中に入ってますけど!」


驚いて叫ぶエレーネさんの横で、リズは無言でもう一口食べる。


もぐもぐ……ごくんっ。


「中の魚は、脂がのっていてジューシーな味わいですね。少し味が濃いようですが、このおにぎりのお米? と一緒に食べると、とても美味しいですね!」

「でしょ? この白いのは、お米を炊いた、『ごはん』っていうの。ふっくらとしたごはんに魚……『鮭』っていう種類のお魚がよく合うでしょ?」


そう、リズに渡したおにぎりは、ただのおにぎりじゃない。おにぎり(鮭)だったのだ!


「ちょっと待って下さい! 鮭ってなんですか? 私のには入ってませんでした! エリザベス様だけズルいです!」


必死に訴えるエレーネさん。

まあ、そうなることは、予想済みよ。


「大丈夫、エレーネさんにもう一つあるわよ」


私はにっこり笑いながら、新たなおにぎりをエレーネさんに手渡した。


「えっ、本当ですか!? やったぁ!」


エレーネさんは目を輝かせながら、おにぎりを受け取る。そして、一口かじると──


「……!? こ、これ……さっきのと全然違います!」


「ふふ、それはおにぎり(ツナマヨ)よ。ツナっていう魚をほぐして、マヨネーズと和えたものが入ってるの」


「つなマヨ?」


エレーネさんは不思議そうに首を傾げながら、もう一口頬張った。


もぐもぐ……ごくんっ。


「うぅ~~っ! これ、すごく美味しいです!! さっきの塩むすびも美味しかったけど、こっちは……まろやかで、マヨネーズが濃厚で……!」

「でしょ? 魚の旨みとマヨネーズのコクが合わさって、クセになる味なのよ」

「すごい……っ! おにぎりって、色々な種類があるんですね……!」


エレーネさんは感動しながら、おにぎりをしっかりと両手で持ち、あっという間に完食した。





「ああ……美味しかったぁ」


満足げにお腹を撫でるエレーネさん。それにリズも同意するように頷いた。


「ええ、本当においしかったです。

ただ、手掴みで食べるスタイルが、貴族には馴染みがないかもしれませんが、平民には逆に便利でしょうね。カトラリーなしで食べられるのは、日帰りの冒険者にも向いてるかもしれません」


おお、なるほどー。

そのアイデアは、使えそう! と心の中でメモを取った。


「それにしても【錬金術】ってすごいんですね! 異世界の食べ物をぽんぽん出せるとは思いませんでした!」

「……【錬金術】では、こんなことできないわよ」


リズがじとーとした目で私を見てくる。


「普通は、ですけど。作ることはともかく……ティアナ様、さっきおにぎりをステータスから取り出していましたよね?」


思わず視線を逸らす。

でも、隠しても仕方ないので、今起きたことと気づいたことを説明した。





「げぇむ……ですか?」


やっぱり説明するのは難しく、エレーネさんは不思議そうな顔をしていた。一方、リズは真剣な表情だ。


「色々と検証すべきことはありそうですが、とりあえず、分かりました。ただ……」


リズの表情が曇る。

どうしたんだろう、と思っていると──


「おにぎりは無限に出せるわけではないですよね? あんなに食べたがっていたお米だったのに、私がいただいてしまって良かったのでしょうか?」


気まずそうに聞いてくるリズ。

エレーネさんも焦った様子で「私は2個も食べちゃいました……っ」と小さく呟いた。


私は笑顔で答える。


「そんなに気にしないで。まだ、おにぎりは300個くらいあるから」

「さんびゃっ……!?」


エレーネさんとリズが、揃って目を見開いた。


「それにね……」


私はアイテム一覧を開き、あるものを取り出してふたりの前に置く。


「……これは?」

「……草?」


やっぱり、知らないみたいね。


私は優しく微笑みながら、そっと教えた。


「これは“稲”よ。この穂の中に、お米が入ってるの。

これがあれば──お米が作れるわ」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ