115.ルトの誕生日会
「な、なんなんだ、これは⋯⋯っ!」
ふるふると、震えるダンさん。その手には一切れのピザがあった。そんなダンさんに、ミーナは得意げに胸を張る。
「ふっふっふ⋯⋯私が作ったピザは美味いだろ?」
「美味いなんてもんじゃない。こんなの食べた事ねぇよ!」
「そりゃそうよ。ピザはクリスティーナ様の専属料理人が作ってた物だもの」
「マジか! て、そんな料理を俺達平民が食べて、大丈夫なのか? そこに肉料理もあるようだが⋯⋯」
アンナから専属料理人のレシピだと聞いたダンさんは脅え、確認する様に私達を見てきたのでリズが応える。
「もちろんですよ。今回はロベールさん達へのお詫びとルトくんの誕生日会の為に、たくさんの料理を作るようジルティアーナ様のご命令です。
貴族からの命令なので、お肉も遠慮なくお召し上がりください」
「ティアナちゃん達の主だから、良い人なんだろうとは思ってたが⋯⋯本当に素晴らしい方なんだなっ!」
ダンさんのジルティアーナへの称賛に内心照れつつ、私はネロくんとルトくんに話しかける。
「ピザはどうだった? 良かったらおかわりする?」
「俺、肉が乗ったヤツが食べたい!」
「ぼくはコーンのやつッ!」
うんうん、予想通りだ。
ネロくんはミートソースのピザに、たっぷりのチーズとソーセージが乗った、ソーセージピザ。
ルトくんは、じゃがいもにコーンとマヨネーズの相性がバツグンな、じゃがマヨコーンピザが気に入ったようだ。
「こらネロ、ルトっ! なんて口の利き方をするんだ、ティアナ様申し訳ございません」
お貴族様である私に対しての言葉使いなどを気にしたようだ。私はネロくん達にピザを取り分けてあげる。
「大丈夫よ、気にしないで」
「ですが⋯⋯」
「ロベール大丈夫だよ。私も最初お貴族様の屋敷で働くなんてどうなることかと不安だったけど⋯⋯。
ティアナ様たちは私がお貴族様対応に慣れてないと知って、普通に喋ることを許してくれたんだ!」
「⋯⋯子供たちはともかく、大人のミーナは駄目じゃないか?」
親指を立てて言ったミーナに対して、ロベールさんの呆れたように白ワインを口へ運んだ。
「ロベールさんもおかわりどう? その白ワインにはシーフードピザとハーブソルトのフライドポテトが合うと思うわよ」
「ありがとうございます。⋯⋯て、自分で取りますよ!?」
私が取り分けようと動くと、ロベールさんが慌てて止めようとしてきた。思わず腰を上げてしまったようで、片脚ではバランスが悪く体勢を崩してしまった。
「と、危ねぇな。気をつけろよ」
「悪い、ありがとう」
椅子から転げてしまいそうだったがダンさんが支えてくれ、椅子に座り直した。ほっとしながら、私は取り分けたシーフードピザとフライドポテトをロベールさんの前に置く。
「すみません⋯⋯っ、ありがとうございます」
「ロベール、ティアナちゃんにはそんなに緊張しなくて大丈夫だぞ。ミーナが言ったように、ミーナの態度や言葉使いも「そのままでいい」って寛大な方達だからな」
「いや、お前もさすがにティアナちゃんって⋯⋯」
「私が平民と思って普通に接して。ってお願いしたの。出来ればロベールさんも、ダンさんみたいに気楽に接してくれると嬉しいんだけど」
戸惑い気味だったが「じゃ、徐々に⋯⋯」と私の思いを分かってくれたようで、ロベールさんは了承してくれた。
そのままロベールさんの隣に座ったダンさんは、フライドポテトを手に取ると、それをジッと見つめる。
「それにしても、このフライドポテトってのも凄いな。じゃがいもを切って、揚げただけのようなのにエールと抜群に相性がいい。シンプルに塩だけでも美味いのに、ハーブソルトなら白ワイン。ケチャップを付ければ子供にウケる。⋯⋯あ、チーズをかけても良さそうだな」
「さすがダンさん。粉チーズやチーズソースをかけても美味しいし、チーズソースにディップしてもいい。そのチーズソースにニンニクやマスタードを混ぜてもいいわね」
「おかわりっ!」
そんな話をしているとネロくんの元気な声が聞こえた。私がやろうとしたが、アンナが先に立ち上がり「何にする?」と聞く。
「また肉が乗ったやつ! あとシーフードピザとフライドポテトも!」
「ぼくもフライドポテト!」
元気よく答えた。そんなネロくん達をみてロベールさんが苦笑いを浮かべる。
「そんなに食べて大丈夫か? このあとケーキもあるんだぞ」
「大丈夫! だってすげぇ美味いんだもん。ダンおじさん、また今度ピザ作ってくれよ」
固まるダンさん。アンナがピザとフライドポテトをネロくんに、ルトくんにフライドポテトを乗せたお皿を渡す。
「ごめんね。ピザはオーブンが無いと作れないの」
「えー! じゃ、フライドポテトは?」
「フライドポテトは⋯⋯設備的には問題ないけど、ピザもフライドポテトもお貴族様の専属料理人が作った特別なものなの。今回はジルティアーナ様のご好意で作らせて貰ったけど勝手には作っちゃいけないものなのよ」
「問題ないわよ」
え!? と驚きの表情で、アンナとダンさんが私を見てくる。なんかルセルの町でもこんな会話したなぁ。と思いながら続ける。
「レシピの事なら気にしなくていいわよ、特に秘伝にするつもりもないから。良かったら食堂で使ってみて」
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