第一話 ~暗転~
「美濃を如何にして落とすか……」
「殿ッ! 墨俣に城を築くがよいと存じますッ!」
「何ぃ!? 墨俣じゃと!」
「はっ!!」
俺の言葉を聞くと、信長が膝を打った!
「よい考えじゃ! 流石は儂の『懐刀』じゃ!!」
「ははっ! 有難き幸せっ!」
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<令和二年(2020年)5月19日 〇〇県 北陽高校 図書館>
「…… ぱい……」
「…… んぁ?」
「先輩! 起きてください!」
揺り動かされて気づけば、俺は図書館の机を枕に眠ってしまっていたらしい。眼鏡をかけた色黒の女の子が「もぅ!」と言うように頬を膨らませている。
「あぁ、琴美ちゃんか。」
「『あぁ』、じゃありませんよ! いつまで寝てるんですかっ」
俺は信長の伝記を読みながら夢を見ていたらしい。
『織田信長』
戦国乱世を切り拓いた男。桶狭間の合戦で今川義元を討ち取り、斎藤、浅井、朝倉、比叡山などを攻めた男。長篠の戦で武田軍を撃退した男。天下統一目前で、テレビでやってる明智光秀に本能寺で討たれた男。
荒唐無稽、残虐非道と呼ばれるも、魅力溢れる男。
俺の憧れの人物だ。
「信長はいいですけど、テストが終わってからず~っと図書館で寝てるってどういうことです? 昔はもっとカッコよかったのに……」
「え?」
「何でもありません!」
プイと横を向いてしまった。
琴美ちゃんは小学校の頃までやっていた剣道教室の一年後輩の子だ。同じ高校に入学し、高校二年になった俺を「先輩」と呼んで絡んでくる。いわゆる腐れ縁という仲だ。
そんなやり取りをしていると絡んできた奴がいた。
「多喜二く~ん。イチャイチャしてるところ、ごめんね~」
土田だった。細い目で睨みながら太い腕を俺に絡ませてくる。何とかという正体不明の病のせいで皆マスクをして距離を開けて過ごす中、ソーシャルディスタンスをお構いなしに近づいてきた。
「なんだよ。」
「悪い~。また千円、貸してくんな~い?」
「…… 土田。前に『絶対返す』って言ってた千円。まだ返してもらってないんだけど?」
そこに割って入ってきた大柄な男。
「あぁん? 土田が『返す』って言ってんじゃん。貸してやれよ!」
短髪でタラコ唇の飛島だ。
「ちょっと! 図書館でそういうの、やめてくださいっ!」
「おぉ、怖っ。多喜二くんの彼女、怖いんだけど~」
「彼女じゃありませんっ!」
「土田! 飛島! やめろよ!」
俺が二人に食って掛かろうとしたその時だった。
≪ヴィーン!! ヴィーン!!≫
バイブモードにしていたスマホが鳴った。そして、
≪テレンテレン! テレンテレン!!≫
「緊急地震速報。〇〇県で地震が発生。強い揺れに備えてください。」
無機質な音と抑揚のない自動音声が流れる。
「へっ。また誤報じゃねーの?」
「大したことないって」
土田と飛島は気にも止めていない。
俺だってそうだ。机の下に隠れるなんて小学生以来していない。
「先輩……」
不安そうに俺を見つめる琴美ちゃん。
「大丈夫だよ。大したことないと思うよ。」
「でも…… これ……」
おそるおそるスマホの画面を俺に見せてきた。特務機構NELFの地震アプリじゃないか。精度が高いって噂の。
「どれどれ、震源地は……」
俺はスマホの画面を見て目玉が飛び出るかと思った。
「この真下っっ!!? 推定M9.2!?]
その直後、ドガッ!! という突き上げるような衝撃を受けた。図書館にいた俺を含めた四人とも宙を舞った。
「琴美ちゃん!」
俺はとっさに彼女を守ろうと必死に手を伸ばした。そして抱き止めた! 床に落ちた時の衝撃に備える!
だが、いつまで経っても落ちない。それもそのはずだった。
「床がなかった」
地の底が割れ、図書館の床が真っ二つに割れていたのだ!
「うわぁあああああああああああああああああ!!!」
俺達は、真っ暗な底へと落ちていった。
そこに待ち受けている運命も知らずに。
はじめまして(*´ω`) たらい舟と申します。
戦国時代が好きで、小説を書き始めました。
調べることが大変ですが、それも楽しんで書いております。
よろしくれば☆☆☆☆☆評価、ブックマーク登録等、お付き合いいただけたら幸いです。
よろしくお願いいたします。




