久しぶりに王妃様からのお誘い
今日は久しぶりに王城へ上がっていた。王妃様から直々にお茶のお誘いを受けたのだ。断ることはできない。それに私も王妃様が好きだ。優しく、可愛らしく、愛のある人。
本当はミリアさんの手前、殿下の元婚約者である私が城内にいるのはあまりいいことではないのだろうけどね?王妃様はどうも少し寂しいらしい。高貴なお立場にいる方だ。1番誘いたいであろうミリアさんは、まだ王妃様とお茶会ができる程のマナーが身につかないみたいだし。
「ルーシー!よく来たわね、さあ座ってちょうだい!」
にこにこと笑顔の王妃様。だけど……
「王妃様、少しお疲れですか?痩せられたのでは?」
痩せたというか、もっと言うと少しやつれて見える。
王妃様は困ったように笑った。
「そう見える?別に疲れてもいないし、体調が悪いわけでもないの。だけど皆に同じように聞かれるのよね」
「そうですか……問題がないのであればいいのですけれど……」
「ありがとう、ルーシー。心配してくれて嬉しいわ」
今日はガーデンテラスにテーブルを用意してくださっていた。あの、王妃様のために陛下が贈ったバラが良く見える場所。
時戻りして最初に覚醒したときに殿下とここにいたのよね~。あれからもう3年……。あっという間の3年だったな。でも、1度目とは全然濃密さが違う時間だった!もちろんいい意味でね!なんて、私を婚約者にと望んでくれていた王妃様にはちょっと申し訳ないけど。
今日もたくさんのお菓子が並ぶ。む!これは新作!?すっごく美味しそう!
「あなたが来ると知ったパティシエが徹夜で新作をつくりだしたみたいなのよ。……ねえ、いつからそんなに仲良くなっていたの?」
徹夜で!?感激!バルナザールさーん!愛してる!
不思議そうな王妃様。まさか殿下とのお茶会の時間、半分以上はバルナザールさんとお茶してました!とは言えないよね!
私はさりげなーく話題を変える。
「そういえば王妃様、あの一角のバラにまた新しい物が増えていますね?」
「ふふ!さすがルーシー!気付いてくれたのね?最近発表された新種のバラをまた陛下が手に入れてくださったの!」
嬉しそうに微笑む王妃様。
バラが好きな王妃様のために、自国でも他国でも新しい品種が見つかる度にこの庭園に集める陛下。陛下はご結婚から何年経っても本当に王妃様を大事にしている。素敵だな。……愛する人をただ1人一途に想うのは王族の特徴かしら?
でも、もうそれを羨ましいとは思わない。
「あのバラはね、すごく落ち着くいい香りがするのよ?だからいずれはポプリにして売り出すことが出来たらと思うのだけど、まだ数が少なくって。今自分用に1つだけ作ってみたのだけど、どうかしら?」
そう言って控えていた侍女を呼び、小さく可愛いポプリを渡してくれた。王妃様はバラ好きが高じて、自身のブランドとして色々なバラを使った商品を考えては売り出している。もちろん商品は大人気!新作をいかに早く手にすることができるかが貴族のご婦人や令嬢達の間でステータスになっている程だ。
そっと渡されたポプリの香りを堪能する。というか、本当に香りが立っていて侍女が王妃様に渡した時点でふわっといい香りがした。
「確かに、すごくいい香りですね……なんだか懐かしい気持ちになります」
「そうでしょう?あなたが気に入ってくれるものって特に人気が出るのよね!これは期待大だわ。今度、商品にする前にあなたに贈らせてちょうだいね?」
その後も楽しくお茶の時間を過ごした。
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帰りはアルフ様が馬車で迎えに来てくださった。
「アルフ様、わざわざありがとうございます!これ、お土産です」
ふふふ!私は今日も抜かりない!帰る前にばっちりバルナザールさんのところへ寄ってきた。新作のお菓子の感想を伝えに。……そしてお土産のお菓子を貰いに!
甘い物好き仲間のアルフ様は目を輝かせる。
「こ、これは!俺たちの出会いのクッキーではないですか!!」
「あの時のマドレーヌもあります」
「最高だ!ありがとうございます!」
実は私がまた王城でのお茶会に呼ばれていると知って、少し元気がなかったアルフ様。ご機嫌が直ったみたいで良かった!いつか、身分も性別も超えた私の大親友、バルナザールさんにもアルフ様を紹介したいわ。バルナザールさん、王宮パティシエに飽きないかな……うちにこないかな……。
お迎えのお礼も兼ねて、アルフ様のご両親にも食べていただけるように多めに渡しておいた。
「そういえば、ルーシー嬢からいつもと違う匂いがしますね」
「あら、分かりますか?きっと王妃様のポプリですわ」
「ポプリ?」
バラのポプリの話をすると、感心したように頷いていた。それにしても、あの一瞬で香りが残っているなんて本当に香り立つバラね。きっと長く持つだろうし、大人気商品になる日も近いだろう。
アルフ様が不思議そうに首を傾げる。
「なんだかこの匂い、嗅いだことがあるような……?」
「私も同じように感じました。どこか懐かしい気持ちになる香りですわよね」
もしかして、1度目に王城で直接あのバラが香っていたのが記憶に残っているのかな?
これだけいい匂いがするなら、入浴剤にするのもいいかもしれない。今度王妃様にお会いする機会があったら提案してみよう。まあ、王妃様のことだから私が言うまでもなく、その時にはすでに作っているかもしれないけれど……。
「でも、いつものルーシー嬢の匂いの方が好きです。ルーシー嬢って感じがして」
「なあに、それ?どんな匂いなの?」
そこからはアルフ様による私の匂いに関しての謎の熱弁を聞きながら屋敷に帰った。せっかくなのでバルナザールさんのお菓子(我が家用)で少し一緒にお茶をした。
今日はいつにもましてミミリンがアルフ様にべったりで、ちょっと妬けるくらいだったわ?全然私に見向きもしないで、ずーっとアルフ様の側!
はっ!?まさかミミリン、恋のライバルなの……?
「にゃあーん!」




