よくわからない行動の結果の1つ
その知らせを聞いたのはリーリエ様、キャロライン様、エリス様、そしてアリシア様の4人と一緒にカフェデートをした数週間後だった。
「えっ!婚約解消!?」
知らせてくれたのはアルフ様。登校中の馬車の中だった。
「はい、なんでも本当に愛する人を見つけた、などと言って婚約解消を願い出たのだとか……」
何を馬鹿な……!少しだけ、1度目の殿下の姿と言葉が脳裏によぎった。
婚約解消されたのは……エリス様。あの日、ミリアさんを囲んでカフェで談笑していたうちの1人、あの男子生徒が噂の人物だった。
「まさか、その『本当に愛する人』って……ミリアさん?」
「ルーシー嬢も知ってるんですか?」
「私も?」
「はい。実は、最近になって急に数人の男子生徒がブルーミス男爵令嬢と親しくなっているようで」
「今回の人物もその1人だと……?」
アルフ様は頷く。なんだかすごく嫌な感じだ。
エリス様は、大丈夫だろうか……。
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「おはようございます」
「ルーシー様!」
教室に入ると、分かりやすくエリス様の周りにクラスメイトの令嬢たちが集まっていた。
その周りの雰囲気がすごく……ん?明るい?婚約解消の話をしてるはずなのになんで雰囲気明るいの?普通暗くない?いや、落ち込んでほしいわけではないけれど。
「ルーシー様!おはようございます!」
エリス様が分かりやすく明るい……!1番明るい!
「おはようございます、エリス様。あの……?」
言い淀む私を見て、エリス様は少しおかしそうに笑った。
「もしかして、ルーシー様も私の婚約解消の話をお聞きになったんですか?」
「はい……」
「すごい!たかだか子爵令嬢と子爵令息の婚約がなくなっただけの話がこんなに早く皆さんの耳に届くなんて!やっぱり話題の人物が関係していると違いますわね〜」
にこにこと楽しそうに話すエリス様の様子は、特に無理をして元気に振る舞っているなんてこともなさそうだ。どういうこと?あと、話題の人物ってやっぱりミリアさんのことよね?
ふっとエリス様の声色が変わる。
「まさか今更婚約解消なんてことになるとは夢にも思わず……あの人と結婚する以外の未来を考えたこともありませんでしたから……すごく、」
俯き、絞り出すように言葉を紡ぐ。……そうよね、やっぱりいくら元気でいられているからと言って、ことは婚約解消。辛い気持ちがないわけがない。
と、痛ましく思った次の瞬間。
「すごく!すごくすごく!〜嬉しいんですっ!!!」
勢いよく顔を上げ私の手を握るエリス様は、今にも踊り出してしまうのではないかというほどの満面の笑みだった……!喜びを抑えた声だったらしい。(そして抑えきれなかった)
どうやら2人の婚約はエリス様やエリス様の家が望んだものではなかったらしい。
同じ爵位とはいえ、家の格や歴史、どれくらい裕福か、その家の当主の立場などで持つ力は異なる。エリス様のお家、トードリル子爵家は婚約者様……元婚約者様の家よりも格下で色々な事情が重なりトードリル家側からは婚約を回避できなかったのだとか……。
「私とどうしても婚約したい!と本人が望んで婚約を結ぶことになったんです。あの時は絶望で目の前が真っ暗になりましたわ……」
一瞬遠い目をしたエリス様。そんなにその方のことが嫌だったの……。
聞けば傍若無人、自分より格下の者への暴言や暴力、学ぶことが嫌いで能力もあまり高くなく、そんな彼を支えるためにエリス様が子爵家とは思えない程の高度な教育を相手の家から求められていたのだとか。何それ?本人に頑張らせなさいよ!
「自分で望んだだけあって、私に暴力を振るうようなことはなかったんですけど……あまり派手に着飾るな〜とか、地味にしてろ目立つな〜なんてうるさくて。ドレスは深緑か紺以外許されませんでした」
ええ……?
確かにエリス様はすごく可愛らしいお顔立ちで、装いは控えめだ。学園は制服なのでドレスはともかく、髪や化粧なども言われてみればすごく地味。
多分本当に彼女が好きで、他の誰かに取られないようにー!みたいなことだったのかな?とは思うけど……本人が望まぬ婚約でそれはきついわね。相思相愛ならともかく。
ちょっと想像してしまった。アルフ様が私を隠したがって地味な装いを懇願してくる姿……(強制じゃなく懇願で想像してしまう辺り大概だ)うーん、わ、悪くはないかも……!?アルフ様にならそれもまた……おっといけない、また思考が脱線してしまった。
「良かったわね!エリス様!あの男から婚約解消を言ってくる日が来るとは世の中いつ何が起こるか分からないものだわ」
「本当に!これからはたくさんお洒落してもっといい殿方を捕まえましょう!」
シャルロット様とリーリエ様がわいわいとエリス様に笑いかける。
ミリアさん……何を考えてるのか分からないけど、結局被害者的立場のエリス様が喜んでるから結果オーライ、なのか???
その日の帰り、アルフ様に聞いてみた。
「私に地味に目立たない格好してほしいな〜なんて思ったりすることあります?」
「いいえ、全く!」
そうなの?
「どうせ地味に目立たない格好なんてルーシー嬢の美しさ、可憐さ、可愛らしさを全く隠しませんからね……!それに、ルーシー嬢には出来る限り自由に好きなようにしていてほしいです!あなたの明るい笑顔が曇らなければ何でもいいです!……でも欲を言うなら水色のドレスなんてどうですか??」
アルフ様……。
空色の瞳をキラキラさせて笑顔満開のアルフ様に、今度とびきり綺麗な水色の生地でドレスを作ろうと心の中で決めた。
次回!不満たらたらミリアちゃん!です!




