第66話:間話・革命の序曲
ラーゼンが如何にしてここまで登ってきたのかという話です。
ラーゼン・ファリド・プロスペクターが生まれたとき、ユピテル共和国は混乱期に突入しようとしていた。
なにせ大牙海を巡ってキュベレーとの死闘を繰り広げた結果、その勝利の立役者であるはずの『軍神ジェミニ』が、政治に興味はないと言って公的な立場を離れたのだ。
かといって、彼に非があるわけでもない。
そもそもジェミニがいなければ、高い確率でユピテルはキュベレーに滅ぼされていたのだ。
そして、彼に政治ができないことも、彼を知る元老院の者は分かっていた。
むしろ、彼が政界に出てきた場合、彼個人の武力を、元老院では制御できないという恐れすらあった。
元老院議員からしたら、ジェミニが去ったことはどこか胃痛の種がなくなる側面もあったのだ。
しかし、その後のユピテル共和国は、まとめる者もいないまま、拡大した領土の統治に追われ、疲弊した自国の回復まで手を回すのは至難の技であった。
挙句の果てには、今が好機と捕えた周辺諸国が兵を起こし、ユピテル共和国に反旗を翻そうと画策する始末である。
軍神ジェミニは既に公務を退き、元老院の統治下にはいない。
時代は、有能な指揮官を求めた。
そして現れたのが、エドワード・ダンス・インザダークだ。
戦後に上手く不動産を運用し、相当な財力を手にした彼は、その力で執政官に就任。
元老院の指名を取り付け、軍団の絶対指揮権を獲得すると、そのまま周辺諸国を制圧。
危機を救った英雄として、彼は悠々と帰国する。
エドワードははっきりと物を言う人間であった。
そして、はっきりとした門閥派でもあった。
エドワードは現在の混乱した国政状況を何とかするには、元老院という体制を強化しなければならないと考え、その実現のため、民衆派を徹底的に排除した。
具体的には、罪を着せた失脚だ。
無論、えん罪もあったが、元老院議員まで上り詰める者は、誰であれ、多少の悪事はしているものだ。
民衆派の貴族は、そのことごとくが無念の中失脚していった。
中には失意のあまり自殺までした者もいたのだという。
エドワードと門閥派の主導で、元老院は足並みを揃えることに成功し、ユピテル共和国は一応は国としての形を取り戻すことになっていった。
ラーゼンが成人した時分も、まだエドワードと門閥派の時代は続いていた。
当時のファリド一門は、過激な門閥派というわけでもないが、民衆派でもない、穏健な門閥派といった分類であった。
当主の直系であるラーゼンも、若いうちから才覚があると認められ、将来的には重要な公職に就くことになると期待されていた。
実際、当時から若手の出世街道まっしぐらと言われている法務官補佐の役職に就き、彼が政界の表舞台に上るのも時間の問題だと思われていた。
しかし、ここでラーゼンの運命を分ける転機が訪れる。
彼は大貴族にしては珍しく、恋愛結婚をしたのだ。
しかも独断で。
相手は、かつてエドワードに失脚させられたとある民衆派貴族の娘、ヘレネ。
当然、周りは反対した。
民衆派貴族の娘なんかと結婚したら、民衆派と目されるかもしれない。
あるはずの出世街道もなくなってしまう。
実際、エドワードからも、お達しはきた。
離婚をするのならば、おとがめはなしだが、結婚をするのなら法務官はないと思え、と。
当然、誰もがラーゼンは指示に従うと思っていた。
だが、若き銀髪の青年が出した答えは「否」である。
妻のヘレネを愛しているという気持ちもあった。
だが、それ以上に、そんな振りかざすような元老院と派閥の権力で、個人の自由が損なわれるのはおかしいと思ったからだ。
民主主義の最高機関に、他人の恋愛に口を出すような権利はないと言った。
当然エドワードは激怒した。
たかだか、成人したばかりの若造が、何を言っているのかと。
失脚どころの騒ぎではないと感じ、ラーゼンは慌てて逃げ出す。
妻を残し、何人かの従者を連れて自ら首都を離れることにした。
ほとぼりが冷めるのを待つことにしたのだ。
そして、程なく首都に帰ってこれるだろうという打算もあった。
何故なら、エドワードはその時既に60歳。
ユピテル人の平均寿命を越えているのだ。
対してラーゼンはまだ若干17歳。
数年もたてば、エドワードは死亡するだろう。
そして現在の門閥派1強の時代も、エドワードという立役者がいることによって、なんとか成立しているということに、ラーゼンは気づいていた。
民主主義国家で、民衆という勢力をないがしろにするのは不可能なのだ。
こうして、若き日から先見の明を持っていたラーゼンは、首都を離れ、叔父が属州総督をしている南の沿岸都市キリアへと旅立った。
プロスペクター家は、四大氏族に数えられるファリド一門の中でも力を持つ家である。
首都の外にでも頼る宛はあった。
ラーゼンは暫くキリアで過ごした。
当時まだ少年だった後の迅王・ゼノンを見出したのもこのときだ。
ファリド一門の人間は、武芸に優れないことが多いが、その代わりに、才能ある若者を見出すことが得意だった。
ラーゼンもこれに漏れず、彼が登用する人間はそのことごとくがまさに天職とばかりに活躍することになる。まだ少年剣士だったゼノンもその一人だ。
キリアでは、子飼いの少年ゼノンを引き連れて、属州内を旅してまわり、ヤヌス以外の様々な文化に触れて教養を養い、簡単な行商も始めた。それなりに財を蓄えることもでき、小さいながら商会も作った。
旅の最中は、何度も蛮族やならず者に襲われ、ゼノンがいなければ死んでいたであろう事態にも遭遇した。
それらの経験からか、弁論や知性が重要視されていたヤヌスと違い、この世界の根底は『力』というものが支配していると、この時期に学んだという。
ラーゼン自身も強くなるために、キリアでも高名という剣士を招いて剣技を学ぼうとしたが、やはり才能がないと判断し断念。その剣士はそのままゼノンに譲った。
これ以来、ラーゼンはゼノンを自身の力の象徴として、あらゆることに重用していくようになる。
そんなラーゼンの元へ、エドワード死亡の報告が届くのは、2年後のことだ。
意気揚々と首都に帰ってきたラーゼンだったが、国政は想像した以上に混乱していた。
元老院は知らず知らずのうちにエドワードという人物に、権力を委ね過ぎていたのだ。
彼がいなくなった瞬間、門閥派も瓦解し、再び民衆派が台頭してくるようになっていた。
門閥派の中でも中道的立ち位置として、なんとか国政を取り仕切っていたのは、ネグレド・カレン・ミロティックだったが、再び反乱の兆しが見える東方の諸国の制圧のために、ネグレドも首都を離れることになってしまう。
―――この国は、もうだめかもしれないな。
帰ってきたラーゼンは他人事のようにそう思いながら、2年ぶりに会う愛すべき妻と正式に結婚式を挙げ、それなりに幸せに暮らしていた。
エドワードもいなくなり、民衆派も他に台頭している中、彼らの結婚を咎めるような者はいなかった。
門閥派はそんなことに気を回している状況ではなかったのだ。
プロスペクター家は確かに大貴族家であり、ラーゼン以外の家族は政務に携わっている者も多く、門閥派としては大変そうであったが、ラーゼン自身は妻に会うために首都に戻ってきたようなものであり、政治の表舞台に立つ気は失せていた。
プロスペクター家の家督はそのうち弟にでも譲ればいい。
貯蓄もそれなりにあるし、キリアで身につけた商人としてのノウハウもある。
別にそれでやっていけると思っていたのだが―――。
歴史は彼を表舞台に引きずり出した。
まず、最初に、ラーゼンの父が死亡した。
ネグレドの次席幕僚として従軍していたのだが、戦いの中で死んでしまったのだ。
では、と、ラーゼンはキリア総督の叔父に家督を譲った。
叔父も優秀な人物であり、プロスペクター家を率いるには十分である。
しかし、まもなく叔父も死亡した。流行り病である。
のこったプロスペクター家の男児は、ラーゼンと、まだ成人したばかりの弟のみだった。
ラーゼンは迷った。
現在のユピテルの政界は混沌としている。
彼からしたら、元老院という傘は、もうこの国を統治する機構としては小さすぎるのだ。
かといって現在、元老院という機構は、潰すには力を持ちすぎている。エドワードがそうしたのだ。
未だに、民衆派は門閥派に比べると劣勢だ。
そんな中、どうにも、家督を継ぐのは躊躇われる。
何せプロスペクター家は門閥派だが、ラーゼンの妻の家は民衆派だ。
ヘレネの父は、エドワードの死により失脚から出戻り、民衆派の貴族として活動している。
そしてラーゼンは妻と別れるつもりもない。
だが自分には関係ないと言って、まだ幼い弟に家督を押し付けるのも躊躇われる。
―――いっその事、家族みんなをつれて逃げてしまうか。
キリアにはまだプロスペクター家の知己や、ラーゼン自身が立ち上げた商会も残っている。
慎ましくなら、弟も妹も含めて家族全員で暮らしていけるだろう。
そんなラーゼンの悩みに終止符を打ったのは、妻だった。
「あなた。結局家督はどうするのですか?」
ある日そんなことを聞いてきたヘレネに、ラーゼンは考えを打ち明けた。
「・・・プロスペクター家は終わりにして、みんなで移住しようかと思う。キリアだ。道中は不安かもしれないが、ゼノンがいれば何の問題もないさ」
「・・・どうしてですか?」
そんなラーゼンの答えを、妻ヘレネは厳しい顔で糾弾する。
「あなたには、事を見極める才覚と、そして事を成し遂げる力があります」
ヘレネは知っていた。
このラーゼンという男の洞察力を。器量を。度胸を。信念を。
この国が、またとない混乱状態になっているという状況を、彼ならば解決できるのではないかと、ヘレネはそう思っていた。
「買いかぶりすぎだよ。僕は腕っぷしにも自信はないし、商人の方が向いているよ」
「では、何故首都に戻ってきたのですか?」
「それは・・・君に会いたくて・・・」
「ではどうしてかつて、私との離婚を拒否してくれたのですか?」
「それは、君のことを愛しているから・・・」
「そうおっしゃって下さるのは嬉しいです。でも、他にも理由があるのではないですか?」
ヘレネは見抜いていた。
ラーゼンが、心の奥底で、民衆の代表とは名ばかりの元老院という機構に反発していることを。
この国の政治の在り方では、もう先がないと知っていることを。
政界の混乱で最も困っているのが、民衆自体であるという事実に憤慨していることを。
「民衆派も、門閥派も、関係ありません。あなたならきっとできます。どうか、この国を―――国民を、救っていただけませんか?」
「―――っ」
結果的に妻の進言がきっかけとなって、ラーゼンはプロスペクター家の家督を継いだ。
こうして、後に、ユピテル建国以来の恐るべき策士、ラーゼン・ファリド・プロスペクターが歴史の表舞台に姿を現したのだ。
彼は、大貴族という肩書でありながら、民衆派として政界に足を踏み入れた。
彼の目指す先は、門閥派――もとい元老院という機構自体の撤廃である。
現在のユピテルには少数寡頭制が合わないのだ。
となると、門閥派に与すのは、筋が通らない。
民衆がもとめるのは、元老院に代わる新たな機構―――もしくは個人だ。
エドワードや、ネグレド。
派閥が違うのに、国政を運営できる希望が持てるというだけで、国民は彼らに頼った。
だが、本来ならば―――そういった個人は民衆派からでなければならない。
とはいえ、ラーゼンのキャリアは爆発的なスタートダッシュを切ったわけではない。
元々民衆派だったものからは、怪しい目でみられ、門閥派だったものからは、裏切り者と罵られる。
民衆派からの信頼を稼ぐには、地道にコツコツと、意思を表明していくしかない。
ラーゼンが初めて就いた公務は、政務官だ。
公共事業に関わる職務である。
それほど高い地位ではないが、まだ若輩であり、しかも2年も首都を離れていたラーゼンからしたら、寧ろ上々の地位だ。もちろんファリド一門の力を満遍なく使うことになった。
実務能力と、裏からの手回しは抜群であったラーゼンは、他の政務官の同僚も見事に自分の陣営に誑し込み、次々と公共政策に打ち込んでいった。
まず、民衆からの人気取りのための催しだ。
いや、人気はともかく、とにかく知名度を上げる必要があったのだ。
国民の中にラーゼンという名を認知させなければ、まず国政の表舞台に立ったとは言い難い。
武術大会や、詩や陶芸品の品表会。目新しい魔道具による派手な演出のお祭り。
毎月のように何かしらのイベントを行い、そのたびに主催者として名を連ねることにより、ラーゼンの知名度は上がっていった。
元老院は資金を出すのを渋ったので、時には私財すら投げ打って実行した。
10年間近く、ラーゼンはこういった地道な作業に没頭することになる。
なにせ、その公共事業を起こす傍らで、実行のための金策などもしなくてはならない。
時と金は有限なのだ。
その間に、少しずつ政界でも地位を上げていった。
元来、戦争でもない限りは、一気に地位を上げることなどは難しいものなのだ。
努力の甲斐があって、10年経つころには、一介の政治家の1人として、民衆・元老院からも認知されるようになった。
特に、民衆からの人気自体は非常に高い。
かつて「エドワードに離婚を迫られても、断固として拒否した」というエピソードが民衆に肯定的に受け入れられたのだ。
妻の実家の仲介もあって、民衆派もラーゼンを全面的に応援するようになった。
民衆派にとっても、大貴族の1柱が味方に付いたというのは大きいことだろう。
もちろん、認知され、人気があったとしても支持があるかはまた別物である。
実際、当時もっとも支持を集めていたのは、東方諸国を見事に制圧してきた知将、ネグレド・カレン・ミロティックである。
たとえ門閥派であっても、穏健な部類であり、しかも戦功すら立てているとなれば、民衆からの支持も集めやすい。
ラーゼンには戦争の勝利による名声がないのだ。
もっとも、そんなネグレドを警戒していたのはラーゼンではなく元老院だった。
以前、エドワードに権力を集め過ぎた結果、元老院は彼の死と同時に立ち行かなくなってしまったという経験がある。
そのため、いくら門閥派と言っても、個人に力を集め過ぎることに、危機感を抱いたのだ。
そんな折、今度は南方で大規模な海賊による蜂起があった。
しかし、これ以上ネグレドが功績をたてることを恐れた元老院は、それほど目立たない当時の執政官、マキシム・セルブ・プブリウスに海賊の盗伐を命じる。
ラーゼンはこの機を逃すまいと、副司令官に立候補した。
元老院とて、民衆派であるラーゼンに功績をあげさせることの危険性は承知していたが、所詮副司令官であることと、ラーゼンに武官としての才能がない事が有名であったため、許可することとなった。
しかし、結果としては、元老院と門閥派にとっては芳しくないものになった。
マキシム率いる主力軍は海戦において壊滅的な敗北。
上陸してきた海賊たちを、別動隊を率いていたラーゼンが見事に撃破し、そのまま主力軍の残存兵をまとめ上げて、一転攻勢、電撃的な作戦で逆転勝利を収める。
もちろん、この勝利の裏には、当時すでに剣士としては完成されつつあったゼノンの活躍があったことは言うまでもない。
これにより、民からの支持と、充分な戦功を上げたラーゼンは、執政官に立候補。
もちろん、圧倒的な票数で当選する。
執政官は、独裁を防ぐという目的のために、常に2人置かれる。
この年、ラーゼンの相方の執政官となったのは、門閥派だったが、ラーゼンはその相方をものともせずに、次々と政策を実行した。
ユピテル共和国が広大になったことで抱えていた様々な問題が、彼の手腕によって、1年足らずで解決されていった。
彼の任期が終わる頃には民衆からの支持はうなぎのぼりであり、多くの貴族ですら、彼の陣営に鞍替えすようになった。
この時期、さらに配下として天剣シルヴァディすら加えたラーゼンは、まさにユピテル共和国第1の権力者として名を馳せることになる。
一方で、ラーゼンと元老院および門閥派との対立関係も悪化の一途を辿っていた。
ラーゼンが法案を可決させようとすれば、元老院が拒否し、その逆もしかり。
法案を通すために、わざわざ何人もの弱みを握ったり、裏から手を回して脅したりするのはゼノンを使えば可能だったし、いくつかの法案はそうしたのだが、中々に手間だった。
門閥派の中には、ラーゼン個人に、ひどい憎しみを抱くものまで出てきた。
そんな中、ネグレドは、関係改善のためとして、ラーゼンの妹を娶ることを提案する。
ラーゼンは、元老院の橋渡しは必要としていたため、承諾。
ネグレドとの間に盟約が結ばれることになる。
―――しかし。
ここまできて、ラーゼンは思案する。
元老院を壊すには、執政官の身分だけでは足りない。
元老院自体が、元老院を失くすよう採決を取るしかない。
それはつまり、元老院議員全てを民衆派にしなければならないという事だ。
しかしそんなことができるのか?
門閥派の議員を説得なんて、ラーゼンがいくらしたところで無駄だろう。
ネグレドが間に入ることで辛うじて法案は通るが、元老院自体を失くそうだなんて、ネグレドすら賛成はしまい。
ネグレドは制度に忠実な男だ。
―――民衆が望んでいるのに。
多くの民衆が、もう元老院を必要としていないのだ。
必要なのは、強力なリーダーによる、より集権的で、革新的な統治・・・。
つまり独裁者だ。
それが分かっているのに、門閥派は決して独裁を認めようとしない。
いや、分かっているからこそ認めないのかもしれない。
ユピテル人は独裁を嫌う。
別にラーゼンとて独裁をしたいわけではない。
―――だが、このまま弁論と選挙を重ねたところで意味はない。
国土が広くなり過ぎたせいで、選挙すらままならない民主主義国家に、未来などあるはずがない。
焦っていたわけではない。
ラーゼンはまだ若い。
武力による統治機構の破壊は、最終手段だ。
内乱は、何としても避けるべきだ。
内乱で死ぬのは、政治家や、、凝り固まった旧体制の貴族ばかりではない。
大多数の兵士は国民だ。
戦で混乱するのは民だ。
民のために革命をしようというのに、民を犠牲にしては意味がないのだ。
あくまで、正式な手順を用いて機構を変えることに、意義がある。
ラーゼンはそう思っていた。
―――だが、ある事件が、ラーゼンに、覚悟を決めさせる。
息子オスカーがいつのまにか学校に通い始めて暫く経った頃であった。
『妻ヘレネが門閥派に襲われ、怪我をした』
その報告を聞くなり、ラーゼンは慌てて官庁から家に戻った。
妻は無事だった。
肩口に軽い切り傷を負っただけで、すぐに治癒されたらしい。
だが。
「・・・そうか」
唇を噛み締めながら、ラーゼンはこれまでの自分の甘さを理解した。
もう止められないところまで来ているのだ。
―――いいだろう。ならば背負おうじゃないか、その業を。
ラーゼンは壮大な計画を実行に移した。
全ての事柄を1つの目的に向けた、彼にしかできない―――彼にしか背負えない業を―――。
カルティア遠征は、そのスタートラインに過ぎない。
ラーゼンには元ネタにした人物がいます。
似たような話を聞いたことがある人もいるかもしれません。
読んでくださり、ありがとうございました。合掌。




