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異世界転生変奏曲~転生したので剣と魔法を極めます~  作者: Moscow mule
第三章 学校へ行こう・出会い編
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第28話:事件の落とし前

 エトナ失踪事件は、これで終わります。


 エトナ救出から1週間が過ぎた。


 事態は今の所丸く収まったと思われる。


 あの後、警備隊はすぐに到着し、こちらの状況を確認すると、エドモン達を連行していった。

 もちろん、エトナも保護し、俺とヒナを重要参考人として同行を頼んできた。


 多少体はだるかったが、俺も知りたいことが多かったので快く承諾し、警備隊本部まで同行し、見たままのことを報告した。


 後から警備隊の人に聞いた話によると、エドモンは学年で1番優秀という俺を妬んで、傘下に入れるために色々と画策していたらしい。


 しばらくすると、エドモンの目の前にラトニーが現れ、彼に色々なアドバイスをするようになったようだ。

 エトナを誘拐すれば、俺を1人だけおびき寄せることができる、とか、自分の魔法を使えば、その後上手く丸め込んで、犯罪経歴がつかないようにする、とか。


 エドモンによると、自分は誘拐するつもりはなかったが、それが最も有効だとラトニーに言われたため、渋々承諾したようだ。

 誘拐も殺人もする気はなく、とにかく俺を屈服させれればなんでもよかったらしい。


 まあ、年相応といえば年相応か・・・・。


 そして最も俺が気になったラトニーについて。


 警備隊はラトニーを悪霊と睨んでいた。

 悪霊は欲の深い人間の前に現れ、それを増長させて、犯罪を犯させることがあるらしい。


 今回もその一種だろうと思われた。


 その点ではエドモンも被害者と言えるため、彼は、被害者への謝罪と、多額の罰金ののち、釈放されるようだ。もちろん経歴には誘拐の共犯ときっちり残る。

 多難な人生を送るかもしれないが、まあ自業自得だろう。俺からなにか言うことはない。


 まあ本気で俺を殺さなかったあたり、やはり主犯はラトニーと見るべきだろうが、実際に俺に危害を加える計画もあったようだしな。


 そしてどうやら他のエドモン一派は、途中から服従魔法で動いていたようだ。

 全く記憶がないという。


 一応俺の怪我の直接の実行犯はミスワキ君なんだが・・・・。

 まあ服従魔法下ならしょうがないか。

 いや甘すぎるか?


 エドモン邸の使用人たちも、まとめて服従魔法で、動かされていた。

 後から、屋敷の一室で、まとめて気を失っているのが発見された。


 エトナは特に外傷もなく、拘留中はそこそこ丁寧に扱われていたらしい。


 基本的には一室から出ることが出来なかったようだが、食事や衣服は支給されていたので、困ることはなかったそうな。

 でもやはり見知らぬ土地で1人で長時間過ごすというのは、10歳の少女にはこたえたようで、暫くは学校を休んで家で過ごすようだ。


 エトナに関しては、元はラトニーが俺を殺すために利用した節があるので、正直申し訳なさでいっぱいだ。後で本人と家族に謝罪しようと思う。


 そして、俺について。

 警備隊は魔法の能力について高く評価してしまったようだ。


「いや、2人で悪霊を追い払うなんて大したものだ。成績も優秀だというし、将来は優秀な魔法使いになれるな!」


 とは警備隊の隊長の言葉だが、ヒナも含め隊員からは絶賛されまくってしまった。


 前世なら、新聞の一面を飾ったかもしれない。


 俺からしたら、子供のくせに勝手に事件に首を突っ込んだ事について怒られる覚悟くらいはしていたんだが・・・・。


 逆に、ラトニーが俺の命を狙っていたとか、世界の調停者とか言っていた話はあまり理解されなかった。


 命を狙っていたのは、召喚者であるエドモンの意思を増幅させたものだろうが、調停者というのはよくわからない。変わった悪霊だな。と警備隊長は言っていた。


 俺にはそんな事で片付けられるほど簡単な話じゃない気がするが・・・・。


 奴は俺がエドモンに殺されることを、決まっていること、と言った。

 いったい何を根拠に、何を知っているのだろうか。


 単なる悪霊というには、少し謎の残る話だ。


 まあラトニーの言う通りなら、また会う機会があるだろう。できればお断りしたいが。


 ちなみに、我が家の家族は警備隊本部に来て俺と対面するなり涙声で俺を抱きしめた。


「アルぅぅう!!!もう、無茶しちゃっでええええ!」


「おにいぢゃあんー!!しんじゃやだぁあ!」


「アルにいいいいい!!!!!」


 それぞれ母、妹、弟だ。

 彼らは俺に会うなり、叫び声が止まらなかった。

 

 アピウスだけは、


「アルトリウスが優秀なことは知っているが、あまり過信はするなよ。世の中何が起こるかわからないからな」


 と、きちんと大人らしく俺を叱ってくれた。


 もっとも後から、


「しかし、女の子を助けるために、よく頑張った」


 と言ってくれた。

 俺はすごくそれが嬉しかった。


 この後、家族とともにドミトリウス家に行き、俺はエトナの家族に謝罪をした。


「僕のせいで、エトナさんと、ご家族に迷惑をかけてしまい、申し訳ありませんでした」


 エトナの両親は付き合いも長く、知らぬ仲ではないのだが、精一杯礼儀よく、深々とお辞儀をした。


「いいのよ、アル君は悪くないわ。優秀な子は妬まれるものだもの。うちの娘が可愛すぎるのも罪だしねぇ」


 エトナの母は娘ラブだが、案外俺には寛容だった。


 俺はホッと一息ついたが、


「でも命懸けで娘を助けてくれるなんて・・・・将来エトナはやっぱりアル君に任せるしかないわねえ?」


 怒られに行ったつもりなのに、なぜかフラグを立てて帰ってきてしまった。


 あとから母に、


「ちょっとアル! エトナちゃんとヒナちゃん、本命はどっちよ!!」


 と問い詰められたことは言うまでもない。


 さて、概ねこれがここ1週間であったことだ。


 この後2週間ほどしたらエトナが学校に復帰してきた。


「アル君、助けてくれてありがとう!! 私、アル君に似合う女になるよう、もっと頑張るね!!」


 エトナは案外元気になっていたようでなによりだ。


 本当に見つかって良かった。


 そして、さらに1週間ほどでエドモンは釈放された。


 今は方々に謝罪をして回っているらしい。

 やはり根が悪人ではなく、ただ単にプライドの高いお坊ちゃんだったのだろう。


「アルトリウス・ウイン・バリアシオン君。今回は非常に迷惑をかけてしまった。本当に申し訳ない」


 もちろん俺のところにも、親と一緒に謝罪に来て、大仰に土下座をしてきた。

 殊勝なことだ。


「まあ、反省しているなら、あんまり他の人に迷惑はかけないように」


「―――ああ」


 唇を噛むような苦悶の表情をしながら、彼は去っていった。

 

 エドモンの家は、彼の起こした事件については、ほとんど知らなかったらしい。

 息子が長期間学校を休んでいたことすら知らなかったとか。

 ヒナといい、大貴族というのは家族仲が荒んでいるのがデフォルトなのかもしれないが、ともかく、彼はこれから大変だろう。


 なにせ、今回の一件で、エドモンはダンス一門から追放されてしまった。もはやただのエドモン・インザダークだ。

 それは、彼が上級貴族から、ただの一般人になったことを意味する。

 家から勘当されたわけではないようだが、少なくとも、当初思い描いていたであろう、栄光の将来はなくなってしまったわけだ。

 多額の賠償は彼ではなく親が出したものであるし、エドモン自身への罰としては丁度いいのかもしれない。まあ俺からは何も言えない。   


 エトナの家も、謝罪を受けて、許したようなので、とりあえず今回の件はそれで手打ちだ。


 もちろんエドモン党なる一派は解散され、ミスワキを含む全員が通常の生徒に戻っている。

 彼らも、少なからず賠償し、経歴に傷がついた。これからは真面目に過ごしてくれることを願うばかりである。


 と、これでほとんど問題は解決されたのだが、俺にはまだ一つだけやらなければならないことがあった。


● ● ● ●


「ミロティック、この間の礼がしたい。俺にできることはないか」


 俺はヒナにまたしても命を救われてしまった。


 正確に言えば、図書室では死にそうだったと言うだけで実際に死んでいたかはわからないのだが、今回はおそらく彼女がいなければ死んでいたことは確実だろう。


 俺はなんとしても彼女に借りを返さなければならなかった。


「もう、だからそんなつもりで助けたんじゃなかったんだけど」


 まあ予想通りというかなんというか、ヒナは仏頂面でため息をつきながらそう言う。


「いや、そこをなんとかね」


「もう、うるさいわね、先に帰るわよ」


 そう言ってヒナはカバンに手にかける。


 うーむ、また強引にプレゼントでも渡すか、と考えていると


 ふっと思い立ったようにヒナは振り返った。


「じゃあ、これからは、ヒナって呼びなさいよ、アルトリウス」


 言った瞬間、顔を真っ赤にしたと思ったら、


「じゃあまた明日!」


 そう言って早足で帰ってしまった。


 それにしても顔を真っ赤にして、ファーストネームで呼んでくれって・・・・まさかな。



 ともかく、これでようやく、エトナ誘拐事件は幕を閉じる。


 『ラトニー』という青ローブの少年。『召喚魔法』や『失伝魔法』、『調停者』や『特異点』という言葉。

 わからないことはいくつもある。全てが悪霊の残した戯言と判断するべきではないだろう。

 何かが違えば俺の命はなかったわけだし、今後も全く油断ならないな。

 自身の研鑽は怠らないようにしよう。


 まあともかく、ようやく普段の生活が帰ってきそうだ。


「アル君! 帰ろ!」


 教室に入ってきたエトナは俺の腕を掴むと、自分の胸元に擦り寄せてきた。


 この頃は、誰から教わったのか女の武器を最大限に利用してきて困る。


 いや10歳なので流石にまだほとんど平らなのだが、この子はわかってやっているのだろうか。

 

 俺がもしも興奮して押し倒したらどうするのだろうか?

 ・・・・・喜んで受け入れそうだな。よし、この話はやめよう。 


 なんにせよ、彼女がそばにいるというのは安心できる事ではある。

 戻ってきてくれてなによりだ。



 とりあえず区切りといえば区切りでしょうか。

 分かりやすい伏線をまき散らしましたが、暫くは穏やかな学生生活と、アルトリウスを取り巻く恋模様を描きます。


 読んでくださり、ありがとうございました。合掌。

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