第90話 俺、皆とオフ会する
「で、そのイケメン誰よ? その人もハガセンプレイヤーなのよね?」
「邪魔するで。ワイ魔法大国ルギームで大賢者やっとるもんや。宜しくー」
大賢者は俺から1歩前へ躍り出ると、右手を軽く上げ皆に挨拶した。
「邪魔するんやったら帰ってー」
「あいよー、ってなんでや! お前がワイを誘ったんやろ!」
「流石、義理と人情の町の人間ですね……」
「息ぴったりッスね!」
「うわ……、あんま嬉しくねぇ」
「終いにはドツキ回すぞ、ホンマに」
「ねぇ、ちょっと! あたしはコント見る為に来たんじゃないんだけど!?」
イシスさんが声を張り上げながら俺に近づくと、肩を思いっ切りすさぶってきた。
「わかった! わかったから!」
俺はイシスさんから距離を置くき、声を張る。
「今回集まって貰ったのは、ある1つの認識の違いを正そうと思って、呼んだ訳です。先に言っときます。これ100%二手に別れます」
「何よそれ……? どういう事!?」
「イシスさんちょっと黙って! ロイズ君! そもそも俺達の共通点と何だ!?」
「元ハガセンプレイヤーで、皆一度死んでる事……ですか?」
「そうだ! 自称神の球体からこの異世界ローゼスへ転生する様、勧められた! そうだな!? その時に球体の色が黒かった人、挙手!」
手を上げたのは女性陣だけだった。
「やはり、思った通りの展開になったか……」
「どういう事よ!? 説明してよ!?」
「だから、神は少なくとも2体居るって事ですよ。一方黒くてプレイヤーを何故か脅してくる奴。一方は白くてクソ生意気だが穏便な奴ってな具合でね」
「あほくさ、ワイには関係ないな。好きにやってくれや」
「おい、待て! お前にも無関係じゃないだろうが!」
俺は踵を返し、部屋から出ていこうとする大賢者の肩に手を書ける。
「……どうしたいねん? 神に抗って勝てる思うとんのか? やめとけ、あれはヤバい。ヤバすぎる」
「お前……黒いのと面識あんのか」
「あぁ、5000年位前に……俺はあれと一度戦った事がある……。眠りについたのはあれと1戦交えたすぐ後や」
俺は大賢者の前に移動し、両肩を力強く掴む。
「1戦交えただって! 教えてくれ! 弱点は!? 攻撃は通ったのか!? ステータスは!?」
「そこまで確認しとらん……。ワールドエンドを放った影響でくたくたやったし、MPもHPもほぼゼロの状態やぞ? できる事なんぞたかが知れとる。でも、あれはヤバいっちゅう第六感はひしひしと感じたで。だから攻撃を仕掛けた」
「そ、それで……?」
「駄目やった。ダメージ自体がない感じやった。そして……わいは顔を持ってかれた。その瞬間にワープで逃げて、3000年近く眠りに付き、起きたら、わいのユニークスキルである、アンリミテッドクリエイトが発現しとった。最後にもう一度だけ言っとくで? あれに手ぇ出したら、タダでは済まんぞ? お前もこうなるで?」
大賢者は手で顔を覆いゆっくり離すと、そこには皮が一切なく、紅い肉が露出した顔が現れ、目玉が俺を睨め付けていた。
俺の耳元で囁く様に大賢者が喋りだす。
「――うッ!?」
「俺がアンリミテッドクリエイトで最初に作ったものはな? このグロい顔を覆い隠す為の、新しい顔や。おもろいやろ?」
俺は反射的に突き放してしまう。俺から離れた大賢者は再び手で顔を覆うと、元のイケメンに戻っていた。
「それとさっきから取り乱してる、ボンテージのイカしたネーチャンも、あれに何か持ってかれたか?」
「……大切な親友を消された。そういえば貴女は!?」
「私は然程……。言うなれば声? でも、特定のワードを喋ろうとすると口が動かなくなるだけだし、生活に全く支障はないわ」
「ツインテールの貴女は?」
「別にないッスね! でも、脅されたのは確かッスよ! というか、先輩達だけズルいッスよ! 何すか白いって!」
椅子に座っているリズロ君が俺の方を見ながら、首を傾げる。
「そういえばそうですね。何故僕とゲインさんは白かったんでしょう?」
「んな事俺に言われても……。まぁ、俺の旅の目的は、あの白いのにサッカーボールキックかます事だから、そん時に洗いざらい吐いてもらうことにするよ」
「もうええか? わいは帰らせてもらうで。ほな、さいなら」
大賢者はそう言うと俺の部屋から出ていった。
「じゃ、私も帰らせて貰うわ。しかし本当に集めてくれてたとは、思ってなかった。ありがとう」
「良いんすよ」
「私達も、お暇しましょうか」
「そうですね! 僕も見回りの続きしなきゃいけないんで」
大賢者に続き、イシスさんにリズロ君、キズナさん達が部屋から退出していく。
「あの……帰らないの?」
「……ん? あ! 宜しくお願いしまっス! 先輩!」
「え? 居座る気?」
「いや! できれば部屋を与えて頂けると助かるッス! アーサーきゅんの部屋の近くが良いッス!」
「あっ、もう俺んちに住むのは君の中では確定なんすね……。じゃ、こっち来て」
俺はリンを連れて自室を出ると、とある扉の前で立ち止まる。
「1番端の部屋ッスか! 大切に使わせて頂きまッス!」
「うん。まぁ、部屋の備品は勝手に補充されるから好きなだけ使っていいよ。気に入らなきゃ、コンソール弄って見た目変えてもいいから。どうぞ」
俺がドアを開けると、リンが入っていく。
「優しいッスね、先輩! ありがとうございまッス」
リンがドアを閉めたと同時に、画面上に着信ありの文字が浮かび上がった。リズロ君の名前が点滅している。
「もしもし、リズロ君どうした?」
「たたた、大変です! 助けてください!」
「落ち着け! 一体どうしたんだ!」
「今すぐ城に来てください! ゲインさんの力が必要なんです! 巨大な天使のロボットみたいなのが王都に真っ直ぐ向って来ているんです!」
「ロボット……だって? わかった……。すぐ行く」
俺は着信を切り、ホームを後にした。




