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妹を監禁するはずの悪役から、なぜか執着されています  作者: 夏目みや
第一章 妹を守ってみせる

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 それから私は精霊の加護について本を読み漁った。同じく精霊の加護持ちの家庭教師をつけてもらい、光属性について学んだ。せっかくの精霊の加護も、使いこなせなければ意味がない。


 光属性は主に回復の力が強く、魔法治療師などの職業に就くことが多いそうだ。

 あと、光属性が作る薬は効果が倍増するので、薬草士に就くことも。


 ということは、私がこの先、力を高めていけば回復力が強くなり、シアナの病気も治療できるんじゃないかしら?


 これだわ!


 シアナには健康になってもらいたい。万が一エディアルドに会ってしまい、薬のことで付け込まれても、健康だったら、そんな心配ないもんね!


 よし、やるわ。私、この力を使いこなしてみせるから!


 ***


 そして一か月後、私は両親とシアナを呼び出した。


「お話があります」


 神妙な顔持ちで切り出す私を、両親は不思議そうな顔で見つめる。


「私はシアナを連れて、ウィークスの別荘でしばらく休養しようと思います」

「なぜだい? それはここではできないことか?」


 突然の申し出に両親は焦ったみたいだ。いいわ、こんな時のために準備していた返答をすらすらと淀みなく答える。


「まず、ここの王都よりもウィークスの別荘は自然が多く、空気が澄んでいます。それはシアナの体調にはとてもいい効果があるでしょう。それにウィークスは珍しい薬草が比較的手に入ると聞きます。私が採取し、煎じて薬にすれば、その効果は倍増するでしょう。実際に精霊の力を使うので、私の勉強にもなりますし、シアナの体調も回復に向かうはずです」


 我ながら完璧な答えだわ……!


 両親も、反対する理由などないって顔をしている。

 そうして私はシアナと二人、ウィークスの別荘行きを決めたのだった。


 ***


 二週間後、私とシアナは馬車に揺られ、ウィークスの別荘を目指す。


「残念だわ。お父さまとお母さまも来られたら良かったのに」

「仕方ないわよ、お父さまもお仕事だってあるし、お母さまだけ連れてきたら、お父さまがさびしがるわよ」

「それもそうね」


 シアナは肩を上げ、声を出して笑う。


「でも、お姉さまと一緒で嬉しいわ。私のために、ありがとう」

「ううん。いいのよ。完璧に治して、王都に戻りましょうね」


 膝の上で組んでいたシアナの手を取り、ギュッと握りしめる。シアナは嬉しそうに微笑む。


 ……間に合った。


 出発を決めたのシアナの療養もあるが、もう一つ、理由がある。

 それは小説の中では、そろそろエディアルドが動き出す頃だった。

 屋敷に閉じこもりに飽きて、舞踏会に出席するようになるので、鉢合わせを避けたいからだ。


 でもウィークスの別荘だったら大丈夫だ。エディアルドは王都にいるはずだから。


 ここで出会ってしまったら、すべての計画が無駄になる。精霊の加護を手に入れた意味だってなくなる。

 五大属性の精霊の加護持ちになんて、適うわけがない。真っ向勝負を挑んだら、返り討ちにあうだろう。


 そうならないためにも、このまま彼と対面することなく、シアナを守り抜きたい。

 妹を守ること、それがすなわち私の命が繋がることも意味するのだから。


 幼い頃に数回来たことがあるウィークスの別荘は、周囲が森に囲まれている。自然が身近に感じられ、とてもいい場所だ。


「う~ん、空気が澄んでいて、気持ちがいいわね」


 長時間馬車に揺られていたので、降りてすぐに背筋を伸ばした。


「本当、天気もいいし、素敵なところだわ」


 空では鳥たちが羽ばたき、木々の間からは木漏れ日が漏れている。

 ウィークスの別荘から少し離れたところに街もあるので、シアナの体調のいい時など、遊びに行ってもいいかも。在中している使用人が出迎えに来たので、荷物をお願いした。


「私、ここで元気になって帰れるかな」

「なれるわよ」


 明るい未来を信じ、別荘に入った。


* * *


 翌日、朝食を取るため、階下に向かう。


「おはよう、シアナ」

「おはよう、お姉さま」


 今朝のシアナの顔色は悪くない。こうやって毎日顔色を確認するのが、日課になってしまった。


「今日はちょっと街に行ってくるわ。薬草作りに必要な材料を入手してくる」


 それに街がどんなところか、偵察も兼ねている。いつか私もここでの暮らしに慣れたら、シアナを案内したい。


「行ってらっしゃい。私は本でも読んでいるわ」


 シアナに別れを告げ、さっそく街へと向かった。

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