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妹を監禁するはずの悪役から、なぜか執着されています  作者: 夏目みや
第三章 再会

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 ソファの方に足を進め、私を座らせ、目の前でしゃがみこんだ。


「お願いだ。見せてくれ」


 ごくりと喉を鳴らす彼から緊張が伝わってくる。

 これは直接見ないと彼は納得しないだろうと思った。


 肩は難しくても、この程度なら――。


 私は袖口のくるみボタンを外し、そっとブラウスをまくり上げた。


「ほら、どこにも傷跡なんてないでしょう?」


 エディアルドはまじまじと見つめたあと、深いため息をつく。


「良かった……!」


 ひぇっ!


 しゃがみこんだ体制のまま私の腰に腕を回し、そのままギュッと抱きしめた。お腹に彼の顔があたり、くぐもった声が聞こえる。


「あの時、リゼットを傷つけて本当に悪かったと思っている。申し訳なくて、消えてしまいたいと思った。誰よりも大事だったのに――」


 苦悩の声を出すエディアルドは、離れていた間、ずっと苦しんでいたのだろうか。


「大丈夫だから。そんなに気にしないで」


 私は手を伸ばし、エディアルドの髪にそっと触れる。


「リゼットに拒絶されたらと思ったら、怖かった。だが、恨まれても復讐されてもかまわない、ただ会いたかったんだ……!」

「恨んでなんかいないわ。復讐を考えたこともなかった」


 静かに顔を上げたエディアルドと視線がかち合う。


「私のこと、そんなに執念深いと思った?」


 それは私に失礼じゃない。肩を揺らしてクスリと笑う。


「それに、復讐はなにも生まない、って昔からいうじゃない」


 もう終わったことだし、傷跡も残らなかったし、十分すぎるほどの賠償金をいただいた。この件は過去のことだと、とっくに気持ちを切り替えていると告げた。


「それよりも、その姿について聞いてもいい?」


 エディアルドはスッと目を細め、薄く笑う。


「あの件から、俺は深く考えた。俺が女の姿で、世間的には隠された存在だから、リゼットが離れていったと思ったから……力をつけると決めた。誰にも邪魔されず、本来の性別で堂々と外を歩けるようになりたいと強く願った」


 エディアルドは立ち上がると、静かに私を見下ろした。


「俺のおじい様は、平穏な人生を俺に願っていたが、俺の願いは別にあると心に決めてからは、早かった。おじい様を説得させるほどの力、五大属性の精霊の力をコントロールできるようになるのに、必死だった。リゼットと離れ、すぐに髪を切り薬を止め、女性でいることを拒否し、精霊の加護を使いこなせるよう、鍛錬した」


 淡々と口にするが、そう平坦な道ではなかったはずだ。彼の視線から意志の強さを感じとった。


「五大属性の精霊の加護があると告げた時の国王の顔が、見ものだったな。――俺のことを誉れだとか散々口にして、すぐさま息子と認めたよ。それまで俺の存在など、知りもしなかっただろうに」


 エディアルドの母は権力争いを恐れ、極秘でエディアルドを出産し、祖父であるカーライル公爵が世間から隠して育てていた。エディアルドの母は産後、亡くなっている。ふと、なぜ亡くなったのだろうと思った。小説ではそこまで書かれていなかった気がする。


 目の前でスッと膝を地面につくと、私の左手を取った。


「だからもう、俺から離れないでくれ、リゼット」


 そのまま私の手に口づけを落とした。


 ど、どうすんのこれーー!! なんでこうなっているのーー!


 一方の私はフリーズし、動けないでいる。


「リゼット、指輪をつけててくれたんだな」


 エディアルドのクスッと笑う声に我にかえる。


「そうなの、これ、抜けないのよ!」


 大事な母親の形見だというので、今こそ返したい。無理だと思っても、再度指輪を外しにかかった。


「無理だから」


 エディアルドはクスッと笑う。


「えっ?」

「それ、抜けないようになっているんだ」


 な ん で す と 


 今まで何度も外そうと努力したのが、すべて無駄だったというの?

 ちょっと、だったら先に言って欲しかったと、視線で訴えた。


「俺以外の男が近寄って欲しくなかったから」


 サラッと告げた言葉にまたもや耳を疑う。


「今、なんて……」

「ああ、異性としてリゼットを意識しない力が込めてある」


 お、お、お前のせいかぁ~~!


 私にちっとも浮いた話が寄ってこなかった、元凶はお前か、エディアルド。

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