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妹を監禁するはずの悪役から、なぜか執着されています  作者: 夏目みや
第三章 再会

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30

 二年後――。


 私は十九歳になった。


「おかしい。絶対おかしいわ」


 机に突っ伏して、ぐぬぬとうなる私にシアナが微笑みかける。


「そんなに気にしなくても大丈夫よ。いつかお姉さまにも良縁がくるから」

「ちょっと、妹に慰められる姉の身にもなってよ!」


 突っ伏していた机から顔を上げると、シアナに向かって叫ぶ。シアナは失言したとばかりに、舌をペロッと出した。


 私がやさぐれるのも、事情がある。

 シアナは十八歳。私たち姉妹は年頃なのに、求婚の手紙が来るのはシアナだけ。シアナのみ!


 今まで何人にも申し込まれたシアナに対して、私はゼロ! 本当にゼロクリーン、まっさらすぎて嫌になるわ。


 おかしくない? 普通は長女の方から片付くものでしょう? 


 シアナもまだ相手を決めるまでいかないらしく、全員お断りしているが、そもそも選べるほどきているのが、正直いってうらやましい。


「ああ、このままこの地で一生、一人で終えるかもしれない……。そしたら私の屍は庭に埋めて……」

「そんなこと言わないの!」


 悲観めいたセリフはシアナを慌てさせた。


「でも、どうしてかしら? お姉さま、舞踏会でも人気があるのに」


 声をかけてくれる男性はそれなりにいるのだが、その先がないのだ。あったためしがない。ちょっといい感じかな? と、ときめいても、その場で終わる。後日、求婚する手紙が届いたとか、そんなロマンスなんてどこの話。


「私って、口を開くとそんなに性格悪い!?」


 だったら致命的ではないか。シアナは真面目な顔を向ける。


「そんなことないわ。私にとっては世界で一番優しい姉だから」


 慰められて、ため息をつく。


「でも!! 来週の王宮舞踏会は、チャンスだから!! 気合を入れていくわよ!」


 規模が大きい王宮舞踏会、この機会を逃すものか。

 私だって恋愛に憧れるもの。胸のときめきとか経験してみたいじゃない。


「そうだね、頑張っていこうね」


 シアナはグッと手を握るが、あなたはそんなに気合を入れなくても大丈夫だから。


「あっ、でも今回の舞踏会では、なんでも重大な発表があるとか、招待状に書かれていたなぁ」


 思い出したように口にするシアナだが、そんなこと、書かれていたかしら? ななめ読みで日時しか記憶にないわ。


「そうと決まれば、来週の準備をするわよ!」


 シアナと二人、当日の着ていくドレスなどの準備を進めた。


 ***

 

 そしてあっという間の王宮舞踏会の日を迎えた。シアナと二人、磨きをかけて王宮へと向かう。


 さすが王宮なだけあり、とてもきらびやかなムードに包まれている。周囲の人々もお酒が入っているのか、楽しそうな笑い声が響く。人々の熱気と化粧品の香りに酔いそうな中、シアナと並んで歩く。


「あら、リゼット。久しぶりじゃない」


 後方から聞きなれた声がかけられ、振り返ると数人の男性に囲まれているアリッサがこっちを見ていた。 


 うわっ、面倒な人に会ったものだわ。


 反射的に顔をこわばらせる私に近づいてきたアリッサは私とシアナを舐めまわすように見て、クスリと笑う。


「嫌だ、王宮舞踏会なのに、エスコートしてくれる人もいないの」


 悪かったな、あなたと違ってとっかえひっかえするほどいないんだよ。


 大きな胸を主張させるように腕を組む、アリッサ・マートン。マートン家の一人娘で私と同じ十九歳だ。


 長い金の髪を綺麗に巻いて整え、白い肌に赤く色づいた唇。やや釣り気味な目からは勝気さがうかがえるが、なかなかの美人だ。だが、性格があまりよろしくない。


 派手で人にちやほやされることが大好きで、いつも違う男性をはべらせている。私とは相性が良くないので、関りを持ちたくはない相手なのだが、いつもこうやって声をかけてくる。


「それで、誰にも相手にされないから、自分から来たのね。男 あ さ り に」


 大きなお世話だ、私がもてなくてもアリッサには関係ない。私を下に見て、優越感に浸りたいのだろう。


 しかし、男あさりとは言葉が悪すぎるわ。カチンときた私は負けずに言い返す。


「ええ、アリッサこそ、そろそろ一人の男性に決めたらいいんじゃない? その奔放さが、あなたらしいけどね」


 言い返されたアリッサはすぐさま顔がムッとした。


「あなたこそ、全然わかっていないのね。私の価値はこんなもんじゃないわ」


 そこでアリッサはチラリと振り返り、取り巻き達に聞こえないよう、小さな声でささやいた。


「あんな家柄の方たち、私がまともに相手にするわけないでしょう? 私に相応しい方はもっと格上よ。最低でも侯爵家でないと、釣り合わないわ」


 いったい、自分にどれだけ価値があると思っているのか。高すぎる自己肯定感がうらやましいほどだ。面倒になって無反応を貫いた。


「その時は、あの男性たちをあなたに譲ってあげていいわよ」

「その言い方は失礼すぎるわよ」


 クスリと笑うアリッサの相手はこれ以上していられないとばかりに、息を吐き出した。


「じゃ、もう行くわ。舞踏会の夜を楽しんで」


 月並みなセリフを吐くと、アリッサと別れた。

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