表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妹を監禁するはずの悪役から、なぜか執着されています  作者: 夏目みや
第二章 監禁生活

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/63

19

 あきらめて深いため息をつく私の前で、ジェラールの顔が明るくなる。


「ありがとう、リゼット嬢」


 私の手を取り、感謝の言葉を口にした時、横からエディアルドが現れ、その手をパッとつかんだ。


「黙れ、リゼットから離れろ」


 初めて聞く怒りを含んだ声に体が震えた。しかも――。男性と思うほど低かった。

 ジェラールも気づいたようで、ハッと顔をこわばらせた。


「リゼット、喉がかわいただろう? 紅茶を準備しよう」


 だがすぐにいつもの調子に戻ったエディアルドにホッとする。エディアルドはジェラールにチラッと視線をなげた。


「邪魔。リゼットとお茶をするから、出て行って」

「……」


 ジェラールは無言でスッと立ち上がり、膝についたゴミを手で払った。


「しばらく、俺もカーライル家で過ごさせてもらう」

「はっ?」


 エディアルドは心底嫌そうに顔をゆがめる。


「君がなにかしでかさないか見張っていると、カーライル公爵と約束しているし。それにリゼット嬢、なにかあったら相談してくれ。力になれるかもしれない」


 よく言うわ、結局はエディアルドが一番で、私を帰すことができないくせに!


 その後は、ジェラールはエディアルドに背中を押され、部屋から追い出されていた。


「うるさいのに、見つかったな」


 エディアルドは面倒だといわんばかりに、ぽつりとつぶやいた。


 ***


「リゼット、これもいいんじゃない?」


 翌日の朝、ネグリジェ姿のエディアルドが出してきたのは白地の裾に刺繍の入ったワンピース。上質で軽やかな素材で着心地が良さそうだ。


「こっちもリゼットに似合いそうだけど」


 もう一つは薄いブルーの色あいで胸元に大きなリボンがついているワンピース。

 滞在中、エディアルドが服を貸してくれるというのだが、なぜか着せ替え人形になっていた。


 洋服をたくさん持っているエディアルドのクローゼットを見せてもらったが、びっしりと詰まっている。彼は一度袖を通したら、同じものは着用しないそうだ。なんたる財力。


「ねえ、じゃあ、双子コーデしない?」

「なにそれ?」

「同じような服を私とお揃いで着るの。髪型もそろえて」


 提案するとエディアルドの顔が輝いた。二人で白いブラウスと青地にレースの入ったスカートを選ぶ。胸元を飾るリボンは色違い。髪型もそこにつけるリボンも指定した。


 それぞれが服を持ち、着替え終わると部屋に集合する約束をした。

 やがて、着替え終えたエディアルドが部屋に入ってくる。


「リゼット、可愛い~~!!」


 私を一目見ると手を叩き、顔を輝かせて褒めてくれた。


「そ、そうかな」

「うん、すっごく可愛いよ! 似合っている!」


 エディアルドこそ、とんでもない美少女だというのに。クスクスと笑っていると、ジェラールが顔を出す。


「ほら、ジェラール。双子コーデというやつらしい」


 得意げになってジェラールに見せつけた。


「ああ、似合っているよ」


 私に視線を向けて優しく微笑むものだから、ドキッとしてしまう。エディアルドは腕を組み、口を尖らせた。


「やっぱ、いい。ジェラールはリゼットを見ないで」


 ジェラールはまたもや背中を押され、部屋から強制的に退出させられた。


「リゼット、どこへ行く?」


 私の手を握るエディアルドは顔をのぞき込む。その手の温かさにドキッとしてしまう。


「庭園をお散歩しましょうか」


 私たちは花の香りを堪能しながら、散歩をする。エディアルドは腕を絡ませ、私に寄りかかる。


「ジェラールにこんなに早く見つかったのは失敗だったな。いっそ、北の別荘に今から移動するか? いや、それじゃあ、寒いからリゼットが風邪をひく」


 ぶつぶつとつぶやくエディアルドに、たまらず質問してみる。


「私を家に帰してくれるんだよね……?」


 数日遊べば納得して帰してくれる約束だったもの。エディアルドはスッと無表情になり、私を見つめる。


「うん。――でもまだダメ」


 返答を聞き焦りが出るが、表情に出さないようにグッと務めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ