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薬草師と薬師の家(2)


 貴族……というか王族の思考が庶民と違いすぎるためなのだろうか?

 どうやらクラッツォ王国の人たちから見た私は『ゴツい』のに、アイストロフィの人たちには『小柄な女』として見えるらしい。

 不思議だな。

 場所によって私という人間は見方が違うのか。

 だが、この町の人たちもいつか私の力を見れば、『ゴツい』と思い始めるのかもしれない。

 まあ、どちらにしてもベルレンス様が私を気に食わないことには変わりないか。


「まさかそんなくだらん理由で剣聖を追放したのか? 国守はどうしているんだ?」

「クラッツォ王国には聖女もいたので、彼女が国守としての役割を引き継ぐとのことで、私は用済みだったのだろう」

「そんなことがあるのか……信じられんな」

「この世界で五人しかいない英雄を、そんな理由で? その国は大丈夫なの?」


 私に言われてもなぁ。


「私は永久凍国土(ブリザード)を踏破してみたいと思っていたので、特に気にしていないというか……むしろ、国守の役割から自由にしてもらえて幸運だったな、とすら思うというか」

「そういうもんかい? まあ、本人がそういうのならそうなんだろうが……永久凍国土(ブリザード)を踏破したいとは変わっているというかなんというか。だが、なるほどな。それで薬草師になりたいだな」

「うむ」


 私が胸を叩いて頷くと、アマル氏は「危険な仕事だが、剣聖ならなにも問題はなさそうだな』と頷いてくれた。

 つまり弟子入りは許可、ということらしい。


「具体的な話をすると、薬草師ってのは外壁の外へ出て永久凍国土(ブリザード)の手前の森、樹氷の森で薬草を採ってくるのが仕事だ。採ってきた薬草は薬師や冒険者ギルドに卸し、その金で生計を立てている。命懸けだから、薬草の値段はそれなりだ。価格はその時採れた数や状態に左右されるが、一応このくらいが目安になる」


 そう言ってボロボロの紙を差し出される。

 そこには薬草の名前と価格が大まかに記載されていた。

 この紙は写しても構わないとのことなので、紙を一枚もらい、ペンとインクを借りて書き写させてもらう。

 

「本当は現地に行って一つ一つ見分け方を教えたいところだが、足の治りが遅くてな。まあ、歳なもんで仕方ない。とにかく、薬草師は『戦えること』と『薬草の知識』が必要だ。どちらか一つでは成り立たん。あんたの場合戦いは問題ないだろうが、『薬草の知識』がとにかく足らん」

「う、うむ。確かに」

「そこでとりあえずこれを渡しておこう」


 アマル氏が取り出したのは一冊の古びた図鑑。

 薬草の図鑑だ!


「これは七代目聖女が書き記した薬草図鑑。写本は多く出回っているが、これは世界で十冊程度しか残っていない原本の一冊だ」

「き、貴重なものだな!?」

「おうともよ! 我が家に伝わる家宝だ! いいか? くれてやるんじゃあないぜ。貸し出すだけだ! 俺の足が治るまでの間な! これを見て勉強しな! クラゼリもここに載っている。108ページだ」

「108ページ……」


 開いてみると、そこには氷の葉を持つ細長い草が載っていた。

 これがクラゼリ。

 セッカ先生の命を繋ぐ薬の材料。


「セッカ先生の薬の材料は他にもあるのだよな?」

「他のはセッカ様の温室で育てられるものばかりだから、外から採集してくるのは魔植物だ。この地域で外でしか採集できん魔植物は全部で七種類。『クラゼリ』『オルティ葉』『トライブの花』『ジュラレーゼの実』『ブリザードの花』『アクゥエルの雫』『ラセンヨウ』。これらを覚えるのが最優先だ」

「ええと……」

「クラゼリは108ページ。オルティ葉は115ページ。トライブの花は119ページ。ジュラレーゼの実は124ページ。ブリザードの花は131ページ。アクゥエルの雫は140ページ。ラセンヨウは150ページだ」

「メ、メモをさせてほしい」


 この人、すごいな。暗記しているのか。

 それにしても、この図鑑もすごい。

 詳細はもちろんだが薬草の絵が色つきで描いてある。

 間違えやすい薬草と、効果の近い薬草もメモで入っているからわかりやすい。

 それによると――クラゼリは魔力を安定させる効果が高いようだ。

 古代魔法と現代魔法を融合した新魔法を開発したセッカ先生だが、あの人は生まれつき魔力がないため霊魂体(アストラル)――魔力を通して体を動かす機能が働いていない。

 おそらくそれを補う魔法具を稼働させるための自然魔力を安定させるための薬なのだろう。

 他にも魔力を安定させる効果の薬草はあるが、通常の植物と自然魔力で育つ魔植物では効果に天と地ほどの差がある。


「基本的に薬草探しは目当ての薬草の採集できる時間を考えて動く。クラゼリは圧倒的に早朝! 今からじゃあ間に合わんから明日の朝だ。日の出より早く外へ出て、赤い樹氷の近くを探すといい。根本近くから草鋏で切って、種と根は絶対に引っこ抜くな。放っておけば永久凍国土(ブリザード)の魔力を吸って数日後にはまた採集ができるようになる」

「おお……そうか、魔植物は魔力で育つのか」

「そうだ。だから魔力さえあれば無限に採集し続けられる。だが、逆にその土地から離すと育たなくなる。クラゼリは永久凍国土(ブリザード)から溢れる氷の魔力で育つから、町の温室に持ってくると育たん。樹氷の森で採集するしかない」


 そこまで言われて合点がいった。

 セッカ先生が言っていたのはこういうことか。



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