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異世界金融 〜 働きたくないカス教師が異世界で金貸しを始めたら無双しそうな件 〜 #いせきん  作者: 暮伊豆
第3章

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253、魔王のポーション

いきなり倒れてしまったカースを目の前にしてスペチアーレ男爵は動きが取れなかった。


それと言うのも、介抱しようと近づけば白い狼が立ち塞がり威嚇してくるのだ。フォーチュンスネイクも同様に近寄ることを許してくれなかった。


しかし、スペチアーレ男爵は何より酒の出来が気になっていた。あの瞬間、カースから放出された魔力は理解を超えていた。数万倍どころではない、完全に理解を超えたレベルだったのだから。一体酒がどのように変質しているのか。カースの話によると、かなり臭いらしいが、一向に匂ってこない。

未だ栓がしてあるため当然かも知れないが、男爵は気になって仕方がない。カースの容体などよりも、ずっと。


「彼には触らない。だからそこの樽に近寄ることを許してくれないか?」


「ガウ」

「ピュイ」


どうやら通じたらしい。二匹とも首を縦に振った。

男爵はゆっくりと樽に近寄り、魔法を使い浮かせてカースから離れていった。




「よし、セリグロウ。開けてみてくれ。」


「かしこまりました!」


樽の栓を抜く執事。そこから漂う香りは……




「何も匂わないな……」


「ええ……何の匂いもしません……まるで水です……」


「よし、飲んでみるか。」


「お待ちください旦那様! まずは私が!」


毒見を買って出る執事。


執事はショットグラスよりも小さな容器に酒をくみ、ゆっくりと口に含んだ。




「だ、旦那様……こ、これは……」


「これは?」


「ウオボオロロロロオォオゲォーーーー」


口から激しく嘔吐する執事。


「セ、セリグロウ!? 大丈夫なのか! しっかりしろ!」


「グボオオーーーーオゲェ…………」


胃液すらも吐き出す勢いでえずく執事。




十数分後、ようやく呼吸が落ち着いた執事。どうにか意識は保っている。


「セ、セリグロウ、大丈夫なのか?」


「はぁ、はぁ……旦那様……こ、この酒……確かにドルベンの五年でした……はずです……」


「そ、それはそうだろう。お前にそう指示をしたのだから。」


「ところが、私が飲んだのは、全くの別物です……例えるならば劇薬……もしも、半端な魔力を持つ者が飲んだら……危険なほどの……」


「別物? お前はこれを何だと判断したのだ?」


「全く分かりません……ただ、分かることは現在、私の魔力はこの上なく充実しておりますし、腰痛だって少しも感じません……」


「ん? それなら何か? お前は元気なのか?」


「わ、分かりません……吐き気は未だにおさまりません……でも体のどこにも痛みがないんです……」


「意味が分からんな……まあいい、お前は寝ておけ。」


「申し訳ありません……旦那……さま……」


その場に横たわる執事。長年苦しんできた腰痛がもう痛くないとは、どうしたことだろうか?


男爵は自分も飲んでみたくなったが、執事とカースが起きてからでも遅くないと考え、ひとまずは執事を屋敷内に運び込むことにした。




男爵が屋敷に入った五分後、カースは目を覚ました。目は覚ましたものの身動きは取れないようだ。





「カムイ、ありがとな。コーちゃんも。」


「ガウガウ」

「ピュイピュイ」


さすがにやりすぎたかな。実験がてら限界まで振り絞ってみたが。あー頭が痛い。カムイを召喚した時みたいだ。ただあの時と違うのは、汚れ銀のバングルから魔力の回復ができるってことだ。そして少しでも回復できたなら、魔力庫から魔力ポーションを取り出すことができる。


ふう。落ち着いた。市販の魔力ポーションでは一本丸々飲んでも一割も回復しない。でも一割未満でもあれば十分だ。さて、男爵はどこに行った? 空の感じからすると、そこまで長いこと気を失ってたわけではなさそうだが。


よし、ならば酒がどう変質したかチェックといくかね。栓を抜いて……


『水操』


およそ半口分ぐらいの酒を球状にしてみる。匂いはしないが……まあ、飲んでみるか……




味もしない……水じゃんこれ……


でも、魔力は二割近く回復した。これであのクソ不味いポーションを飲まなくていいな。カムイも飲んでみるか? 酒は嫌いでもこれなら飲めるだろ?


「ガウガウ」


では『水操』


カムイの口に合わせて酒球を作る。はい、あーん。


「ガウガウ!」


おお、私の魔力が濃厚に感じられて旨いのか。


「ピュイピュイ」


コーちゃんも飲みたいのね。いいとも。


『水操』


「ビュピュピュイー!」


おいしくてドラゴンになる? どこかで聞いたような言葉だね。


それにしても、私からすれば水なのにコーちゃん達にとっては美味しいのか。意味が分からんが、これで当分の間ポーションに困ることはないな。やはり来てよかった。ところで男爵はどこに行ったんだ?

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― 新着の感想 ―
[良い点] とても面白かったです。 毎日更新ありがたいです。 これからも無理せずに頑張ってください。 [気になる点] 最後のおいしくてドラゴンになるという話を聞いたのは大体何話ぐらいでしょうか。差し障…
[一言] 劇薬という表現も生ぬるいってことですかね。 生物が感じられる味覚・嗅覚の領域を超えたから無味無臭と感じるだけで、本質は別次元の物質になったとか? もしくは、これまでの込める魔力と比例して味…
[良い点] うわぁー ただ物じゃない魔力ポーションができましたね。 これは、何と名付けるべきか。 効果抜群、絶大ですね。 エリクサー以上?
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