276、ウリエンとエリザベス
『フリーター、城を買う 〜格安物件をローンで買ったら異世界のお城でした。しかも契約解除はできないそうです。ちくしょう!〜』を書かれております『きら幸運』さんよりレビューをいただきました!
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姉上の様子を見てこよう。少し心配なんだよな……
いた。通路で倒れ込んでやがる……
「姉上ー、調子はどう?」
「悪いに決まってるわ……」
「治療室には行かないの?」
「行くに決まってるでしょ……肩貸しなさいよ……」
私とアレクで両側から姉上を支えて連れて行く。ギリギリの勝利だったんだな。
治療室はバタバタしているようだ。アンリエットお姉さんが危ないのかな? あの業火球は危ないよな。お姉さんぐらい高い魔力を持ってなかったら一発で消し炭だよな。おじいちゃんの消火も早かったし、応急処置も早かった。死にはしないだろう。
ちなみに姉上は肋骨が折れていたらしい。結構いい装備してるのに折れるとは、中々強力な魔法をくらったようだな。あの時の横から直撃した風球だろうか? 見えなかったけど風球だよな?
「カース、来てたのか。」
「あー兄上。好調だね。このままだと王太子殿下との賭けに負けちゃうよ。困ったなー。」
「はっはっは。エリが勝つかも知れないぞ?」
「無理だよー。どうも兄上が勝った方が姉上には都合が良さそうだしね。」
「僕は負けないさ。エリの調子が悪いなら好都合ってものだよ。」
やっぱ姉上に勝ち目なんかないじゃん。
「よく分からないけど、兄上は好きな女の子っていないの?」
「好きな……子か……」
兄上は黙り込んでしまった。モテる男にはそれなりの苦悩があるんだろうな。
治療室から観覧室へ戻る時にソルダーヌちゃんがいた。
「あらカース君。随分とお久しぶりね。王都に戻ったのに私には会いに来てくれないの?」
「やあ久しぶり。色々あったものでね。一回戦は見てたよ。さすがに相手が悪かったね。」
「まあ、実力不足なのはどうしようもないわ……それより! あの約束はどうしてくれるの?」
何だ? 何かあったか?
「えっと……ごめん。何だっけ?」
「カース、あの時のよ。夕食の件。」
「ああー! ごめんごめん! 思い出したよ! じゃあ今夜どう?」
「もお! 事情は分かってるからいいけど。その代わり一人で来てくれる?」
「いいわよ。仕方ないわね。ただし泊まりはだめよ?」
私より先にアレクが答えてしまった。まあいいか。
「分かったよ。この狼、カムイは連れて行くけどね。いいよね?」
「ガウガウ」
「ピュイー」
あ、コーちゃんが拗ねてる。コーちゃんはアレクに付いててよ。ここは王都なんだから警戒しないとね。
「ピュイピュイ」
「じゃあこの争奪戦が終わったら迎えに行くわ。待っててくれないと嫌よ?」
「分かったよ。さすがにこの前のようなことなんか起こらないだろうしね。」
まあ、起こっても私には何もできないのだが。それより、相変わらずエミリーちゃんは私に厳しい目を向けてくるな。気に入らないならソルダーヌちゃんを諌めろよな。
決勝戦が始まるまではまだまだ時間がかかりそうだな。観覧室に戻ってアレクとイチャイチャしながら待つとしよう。




