表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界金融 〜 働きたくないカス教師が異世界で金貸しを始めたら無双しそうな件 〜 #いせきん  作者: 暮伊豆
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

347/3106

347、アランとダミアン

その夜、両親にあったことを話した。二人とも絶句していた。


「全然放蕩息子じゃないな……」

「よく一人でそんなことしたわね……」


腐っても英雄の血を引いているということか。


「クタナツを発つ前にここに来るって言ってたよ。いつかは知らないけど。」


「変わった野郎だ。まっ、カースが契約魔法をかけたんなら安全だろう。」

「そうね。誰にも解除できないと思うわ。」


毎月上納金を払えって言ってもよかったかも。そしたらマジで一生遊んで暮らせるのでは?


「よし! ちょいとギルドに行ってくる。どんな奴か見てくるとしよう。」


父上にしては珍しいな。まさかタダ酒狙いでもあるまい。言うが早いか父上は出て行ってしまった。朝まで帰らないパターンかな?





一方、城門前の領都騎士団はある程度の情報を聞かされ安堵していた。もし戦争となった場合には真っ先に殺されるか捕虜にされる立場だったのだから。それを思うと遊び呆けるダミアンのことなど気にもならない。むしろよくやってくれたという気持ちの方が強い。

現在は城門から少し北西にテントを張り自由に過ごしていた。クタナツ側から温かい食事の差し入れもあり両者の緊張も多少は緩和していた。





代官は、一旦は中止にしたサヌミチアニ出兵を再び考えていた。サヌミチアニがヤコビニ派の手に落ちようがクタナツには然程関係ない。むしろ困るのは辺境伯だ。

今回の件でも辺境伯がその気になればクタナツ代官の任免を左右することもできた。それでも非を認め穏便な解決を図ったことを代官は高く評価している。ならば多少は辺境伯に協力するのもやぶさかではない。多少の義理がないわけでもないのだから。

何よりヤコビニ派と辺境伯が結びつくと厄介なことになる。まさかそのような事態にはならないとは思うが、世の中とは何が起こっても不思議ではない。辺境では予想外のことが普通に起こるため、楽観視はできない。

今後のことを考えると辺境伯とはより親密にならなければならない。無論、こちらの力を見せた上で、ではある。立場的に代官は辺境伯の部下のようなものではあるが、使い勝手の良い駒と思われては困る。だから今回は毅然と対応したのだ。クタナツの民の安全を脅かすものには容赦しない。辺境において平和とは、そこまでやらないと手に入れられないものなのだ。


代官は副官を呼び、サヌミチアニ出兵を伝えた。






ギルドでは、平民のような格好をしたアランとスパラッシュが杯を交わしていた。


「旦那がここに来るたぁ珍しいこって。」


「おお、カースにコテンパンにやられたバカ息子の顔を見に来たのよ。あいつか?」


「へぇ。しかし旦那も運がねぇ。もう少し早けりゃエロイーズの全裸を拝めたんですぜ?」


「何だと!? あのエロねーちゃんの全裸だと!?」


「あの彫像をご覧くだせぇ。奴の仕事ですぜ。あれで宴会芸ときたもんだ。にくい奴でさぁ。」


そこにはまだ溶けていないエロイーズの氷の彫像があった。芸術を見る目などないアランでも分かるほどの出来栄え。ただの放蕩息子でないことが容易に窺えた。

それは初めて来たはずのギルドで輪の中心になっていることからも推察できる。恐ろしい男だ。


「よう、飲んでるか?」


唐突に声をかけてきた男こそ、当の本人ダミアンだった。


「おう、ゴチになってるぜ! うちのカースが世話になったらしいな。あいつを舐めてると大変な目にあうぜ?」


「おっ、さてはマーティン卿だな? 舐めてるわけねーだろ? どうやったらあんな子になるんだよ。ヤバすぎだろ!」


「ほほう。分かるか? 分かるよな。よし気に入った! じっくり聞かせてやる! 聞きたいだろ?」


それからはダミアンの受難だった。例え知っていたとしても逃れ得ぬ災難だったのだろう。ここまで上手くやっていたダミアンだが、まさかこんな落とし穴があるとは想像もしていなかったことだろう。

結局アランとイザベルの出会いからカース誕生、そして今日に至るまでの話をループで聞かされて撃沈寸前だった。それでも最後まで関心のある態度を崩さなかったのはさすがだろう。

そのせいでアランがいつもより饒舌になり話が長引いたことを自業自得と言うのは酷だろうか。


ちなみに宴会はダミアンがいなくても誰も気にせず楽しんでいた。吟遊詩人はこっそりと『好色騎士の歌』を歌ったりもしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ひょっとして、この部分を境にブクマ増えたりしてませんか? 面白いです。展開も、描写も。 これまでの(言っちゃ悪いが)子供だましの感じが無いです。
2021/04/27 04:02 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ