319、ハッピーバースデーカースⅢ
書き始めてから早半年。
ついにブックマークが100件。
感無量です。ご愛読いただきまして、ありがとうございます。
これからも外されないよう頑張ります。
350話ぐらいで学校を卒業すると思います。
道場内には『カース十歳おめでとう』と横断幕が張ってあった。やばい、またしても泣きそうだ……
しかもアレクが花束を持っている。
「カース、十歳おめでとう。ちゃんと見てたわよ。よく頑張ったわね。」
だめだ、もう我慢できない。
涙が零れ落ちてしまった。
「もう、相変わらずカースは泣き虫なんだから。」
アレクは花束ごと私を抱擁してくれた。ますます泣けるじゃないか。
道場内の二十人ぐらい全員が私を暖かい目で見てくれている。何てありがたいんだ。
そこに遅れて登場したのは……
「カース! 十歳おめでとう! これを使ったらもう迷子にならないよ!」
オディ兄だった。何やらプレゼントを用意してくれたのか。ありがたいなぁ。
「オディ兄ぃ〜。うう、ありがと〜。嬉しいよぉ〜。」
恥ずかしいが嬉しすぎて声にならない。
これは何だ?
「これはね、常にクタナツを指し示す羅針盤なんだよ。」
何だと!?
「カースはどこにでも行ってしまうからね。これがあればどこに行ってもクタナツに戻って来れるよ。」
すごい!? もう絶対迷わないぞ!
「オディ兄ぃぃぃぃ〜!」
何て弟愛に溢れた兄なんだぁぁぁぁー!
もう涙を止めることなどできないっ!
ん!? これほどの性能を持った魔道具?
「ぐすっ、母上……これって相当高性能なんじゃ……?」
「うふふ、カースには分かってしまうのね。かなりの高性能よ。一体どんな魔法工学士にいくらで依頼したのかしらね。」
魔法工学士!? 魔法工学博士とは違うのか!? 他にどんな物を作ってもらえるのだろう?
そんなことよりオディ兄の気持ちが嬉しすぎる。一体どれだけ費用がかかったんだ!?
「さあさあ皆さん、どんどん飲んで下さいね。お酒はたくさんありますからね。」
母上の一言で道場内は飲めや歌えやの大騒ぎとなった。私に酒のことは分からないが、美味しそうな酒がたくさん見える。見た目的にあれは蒸留酒ではないのか? くっ、飲みたいぜ。
キアラはもう寝ているし、コーちゃんはピュイピュイ言いながら父上達とお酒を飲んでいる。羨ましい……
結局この夜、皆さんはどこまでも飲み続けたらしい。私はアレク達と輪になってご馳走を堪能していた。幸せすぎる。なぜこんなにも良くしてもらえるんだ!?
あまりに嬉しかったので、魔力庫から汚銀を取り出してお揃いのバングルを五つ作ってみた。ほんの少しだけ残してたやつだ。
「これに魔力を込めておくと、いざという時に魔力不足で困らないよ。」
四人とも喜んでくれたようだ。手首や足首など思い思いの場所に付けてくれた。また泣きそうだ。
こうして誕生日の夜は過ぎていった。私もアレクもいつの間にか道場の隅で寝ていたようだ。
朝起きてみると、道場の中は荒れ放題だった。きっと皆さん思うがままに暴れたのだろう。あれほど一流の人間が揃っていたのだ、アッカーマン先生やフェルナンド先生を目の前にして我慢できるはずがないだろう。現場を見たかったが……
父上やアッカーマン先生、フェルナンド先生そしてコーちゃんはまだ楽しそうに飲んでいる。その上アステロイドさん達が撃沈している所から察するに……そういうことなのだろう。




