255、自宅までの散歩道
さて、店を出たら今度は休憩がてらお茶だったな。確かにちょうどいいタイミングだし。
「あ”ーー……何から何まで意味が分からんかったぞ……大金貨五枚がただになるかぁ!? あの木はそんなに高いんかよ? 切れっ端って言ってたよなぁー!?」
「高いぞ。例えば、これ持ってみな。」
魔力庫から不動をホイっとね。
「棍か? ぐえっ、なんだぁこの重さは……もしかしてこれさっきのと同じ木なんか!?」
誰かが驚く顔を見るのは気持ちがいいね。
「そういうこと。なんせ神木だからな。ほぼ無敵だぜ?」
アースドラゴンの装甲にすら穴を空けるぐらいだからね。
「もしかよぉ……これ相手じゃ稽古にならねーんじゃ……」
「たぶんな。防御不可能だろうしさ。」
よく気づいたね。一撃もらったら終わりだからね。まあ稽古するんなら使わないけどさ。
「お前こんなクソ重いの振り回せんのか?」
「まあな。」
不動を受け取り、軽く魔力を流す。
「ざっとこんなもんよ。」
体の前や上でぶんぶん回す。風を切る音が聞こえるだろ?」
「お、おお、マジかよ……そんなに軽快に……」
「なかなかやるだろ?」
そしてピタッと止める。こういうのは毎日の稽古が大事なんだぜ?
「魔王もすごかったけどフェリクス様すごい……魔力庫からあっさりときれいな原石が出てきて……」
「すごいのね。原石なんて深山の奥深くでしか見つからないと言われているのに。」
この二人は相変わらず村長の両腕にべったりだな。超イケメンな上に金持ちの匂いもぷんぷんすることだし、もう離れないんじゃないの?
「あっ、ここよ。前から来てみたかったの。」
ほう。私も来た覚えはないな。甘味屋ドゥレーベね。甘い物は嫌いじゃないぞ。
「うげっ、ここかよ……」
「ん? インダルここ知ってんのか? もしかして不味かったりする?」
「いや、ちげぇ……男がこんな店入るの見られたら大笑いされんだろうがよ……」
「そうか? そんならお前は帰っていいぞ。せっかくアレクがご馳走してくれるって言うのになぁ?」
その価値観は分からんでもない。ヒイズルでも甘味屋を出た時に笑われたりしたもんな。馬鹿な奴らだわー。
「い、いや! そんなことねぇ! もちろん俺も入るって!」
「店の前でガタガタ言う方が男らしくないかもな? 入ろうぜ。」
「悪いわね。ご馳走になるわ。」
「女神さんありがとうなのね!」
「ほう。甘味か。」
村長も嫌いじゃなさそうだね。
うん。美味しかったね。私はザクロとオレンジのカクテル。爽やかな甘さとほどよい酸味がいい感じだった。やはり知らない店にも入ってみるもんだね。ちなみにアレクも私と同じカクテルに何とかビネガーってのを追加していた。ビネガー……まだ領都で流行ってるんだろうか。
にんじんちゃんによるとかなり下火らしいが。それでも飲もうと思えば取り扱ってる店はそこそこあるとか。領都にビネガーが流行り始めたのって私達が初等学校の頃だったから……だいたい十年前か。えらく息の長い流行だよなぁ。他に流行る物がないからだったりして?
さて、まだ帰るには早い時間か。でも帰るけどね。帰り道も同じように店を冷やかしながらって感じでさ。
「なっ、なあ魔王……こっちって貴族街、だよな?」
「おう。言ってなかったっけ? うちはこっちだからさ。」
だんだん店が少なくなり立派な建物が増えていく。前の家も貴族街だったけど今の家は貴族街のほぼ中心だからな。
「どうやったら冒険者が貴族街に住めるんだい……」
「魔王さんすごいのね! 同期の誇りなのね!」
村長とのお喋りに夢中だった二人も驚いているようだ。この話さっきの甘味屋でしたと思うんだけどな。さては私の話なんか誰も聞いてなかったってことか?
「まあ、色々あってな。運良く手に入ったって感じかな。」
元はあのババア校長んちだったんだよな。それがまさかねぇ……
「そこを詳しく話せってんだよ。どんだけ悪ぃことすりゃ手に入るってんだよ。」
「そうよそうよ。そういえば魔王ってダミアン様とも仲良いらしいじゃない。」
「だとしたら悪いことしなくても手に入りそうなのね? 最近のダミアン様っていい噂しか聞かないのね。」
ほう。ダミアンやるじゃん。かなり真面目に頑張ってんだろうなぁ。たまにはうちに顔出してんだろうか。
「そろそろだ。お前ら泊まっていくんだろ?」
「い、いいんかよ……そんなら遠慮なく……」
「わ、私、フェリクス様と同じ部屋が……」
「お世話になるのね! フェリクス様と同じ部屋がいいのね!」
にんじんちゃんがぐいぐい来るね。私としては村長がいいならいいんだけどね。
「あ、そうだインダル。稽古がしたかったんだよな。お前幸運だぜ? 来客はお前らだけじゃないからさ。」
スティード君達がいるからね。いい稽古になるぜ?
「お、おお、そうかよ。そんならちっと頼みてぇとこだな。」
さあ、正門が見えた。スティード君達はもう来てるかな?




