254、村長の大根
村長が魔力庫から取り出したのは、青緑に輝く原石。金緑紅石、マジでアレクサンドライトなの!? しかもでかい……これ何カラットだ? 軽く四センチはあるが……確認してみよ。
『闇雲』
店の窓を全て覆い、室内を真っ暗にしてから……
『光源』
マジだ……本物のアレクサンドライトだ。
アレクに超似合う真っ赤に輝いてる。原石の状態でこれなら……カットしたらどこまで素敵に輝くことか。
「本物の金緑紅石だわ……村お、あ、いえ、フェリクス様……まさかこれ程の品を下さると言うので?」
「くくく、この程度の物でよければ持っていくがよい。」
うちの畑で採れた大根でよければ持ってけってトーンだな。
「ありがたく頂戴いたします。」
「ありがとね。遠慮なく貰っておくよ。このお礼はそのうちいい所に連れてくからね。」
「ほう? いい所とな? 楽しみにしておくとしよう。」
具体的にはスペチアーレ男爵の所。男爵もエルフの酒造りに興味津々だったからね。きっとみんなで美味い酒が飲めることだろう。
では、ささっと収納。これほどのアレクサンドライトだからな。私のカフリンクスにするのはもったいない。アレクの髪飾りなんてどうだろう。絶対素敵な仕上がりになると思うんだよね。
「あっ、カース待って。だめよ。それカースのカフリンクスにするんだから。」
「えっ? いや、アレクの髪飾りにしようよ。絶対すっごく似合うと思うよ?」
「だめよ。私の首飾りとカースのカフリンクス、どちらも金緑紅石のお揃いにするんだから。」
あ……なるほど。それは考えてなかったな。なんて素敵なアイデアだ。確かに元々は同じ原石から首飾りと私のカフリンクスを作ったわけだし。
「ごめん、アレクの言う通りだね。それで行こう。そうなると……これでカフリンクスを作るとなるといくらかかりそう?」
明らかに大金貨三枚じゃあ足りないだろ。
「拝見いたします。おお……かなり上物ですね……ふぅむ、これをカフリンクスに……」
店員が考え込んでしまった。
「ちなみにアレク、まだお金ある? 僕はもうほとんどないよ。」
「実は私もなの。でもこれは私が払いたいわ。だっていつもカースから貰ってばかりなんだから。」
「何言ってんだよ。僕の物はアレクの物も同然だよ。だからどっちが払っても変わりはないよ。」
「なら私が払うわね?」
ぐっ……それはその通りだ。
「そ、そうだね。じゃ、じゃあお願いするよ。ありがとね。」
ここはアレクに甘えるとしよう。ありがたいねぇ。
「おそらくですが、大金貨で五枚ほどかかるのではないかと思います。ちなみに地金には何を使われるご予定でしょうか?」
ほう。二枚アップか。大きさの割にその程度で済むなら良心的といったところか。でもまだ地金の分があるしなぁ。
「これよ。本当はこの大半をギルドで売るつもりだったのだけど。手持ちが足りそうにないし。いい値段付けてくれるならここに卸してもいいわよ?」
「あっ、それイグドラシル? いつの間に手に入れたの?」
拳大の塊や板状の物まで結構あるじゃん。これならカフリンクスでも余裕で作れるな。量的には、だけど。
「これはカースの装備を作った切れ端よ。捨て置くにはもったいないから私がもらっておいたの。いずれ役に立つ日が来るかと思って。」
さすがアレク。どこまでしっかりしてるんだよ。指輪とかブレスレットとか、ちょっとした物を作るのにいいかも。
「こ、これは……イグドラシルとおっしゃいましたか……この重み、艶、そして品格……これは困りました」
「切れ端とはいえ遙か北の山岳地帯でしか手に入らない逸品よ。ギルドかこちらか高値を付けた方に卸してもいいわ。」
「もしくはマイコレイジ商会かな。リゼットなら大喜びで高値を付けるだろうね。」
そこいらの冒険者では入手不可能だしね。そりゃあ青天井だろうよ。
「少々お待ちくださいませ。上の者を呼んで参ります……」
さすがの店員さんもギブアップか。軽く白金貨が動くレベルだろうからね。
そこからは話が早かった。アレクが出した分を全て卸すことでカフリンクスの製作費用が無料となった。単純に儲けだけを考えるとリゼットに売った方がいい気もするしギルドで値段を確認するのもよかったんだろうけど、アレクは即決。
ソルダーヌちゃんの紹介ってこともあるし店側の顔も立ててあげたんだろうね。たぶん。
それからデザインの打ち合わせも終わった。今回はアレクにお任せなので特に私が口を出すこともない。出来上がりが楽しみだなぁ。
ちなみに深紅金剛石は今回は見送りとなった。でもいずれ作るであろうアレクに贈る指輪の石候補としては悪くない。私の魔力庫にキープだ。髪飾りにするのもいいなぁ。
アレクって飾る必要が全然ないけどさぁ。でも飾るとなるとそれはそれで美しいからなぁ。いやぁ悩ましいねぇ。




