248、一等星と六等星
まあコルプスがそう言うならそれでいいだろ。まっ、次来たらその場で殺してやろっと。いや違う。人目につかない所で殺してやろう。ここはクタナツじゃないんだし。少しばかり人目を気にしないとね。
「さて、もう少し飲みたかったけど彼を教育しなくちゃいけなくなったからね。これにて失礼させてもらうよ。じゃカース君。また飲もうね?」
「飲むのはいいけど次は奢れよ?」
今回はインダルの奢りだしね。年長者だしギルドのほぼトップなんだしさ。私は奢る気などないしね。
「僕よりよっぽど稼いでるくせに? 金貨二十五枚っていったい僕の何ヶ月分なのやら。いやぁ参った参った。」
ぶつぶつ言いながら消えていった。ズボンが汚れた男を引きずって。インダルに稽古をつけるって話はキャンセルか?
「ふおっふおっふぉ。いやいや面白いものを見せてもろうたわえ。先ほどのあの仕組みは特に良いのぉ。魔力が貧弱な者は反撃どころか抵抗すらできぬということかの。いやいや興味深い仕組みであったわ。」
そこまでの物でもないだろ。そもそもエルフには処刑の概念がないから珍しいってだけだと見たね。ここらの人間社会にはまだ一応ギリギリ処刑の文化があるにはあるからさ。まあほとんど残ってないからみんな珍しそうに見物してたって面はありそうだけど。処刑が見世物になるなんて嫌だねぇ。
でもまあインダルや周囲の反応からしてプロモーションの成果はあったようだな。これで少しは私の顔も売れたんじゃない? それでもしばらく留守にするとまた同じことが起きそうだけど。まあ、別にいいけどね……
「そう? それはよかったよ。いい酒の肴になったかな。」
「うむうむ。それからちと気になったのだが、カース殿は六等星とか言うたの? それはここにいる人間の中ではどれほどの位置付けなのだ?」
「うーん、結構上の方だと思うよ。ほら、フェルナンド先生が四等星って言ってほぼ頂点だしさ。」
一等星と二等星はほぼ名誉ランクみたいなもんだから四等星が実質トップと見て間違いないだろ。
「あれ? お前いつの間に六等星になってんだよ。先導依頼とかよく達成できたなぁ?」
七から六等星に上がるには九等星パーティーが八等星に上がるよう育ててやるんだったか? こういうのって私に向いてないんだよなぁ。
「いや、それ受けてない。普通に指名依頼とか前組合長の推薦とかで昇格したからさ。」
「マジかよ! 指名依頼で昇格ってどんな無茶やらされたんだよ!?」
「えーっと、あの時は……おお、ヘルデザ砂漠って分かるか? あそこに領都よりデカいスライムがいてな。それを退治したぞ。」
下手すりゃ王都よりデカかったんじゃない? 正確に言えば群体だから巨大な一匹ではないわけだが。
あ、退治したってのは嘘か? いや、結果的には間違ってないからいいのか。
「な、なんだぁそりゃ……意味分かんねぇ……そんなバケモンどうやったら退治なんてできんだよ……
スライムだろぉ? 俺ぁカスカジーニ山のですら見かけたら逃げるってのによ……」
「まあ、色々あってな。スライム退治は得意なんだよ。」
ちなみにこの前ゲットしたスライムの魔石は売ってない。一応キープしてあるんだよね。
「色々じゃ分からねぇって……じゃあ前組合長の推薦ってのはどうやって貰ったんだぁ?」
「ああそれか。だいぶ北の方にノルドフロンテってあるだろ? あそこで大襲撃が起こってな。魔物のボスを退治しただけ。なかなかしぶとかったぞ。」
トレントと見せかけてネズミだったりしてさぁ。厄介だったわー。実際はリッチーだったか? しぶとかったよなぁ。まあ私はトドメを刺しただけだがね。
「だから意味分からねぇって……大襲撃ってアレだろ? 魔物の大群がめちゃくちゃ襲ってくるやつ……この世の地獄じゃねーかよ……」
「そんなのお前だって覚えがあるだろ? いつだったか領都だってヤバかったじゃん?」
あれは忘れもしないね……嵐の夜だったか。嫌な事件だったなぁ。自然に発生する大襲撃とは別物だったけどさ。
「いや……あん時俺はただの十等星でよ。ガタガタ震えてるだけだったわ……」
「あらら。まあいいや。要は大襲撃なんてどこにでもあるってことだな。そんなことよりほれ、飲もうぜ? つまらん話はやめてよ。もっと楽しい事を話そうぜ?」
「はっ、そりゃそうだ。魔王と比べても意味ねーもんなぁ。おお、そうだフェリクスさんよぉ。ここにいる中で魔王は間違いなくトップだぜ? 見たところ六等星はいねーし。そもそも魔王に冒険者ランクなんて関係ねーよな?」
「ほう。そうかそうか。さすがはカース殿よの。うむうむ。」
「インダルだったかしら。いいこと言うじゃない。その通りね。カースに冒険者階級なんて関係ないわ。だって歴史上唯一の一等星である勇者ムラサキ公以上の魔力を持つ男だもの。」
はは、アレクがご機嫌になった。勇者ムラサキ以上なのはあくまで魔力総量のみの話だけどね?
「ぐふっ、ゆ、勇者ムラサキ? そ、そうなんか? やっぱ意味分かんねーぞ……」
そうは言いつつもインダルの顔はでれでれ寸前。アレクに名前で呼ばれる男なんて世の中にあんまりいないからな?
おまけにアレクのアルカイックな笑顔にやられちゃったか。これ本気のスマイルだったら気絶もんだな。おやおや、酒が進んでるじゃないか。アレクったら罪な女だねぇ。笑顔一つで男を酔わせてるね。
「ほれ、もっと飲め。つーか場所変えて飲まないか? もっとじっくり腰据えて飲める店でさ。今度は俺が奢るぞ?」
さっきゲットした金貨があるしね。少し腹が膨れたもんだから稽古とかする気分じゃなくなったという理由もあるが。
「ちょっと! さっきから聞いてればひどいじゃない!」
「ちょっと悲しいのね。」
ん? いきなり誰だ? 女が二人……




