246、カースのプロモーション活動
アレクも戻ってきたし、改めて……
「じゃあ同期に乾杯。」
「お、おお! 魔王に乾杯!」
「従兄弟同士に乾杯。」
「久しぶりの領都に乾杯ね。」
「ふむ、乾杯。」
「ガウ」
おっ、これはエールか。冷たくて美味しい。冷やしてあるなんて珍しいじゃん。
ちなみに酒場に着く前にあの三人組は麻痺を解いて、おまけで床はきれいにしておいた。三人とも呆然としたままだったけどね。臭ぇーからさっさと消えろよな。
「ぷはぁー! これうめぇな! この夏はもっと冷たくするらしいぜ?」
「ほう、そりゃいいな。じゃ、話を聞かせてもらおうか。お前んとこが解散した経緯をさ。」
そこまで興味はないんだけどね。まあ、この場の話題ってことで。
「あぁ、大したことじゃねー。他の二人がビビっちまってな。」
「ああ。あるあるだな。強い魔物とでも遭っちまったのか?」
「おぉ、四メイル級のブルーブラッドオーガにな。三人がかりでどうにか一匹だけ仕留めたんだがよー。すぐ二匹目が来やがってな……命からがら逃げたってわけだ。二人とも致命傷二歩手前って感じでよ。逃げてる最中はマジで生きた心地がしなかったぜ……」
「あー、ブルーブラッドオーガか。ムリーマ山脈にでもいたのか? むしろよく一匹目に勝てたな。お前の歳なら上出来なんじゃん? 二匹目からも三人とも逃げ切ったんだろ? 生きてたんなら上等だろ。」
生きてれば勝ちだからな。二人が死んでパーティーが自然と消滅ってよりよっぽどマシだよ。
「意外に優しいこと言ってくれんだな。解散したばっかの頃は結構笑われたんだがよ……」
「ぷっ。それを笑う奴ってさ、自分が危ない時でも妙な意地張って逃げなかったりするんだよな。そこで思い出してみな。そん時笑った奴で今も生きてる奴っているのか?」
まぁ自分の時は平気な顔して逃げるって奴も多いだろうけどな。
「あ……どうなんだろうな。言われてみりゃあ最近見てねー気がするぞ。」
「そんなもんだろ。さっきの三人組もそうだけどさ、逃げないといけない時に逃げられない奴は早死にするんだろうぜ。」
さっきの三人組も領都の冒険者としては死んだようなもんだろ。二度とデカい面できないよな。まだ素直に決闘でもしといた方がマシだったかもね。私が面倒だからやらなかったわけだが。
「じゃあカース君は最近上手く逃げた話はあるのかい?」
「最近……何かあったっけ? アレク覚えてる?」
「ないわね。カースはアースドラゴンも正面から仕留めたもの。エメラルドドラゴンや白王龍だってそう。カースには意味のない質問ですわね、副長?」
「おや、アースドラゴン? 先ほど出してくれた素材の中にはなかったようだが? 意外にケチなところもあるんだね? 気になるんだけどなぁーー?」
「ここにばかり卸すわけにはいかんだろ。俺はクタナツの六等星なんだからさ。」
コルプスの野郎まさか、私の懐具合を探るためにそんな質問したのか? さすがに偶然とは思うが。それにしてもこいつ……仲良くする気ないだろ。どこが従兄弟だよ。思いっきりギルド員ヅラしてんじゃん。素直にお願いされりゃあ私って結構聞いちゃうってのに。
「つーかちょい待てよ……アースドラゴンって何だよ……その後も何かよく分かんねーけどヤバそうな名前が聞こえたんだがよ……」
「まあ、ドラゴンだよ。ムリーマ山脈にもいるだろ?」
「見たこともねーよ……ぜってぇ遭いたくねーよ……」
「まあ大抵のドラゴンは危ないもんな。全方位ブレスなんて基本的に逃げ道ないし……ん?」
私達の周囲がやけに静かだと思えば……どいつもこいつも私達の話に聞き耳を立ててやがる。心なしかドーナツ状に囲まれてる気もする。席を動かしてまで……
そんな大した話はしてないぞ?
「そういや話を戻すけど、お前今ソロなんだったよな。何系の依頼が多いの?」
「んー、普通に街中の指導系とかここ周辺の護衛系だな。下級貴族や商人の子供に剣術を教えたり行商人の護衛をすることが多いな。」
おお、やるじゃん。堅実にやってそう。思えば私も下級貴族の子供だったわけだが、兄上のついでとはいえフェルナンド先生に指導してもらったのはラッキーだったよな。持つべきものは偉大な両親って……ん? ちっ、臭ぇな……
楽しく食事をしてるってのに。ボケが!
『金操』
「あぎゃいいいいいっ、ぐうぅっっ……」
この、文字通りくそったれが……
恥も外聞もなく殺しにきやがった。馬鹿が……せっかく命は勘弁してやったのに。
自分の足でも刺してろ。
「さて副長よぉ? 今こいつを殺しても文句ないよな?」
「ぐっ、ぐあああああ!」
うるせぇよ。そして臭ぇよ。
『浄化』
くそったれの下半身をきれいにしてやるよ。どうせ後わずかの命なんだからな。
「そうだね。さすがに庇いきれないね。できれば汚さないように頼めるかい?」
「そん、な、副ちょ……いぎっ……」
本来なら同じ領都のギルドってことでお前を庇いもするんだろうがな。その段階はもう過ぎてんだよ。ほんっと馬鹿な奴。
さて、この際だから私も少しばかりプロモーション活動といこうかね。通常プロモーション活動とは金がかかるものだが、逆に少し儲かるかもな素敵アイデアを思いついたからな。




