242、フランティア領都のギルド
ギルドにした。無駄に贅沢をすることもあるまい。たまにはギルドの安い早い美味い飯を食うのも悪くないしね。
「ほう、ここは? やけに臭い人間が多いではないか。」
血と汗と魔物の匂いが充満してるのがギルドあるあるだよなぁ。楽園の凄腕どもはみんな清潔にしてるけど。あっちには無料の風呂もあるしね。
「ここはギルドと言って冒険者達が集まる所だよ。ここで昼食にしようよ。あ、もし絡まれても殺したりしないでよ?」
「ほう? ここには無法者でも現れるのか?」
「うん。バカな無法者がたくさんいるからさ。軽く痛めつけるのはいいけど殺さないでね。」
私が言うなって話だけどさ。でも私だって最近は穏便に済ませてることが多いんだし言ってもいいだろ。
うーん、この時間にしては混んでるなぁ。やはり好景気なのか。
「ふむ。分かったぞえ。人間の法は分からぬが上手くやれば良かろう。」
「頼むね。じゃあフェリクスとアレクは先に食堂で席取っといてくれる? 注文も任せるよ。」
「ええ、分かったわ。じゃあフェリクス様、行きましょ。あちらですわ。」
「うむ。」
うわぁ……あの二人が並ぶとやべぇよ……
マジで王子とお姫様じゃん。ギルド中の視線を集めまくり。場違いも甚だしい二人だぜ……うわぁ自然と人混みが割れていくし。
「ガウガウ」
なんだよカムイまで行っちゃうのかよ。お前はこっちにいろよなぁ。まったくもう。さて、並ぼ。
ふーん、見た感じ私より歳下も少しはいるんだね。応援したくなっちゃうよ。中古の装備に前向きな眼差し。頑張って欲しいね。
「ぎゃははは! 何モンかと思ったらあいつだけ並んでやがんぜ!」
「ぎひひひひ! あんなカッコして小間使いかよ!」
「げひゃひゃっ! みーじめー! 言ってやんなよー」
あらまぁ。これは珍しいパターンだ。直接絡んでくるのではなくて遠くから指差して笑うだけとは。これって文句言いに言ったら『おめーのことじゃねーよ』『なに勘違いしてんだよ』『自意識過剰なんじゃねーの?』って言われるパターンだ。初等学校であった気がする。地味にストレス溜まるやつなんだよな。
「ぎゃははは! 気づいてやがんなぁ? 下っ端はつれーなぁ?」
「ぎひひひひ! 文句あんなら来いやぁ? でも並んでねーとご主人様に怒られちゃうぜ?」
「げひゃひゃ! かっわいそー! ほんとのこと言ってやんなってー」
ああ、私が代わりに並ばされてると思ってんのか? だから列を外れられないだろうと思ってイジってきてんのか。だっせーなぁ。反抗できない相手にしか絡めないのかよ。
とりあえずじーっと見てやろ。私は別にどうしても外せない用で来たわけじゃないからな。いつでもやってやんぞ?
「ぎゃははは! こっち見てんぜ! おめー相手してやれよ?」
「ぎひひひひ! 嫌なこった! あんな弱そーな奴だぜ? 泣かれたらどーすんだぁ?」
「げひゃひゃ! ひでーな! おめー泣かすんじゃねーぞ!」
かっちーん、とは来ないが……どうしてくれようか?
列が進む。とりあえずもうちょっと見てよう。思いっきり見下した目と角度で。
「ぎゃははは! こっち見んなってんだ! いじめちゃうぞ?」
「ぎひひひひ! 冒険者ぁ強ぇーぞ? 気ぃつけた方がいいんじゃねーかー?」
「げひゃひゃ! やめとけやめとけぇ。怪我ぁしねーように下ぁ向いてなぁ」
いやー。いつものことだけど、これ系の奴らって増長っぷりがすごいよなぁ。よくもまあここまで傍若無人に振る舞えるもんだ。まあ、相手を選んでるからだと思うんだけどさ。あ、また列が進んだ。
「あれっ? お、おいお前魔王じゃないか! なぁ! 魔王カースだろ!」
あら? 横からいきなり声をかけてきたこいつは確か……
「よう。久しぶりだな。元気そうじゃん。」
名前は覚えてないが領都での七等星試験で一緒だった奴だ。はるばるサヌミチアニまで行ったっけなぁ。
あ、ギルド内がざわつき始めた。大声で魔王カースだなんて呼ぶから。あっちの三人組にも聞こえたらしい。さて、どうする?




