240、ドワーフの鳥ダンス
腹が膨れ、酔いが回ってくると歌い出すのが冒険者あるあるだ。今は各自が好き勝手に歌っているのでとてもじゃないが聞くに耐えない。でも、それも味だよなぁ。今しばらくはこんな騒音を聞いておくのもいいかもね。
「のうカース殿よ。人間は面白いのう。」
「そう? それならよかったよ。むら、フェリクスの酒のせいもあるよね。みんなご機嫌じゃん。」
もちろん私もね。
「くくく、人間もエルフも酒に酔うのは同じか。ついでにドワーフもの。見てみよ。あの踊りを。愉快ではないか。」
「ん? おっ、あははは! いいね。よく分からないけどあの踊りいいね!」
ドワーフ達が踊ってるよ。何だあれ? あいつら手足が短いからなぁ。やけに面白いぞ。コミカルというか何というか。はいはいはいはいおっとっとっと、とか言いたくなる感じ? おっ、今度は両手を上げて手首だけ前に折って右へつんつん左へつんつん。おもしろっ。何だよその踊りは。ドワーフの伝統舞踊か? あっ、腰も振り始めた。分かった、あれ鳥だ。それも鶏とかそっち系のやつ。そんな鳥が地面を歩いて餌をつつく踊りなんじゃない? あ、首も前後に振ってる。
「くくく、これは交じらねば損というものだ。先に行くぞ?」
マジか村長。そんな超イケメン面してあの踊りをするのかよ。つーか交じらねば損って言ったな? まさか、同じアホならってこと? エルフにもその言葉があるのかよ……
踊るアホウに見るアホウ。同じアホなら踊らにゃそんそん、なの?
仕方ないなぁ。村長自ら踊ろうってんなら私だってやってやるぜ。腹も膨れたし酔いも少し回ったしね。
「行こうかスティード君。ドワーフに交じって踊ろうよ。」
セルジュ君はまだ食べてるもんな。
「えぇ〜あれ難しそうだよぉ……」
「スティード君ならできるできる。自信持ってやろ。」
こんな踊りに自信もクソもないと思うけど……楽しければいいのさー。
「おお、魔王も来たか! よし! 一緒に踊ろうではないか! 手はまっすぐ上に上げるのだ! 手首もカクッと曲げるのだぞ!」
早速フレッグのダンス指導が入った。
「おうよ。任せとけ。」
「こ、こうかな?」
さすがスティード君。ビシッと決まってるね。『無尽流拳法 鶴の構え』とか言われたら信じてしまいそうだよ。おおお、やっぱスティード君は違うなぁ。動きがやたら鋭いぞ? 両手を前に倒す動きも腰を振る動きも、首を前後に振る動きまで、全部ビシッと鋭いじゃないか。
あはは、村長もやるね。右に左に指先を突き出しちゃって。うーん鳥っぽいね。私もやろ。ただし上半身は真似するが下半身はいつものツイストでいくぜ? 難しいけど……今夜もフィーバーするぜ!
夜は宴会したり昼はのんびり過ごしたり。そんな束の間の楽園ライフにも終わりは来る。もう三月二十四日だからな。
今日中に領都まで帰って、明日は王都だ。明日いきなり王都まで飛んでもいいんだけど私がちょっとばかり領都に用があるもんでね。
リリスやフレッグ、おまけにシュガーバに見送られて現在は空の上。ここらはヘルデザ砂漠上空かな。
「おお、ここがあの時の跡地か。見渡す限りの砂漠だのぅ。」
元祖魔王と勇者ムラサキの戦いのせいで砂漠になったんだったな。めちゃくちゃだよなぁ。詳しくは知らないけどここって東西だけで軽く四百キロルはあるよな? そこまでの威力って……ジュダが持ってたドラゴンの魔石爆弾より絶対上だし、たぶん核よりもやばかったんだろうなぁ。そんな中よく村長は四英雄まで守れたもんだわ。自分が生き残っただけでもすごいってのに。
「ここって元々は森なんだっけ?」
「そうだとも。全てを見て回ったわけではないが、それなりに深い森だったの。」
「わけが分からないわね。これだけもの広さを焼き尽くすだなんて。やっぱ魔王ってすごかったのね。」
そりゃあサンドラちゃんならさぞかし興味深いだろうなぁ?
「そんな魔王に勝った勇者ムラサキ公ってとんでもないよね。ベヒーモスでも一撃で叩き斬るなんて僕も理解できないよ。」
そっちも気になるよなぁ。スティード君でなくともさぁ。
アースドラゴンも超無敵の装甲だったけど、ベヒーモスもそうなんだっけ。もちろん出会ったことはないけど、めちゃくちゃ頑丈って聞くもん。
「あやつは聖剣を持っておったことも理由の一つであろうなぁ。あの斬れ味はすごかったのぉ。イグドラシルでさえ斬り裂きおったからな。」
マジかよ……無敵のご神木じゃないんかよ。マジすげえな勇者ムラサキ……




