238、賭博開帳
ふむふむ。キーリムは心臓二個あったのか。しかも脳らしき物が胴体の一番奥にあっただって? めちゃくちゃ意味分からん……脳って冷やす必要があるんじゃないの? 胴体の一番奥って一番熱い所だろ? 魔物の生態は分からんなぁ……
ほう? 脳もちゃんとキープしてあるのか。やるなぁ……魔物の脳みそってさすがに食べたことないんだよね。へー、ムニエルにするの? 少しだけ楽しみじゃん。
ちなみにアレクが刺した場所は一つ目の心臓に近かったのね。さっすがアレク。外さないよね。
「カース殿よ。そればかり食べておらんでそろそろこちらもどうだ?」
「おっ? さっきの首肉? もういい頃合いなのかな。じゃ、いただくね。」
『金操』
鍋に直箸っても何だしね。とりあえず取り皿にちょいっとね。おおぉ、いい匂いするじゃん。これはワイン煮込み? ビーフシチューっぽくもあるよな? このスープはご飯にかけて食べたくなるじゃん。
おお、首肉がプルプルしてる。ちょっと大きいけど丸ごと食べ……んむんむ……
うっほぉ、こりゃ美味しいや。歯応えはしっかりあるのに柔らかいし。これ噛み切るのが心地いいなぁ。あぁーうめぇ……こういうのを噛めば噛むほど味が出るって言うんだろうなぁ。飲み込むのがもったいないじゃん。煮込んだのは私の火球だけど、どうやったらこんな味わいになるんだよ。村長すげぇな。こっそり鍋に重圧の魔法でもかけてたりしてね。そういや吹きこぼれることもなかったみたいだし。
「旦那様。ご歓談中失礼いたします。」
おっ、リリスだ。何やら神妙な顔してるぞ。
「おおリリス。ちゃんとみんな食べてるか?」
「はい。合間を見ては食べに出しております。フェリクス様も昨夜はご利用ありがとうございました。」
「こちらこそ楽しませてもろうたわえ。人間の女子の柔肌とはこうも滋味に溢れておったとはのぉ。」
あらあら。村長ったらえっちだけどなんだか文学的なこと言うじゃん。年の功か?
「お食事中ではございますが旦那様にお願いがございましてやって参りました。」
おや、だから神妙な顔してるのね。わざわざ飯時に来るぐらいだし。
「いいよ。何事だい?」
「この者ですが、自らの小屋で賭場を開催しておりました。処罰をお願いできますでしょうか。」
あらまぁ。そいつは参ったねぇ。どこの貴族領でも賭場の開帳は金払って許可さえ得れば問題ないんだけど無許可でやっちまったら奴隷落ちなんだよなぁ。
でもなんでわざわざ私に?
「仲間うちでちっとやったぐれぇいいだろうが! みんなやってんじゃねえか!」
あ、なるほど。ちょっと分かった。
「お前どこのモンだ? リリスがわざわざこんな時に俺の前に連れてきた意味を考えろよ。ここでの罪人は夜中にひっそり殺されてから不死晒しだろ? 普通はな? なのにお前は生きてるし手足も斬られてない。これってどういうことなんだろうなぁ?」
おまけにロープに縛られてすらいない。こいつよく大人しくリリスに付いてきたなぁ。たぶん余裕かましてたんだろうな。みんなやってんだし魔王は優しいしって具合に。
まあ第一声が深い謝罪だったら私もリリスも多分許したんだろうなぁ。だってみんなやってるのってマジだろうし。そんなのいちいち取り締まってられないもん。
「うるせぇんだよ! 俺を晒しモンにして恥ぃかかそうってんだろがぁ! 魔王だか代官だか知らねぇけど調子んのってんじゃねぇぞ!」
あーあ、それアウト。
「リリス、任せる。」
「かしこまりました。」
おっ、リリス早い。返事と同時にもう抜いてる。それに比べてこいつは遅いな。冒険者のくせに、ナイフを喉元に突きつけられてようやく状況を理解しやがったな? 今リリスが止めてなければ死んでたぜ?
「どうするんだ? 先に死んでから不死晒しか、手足を斬られてじっくり不死晒しか。好きな方を選んでいいぞ?」
飢え死にしてからアンデッドになるって無惨すぎるよなぁ。まぁ選ぶのはこいつだけど。楽園の掟はシンプルだってのにさぁ。ほーらどうすんだ? みんな見てるぜ?




