230、サンドラのルール
浴室から出てみればメイドゴーレム猫耳のアンが待っていた。タオルを数枚持っている。私やアレクにタオルが必要ないことは分かってるだろうから村長の分か?
「おかえりなさいませ旦那様。お代官様より、お客様のお部屋が用意できたとのことです」
ほう。キャンセルでも出たのかな?
「分かった。ありがとよ。村お、じゃなかったフェリクス、タオル使う?」
「いや、儂も不要だがせっかくだ。使わせてもらおうかの。ほう、これは良い手触りではないか。」
あら? アンの挙動がおかしい。首をキョロキョロさせちゃって。ゴーレムもバグることあるのか? あ、分かった。
「アン、こちらが例の賓客な。部屋まで案内してあげて。名前はフェリクスだよ。」
「かしこまりました。フェリクス様。こちらです」
「ふふ、待て待て。まだ服を着ておらぬぞ。それともどうせ脱ぐから着ずとも良いのか?」
ぷぷっ、村長にしては品のない下ネタだなぁ。いや、そもそも品のある下ネタなんてあるのか?
「あはは、着てってよ。」
でも私だって昔はこの屋敷を裸で歩いてたしなぁ。それより村長の場合は見た目が若フェルナンド先生だからな。すれ違う女冒険者の目の色が変わってしまうぞ。むしろ襲われるね。ということはここの従業員にとっても役得だな。今夜の村長担当なんか特に。
「よし。待たせたな。ではカース殿、堪能させてもらうとするぞ。また明日の。」
「うん。楽しんできてね。」
さて、うちのサービスが化け物ハイエルフに通用するといいね。
今思えばアーさんってダークエルフの村で絶倫っぷりを発揮してたよな? ということは村長も……?
「ねえねえカース君! 明日の夜宴会をするってことはさ! また狩りに行く!?」
スティード君の目がすっごくキラキラしてる……山岳地帯で少しは狩ったから不足はないんだけどなぁ。
「じゃあ昼から少しだけ行こうよ。せっかくだから五人で行かない?」
コーちゃんやカムイも行くって言い出すかも知れないなぁ。
「いいね! 卒業旅行の総仕上げだね! 今度こそセルジュ君も行くよね!?」
「えぇ……まあ行くけどぉ……」
すっごく嫌そうな顔してるなぁ。のんびりしたかったんだね。セルジュ君は帰ったらいきなり仕事だろうからね。
「どうせなら競争しない? 私はアレックスちゃんと組むわ。セルジュはスティードと組むの。カース君だけ一人ね!」
「それいいね! 面白そうだよ! やるよねっカース君!」
スティード君ノリノリじゃん……
「いいよ。やろうか。詳しいルールは明日決めるとしようか。じゃ、今夜はこれで解散ってことで。みんなのんびりしてね。」
「決まりね! もちろんカース君に不利なルールにするわよ! 楽しみね!」
サンドラちゃんもノリノリだなぁ。そこまで狩りが得意とは思えないが。まっ、アレクが一緒なら大丈夫かな。ちょっと楽しみになってきた。
悦楽の夜、怠惰な朝を経て昼前。食堂に五人で集まって昼食。私とアレクは朝食だけどね。コーちゃんとカムイは昨日から姿が見えない。玄関前の自室でのんびりしてるのかな?
「じゃあ勝負の方法を発表するわよ! 時間は日没まで。日没までに集めた、おいしく食べられる食材の重さで勝負よ!」
おお? どういうことだろう。なんだか一癖ありそうなレギュレーションじゃない?
「面白そうだね。もう少し詳しく聞いていい?」
「もちろんよ。『美味しく』はそのままね。例えばゴブリンの肉なんかだとダメってことね。もちろん同じオークでも普通のオークとクイーンオークでは大違いよね。美味しい方が高得点よ!
それから『食べられる』というのは、すぐに食べられるってこと。つまり、解体だけでなく皮剥まで終わってないとダメよ? アースドラゴンだと後脚を外すだけじゃダメってことね。後は各自が切り分けられる直前でないと得点にならないわ。分かった?」
なるほど……解体まで込みの勝負か。マジで私に不利じゃん。サンドラちゃんえげつねぇよ……
「いいよ。分かった。ところで重さとか美味しさとかの得点ってどう付けるの?」
重さは分かるが美味しさって点付けられなくない?
「重さはアレックスちゃんの『計量』でお願いするわ。美味しさは……希少性や私の好みを考慮しつつ……ノリで決めるわよ!」
ぶはっ、思いっきり自分の好みとか言っちゃってるよ。サンドラちゃん面白いなぁ。普段の理知的な面をぶん投げたのか? それとも勝ちに貪欲なのか?
「分かった。面白そうだね。で、一位の景品はどうする?」
得点付けて競争するってことは何か賞金でも賭けるんだよな?
「いい質問ね! 一位は三位に命令することができるのよ。例えば城壁の上で裸踊りをしろ、とかね。どう?」
「ぷっ、それは酷いなぁ。でも、燃えてきたよ。それで行こうか。スティード君とセルジュ君はもう聞いてるかな。アレクはどう?」
「ふふ、いいわよ。面白そうじゃない。負けないわよ?」
「決まりね。あ、もし得点が同じ場合は一番美味しそうな食材の品質勝負よ? 重さは関係ないってことで。」
ほう。それも悪くないね。問題は得点が同じになることなんてあるか? サンドラちゃんやアレクが判定するんだろうからさ。とことん私に不利で面白くなってきたぞ。サンドラちゃんの潔さが炸裂してるね。
「分かったよ。じゃあ、行こうか。」
森の手前まではみんなで行こうじゃないか。
「日没時にいつもの解体場に積み上げた食材で勝負よ。だから帰りはそれぞれ各自で。もちろん遅刻は負けよ?」
ほう。私に有利な点もあるのか。意外にフェアだねぇ。
さあ、どうなることかな? ふふ、面白くなってきたねぇ。




