229、ミーハー村長
黄金のさらさら短めヘアー。王子様のような貴公子のようなイケメンフェイス。そしてフェリクスって名前。
つまり……
「村長ぁ……もしかしてフェルナンド先生を意識してる?」
先生はもうちょっと髪が長いけどさ。それに先生より明らかに若い。二十代前半ぐらいか。そりゃまあ先生だって二十代後半に見えるけどさ。
「くく、気づかれたか。人間はあのような顔が好きなのであろう? エルフの女子も好きなようだがの。」
あー、そういや先生にぞっこんのエルフ女が二人いたなぁ。だからって村長は別に本気でモテようとしてるわけじゃないだろ? ただ面白おかしく過ごしたいだけと見た。つーか、わざわざフェルナンド先生に似せなくても自分が若い時の姿になるだけでかなりのイケメンだろうに。
ローランド王国じゃあ何の責任もない立場だからってはっちゃけたいとか? それって悪く言えばあの時の黒幕エルフ達と同じなような……いや、さすがに違うか。
「よ、よお魔王……今の話ってもしかぁその兄さんが変装してるってことかぁ?」
あらま。もうバレた。まあ全然問題ないんだけどさ。
「だいたいそんな感じ。ほら、よくあるじゃん? 高貴な身分の者が素性を隠して街場で遊ぶやつ。あんな感じ。だから内緒な?」
「うげ、マジか……つーか魔王の付き合いで高貴な身分って……ぜってぇやべーじゃねーか……俺ら一緒に風呂入ってていいんかよ……」
何やら勘違いしてるな? まあそうさせるように言ったわけだが。
「身分を隠してるんだからいいに決まってるだろ。身分や立場を忘れて遊びに来たんだからさ。ねっフェリクス?」
「そうとも。今の儂は国王でも村長でもない。ただの旅人よ。おおそうだ、お近づきの印だ。一杯飲んでもらおうではないか。」
ぷぷぷ。村長もエルフが悪いなぁ。思いっきりミスリードか。こいつら絶対勘違いしただろうなぁ。国王なわけないってのに。
「ひっ!? こく、おぼっ!?」
「うっ、そ、だろ!? まさかそんっなば!?」
ほらやっぱり。やっべ、めっちゃ面白いんだけど。
「そんなわけないだろ。ただの訳ありだって。いいから気にせず飲むといい。」
せっかく村長が用意してくれたんだからさ。
「やっぱ訳ありなんかよ……もらうぜ兄さんよぉ……」
「風呂で酒も悪くねぇな。あ、うまい……」
「そうかうまいか。それはよかった。今夜は分からぬが、もし宴をするのであればまた飲ませてやれるのだがな。どうだえカース殿?」
そういや村長って結構宴会好きだったか。私の計算によるともう一日や二日の余裕はあると思うが。玄関ホールで時の魔道具を見とけばよかったなぁ。今日は何日なんだろ。
「じゃあ明日の夜にでもやろっか。で、ここを出る日だけど……セルジュ君としては遅くとも二十五日には王都に着いておきたいんだよね?」
「うん。それでギリギリだね。もう少し余裕があると助かることは助かるけどね……」
社会人になるってのは大変だねぇ……今後は長期休暇もあんまり取れなさそうだし。
「後で今日の日付を見てから考えようか。もう二、三日ぐらいはある気がするんだよね。」
「そうだね。今回の旅行って今日が何日とか全然考えてなかったよね。それってすっごく贅沢だよね。でも、もう終わっちゃうんだねぇ……」
連休の終わりってのはもの悲しいよなぁ。私にだって分かるよ。もうあんまり前世の記憶なんてないけど、連休が終わる辛さ悲しさやるせなさは魂に刻まれてるんじゃないかってぐらい分かるとも。
「でもカース君に連れてきてもらえてよかったよね! 普通ならこんなの絶対無理だよ! いつかまたこんな日が来るといいね!」
スティード君が熱いのは風呂のせいだけじゃないよね。私だってこんな団体旅行ってかなり楽しかったんだから。数ヶ月前は南の大陸をアッシリやシュガーバを連れて旅してたけどさ。あれとは大違いだよなぁ。
やっぱ旅ってのは、どこに行くかってより誰と行くかが重要だよなぁ。
「おう魔王ぉ聞いたぜ聞いたぜぇ! 明日だな! 宴会だな! やるんだなぁ!」
「ぜってぇだぜぇ! 楽しみぃしてっからなぁ!」
「絶対じゃねーよ。今日が何日かによるんだよ。」
「おぁ? 今日は二十日じゃねーか。見てねーんかよ」
おお! 二十日なのか! だいたい計算通り! 十九〜二十二日ぐらいじゃないかと思ってたんだよ。それならここで二、三日すごせるな。クタナツにも寄りたいところだけどサンドラちゃんの希望だしね。なるべく楽園ですごす日を多くしようじゃないか。
「それなら問題ないな。じゃ、明日の夜は宴会するってことで。ただし酒はないからな。フェリクスが出す酒が少しはあるだろうけどさ。たぶん本当に少しだと思うぞ。」
ここには百人以上の人間がいるんだからさ。
「ほう。明日は宴か。良いのぉ。ならば昼間は何をするつもりかの?」
「んー、のんびりしようよ。もう休暇も残り少ないことだしさ。村お、いやフェリクスは何したい?」
村長のバカンスは始まったばかりだもんなぁ。
「そうさのぉ。とりあえずここの周辺をじっくり見てみたいものだのぉ。周囲に魔物は少なそうだが、堀だったか? あそこが面白そうでの。」
「あー、あそこって不思議なんだよね。なぜああなったのやら。落ちないでね。」
まあ村長なら落ちても平気なんだろうけどさ。
さーて上がろうか。ちょっと早い気もするけどアレクとイチャイチャして早寝といこうか。そして明日も朝からイチャイチャってのもいいしね。怠惰にすごそうではないか。




