221、元近衞騎士ジュールベル・ルナール
こうして時々警備の冒険者とも話しながらぐるっと一周。そろそろ時間だろうか。
おっ、スティード君はもう戻ってるな。
「スティード君どうだった? 何か面白い物でも見つかった?」
「うん。面白い物じゃなくてすごい人なんだけどね。」
おおっ?
「すごい人? どの人?」
「ほら、あそこに立ってる方。元近衞騎士のジュールベル・ド・ルナール様だよ。ご挨拶させてもらったんだ!」
うーん、知らん……
でもここって元近衞騎士や元宮廷魔導士が何人もいるんだったよな。
「たしか……平民から近衞騎士になった方だったかしら。あの方が初めてってわけではないけど珍しいものね。きっとご苦労なされたんだわ。」
「おお、そうなんだ。それはすごいね。」
さすがアレク。それにしても平民上がりの近衞騎士かよ。それはさぞかし王都の民から人気が高かったんだろうなぁ。立志伝中の人じゃん。
「だよね! 僕みたいに下級貴族が近衞騎士になるのも珍しいけど毎年一人や二人はいるもんね。でも平民から近衞騎士って十年に一人ぐらいしかいないんじゃないかな? すごいよね!」
「うん。かなりすごいよね。ちなみにスティード君は以前会ったことでもあるの?」
遠目に見て気づいたんだよね? あの人って見た感じ五十代後半だしさすがに姿絵が売られてるってわけでもないだろうに。
「そう! 実はそうなんだよ! あれは僕が近衞学院の一年生の頃でさぁ。毎年何回か現役の近衞騎士の方々が来てくださるんだよ! その時にお世話になったんだ!」
「へえー、そうなんだ。それはいいね。励みになりそうだね。」
現役の近衞騎士が指導に来るわけだろ? それ学生にとっては最高のモチベーションだよな。上手いことできてるねぇ。
「ウリエン先輩も学生の頃ルナール様にお世話になったらしくてさ。今でも時々鍛えてもらってるんだって。」
「おお、兄上もなんだ。もしかして今でも兄上より強い?」
「ウリエン先輩は自分より強いって言ってたけどルナール様も今じゃあ勝てないっておっしゃってるし。どうなんだろうね?」
うーむ、さすがに今兄上より強いとは思いたくないが。現役時代なら分からないか。
「おいおい、ウリエンと比べられても困るぞ? あんなの勝てるものか」
おっ、お仕事終わったのかな?
「あっ、ルナール様! 紹介します! こちら僕の親友カース君です。カース君も無尽流の使い手なんです。」
ふふ、スティード君にはっきり親友と言われると嬉しいな。
「カース・マーティンです。兄ウリエンがお世話になったそうで。」
「ほう。かの魔王殿は無尽流の剣士でもあったのか。私はジュールベル・ルナール。それならば一手願いたいものだな。魔王殿と一手交えたとなると仲間達に自慢できるからな」
このおっさんもいきなり無茶言うなぁ。兄上といい勝負のおっさんと模擬戦なんかできるかーい。まあ、おっさんってよりどう見ても紳士だけどさ。
「いやー最近は全然剣を振ってないもんで。それよりスティード君に稽古をつけてあげてくださいよ。」
「ふむ、それは後ほどだな。私が今興味があるのは魔王殿なのだがな? かの達人や剣鬼を擁する無尽流の剣は使い手によって大きく変わるからな。そうは思わぬか?」
あー、言われてみれば。だからってそれ私にあんまり関係ないぞ……
でもアッカーマン先生やフェルナンド先生の名を出されると弱いなぁ。なんというか、嬉しくなるんだよね。しかたないなぁもぉ……
「じゃあちょっとだけやりましょうか。仕事してる皆さんがここに集まるまでってことで。」
「そうこなくては。では無仁流ジュールベル・ルナールお相手つかまつる。いざ!」
いきなりかい。しかもロングソードを抜きやがった。マジかよ……




