219、森の開拓地
「森の中の開拓地、もしくは駐屯地ってところかしら?」
おお、さすがアレク。私もそう思う。
「まだ何人かいるみたいだね。」
木を運んだり枝を落としたり。お仕事頑張ってるね。
「どうするカース? 邪魔するのも悪いし、この辺りで引き返す?」
さすがアレク。名門貴族令嬢なのになんて謙虚なんだ。時間的にもいい頃合いだしね。
「そんなアレックスちゃん! まだ明るいじゃない! カース君のことだから帰りは飛ぶんでしょ? まだ時間はあるわよね! ねっ!?」
ここでもサンドラちゃんの好奇心が爆発か。何か気を引くものでもあるのかな?
「私は全然構わないわよ? なら邪魔にならないよう自由行動でいいわね。」
「ありがとうアレックスちゃん! 私あっちの木が気になるの!」
木? 結構広い開拓地の外周はもちろん木だらけだけど。
「よく分からないけど僕が見ておくよ。」
こんな所でサンドラちゃんを一人にはできないからね。セルジュ君が後を追いかけた。
「あぁ、分かったわ。ここに開拓地が作られてる理由。サンドラちゃんは気づいたみたいね。」
「えっ、そうなの? 何なに?」
さすがアレク。一目で分かったのか。
「たぶんエボニーマホガニーね。貴族に人気の高級木材だわ。」
「そうなの!? それはすごいね!」
私でも知ってるぞ。マホガニー系の超高級木材はトレンタール・マホガニーだけど、それに次ぐのがエボニーマホガニーなんだよな? しかも半分魔物のトレンタール・マホガニーと違ってエボニーマホガニーは普通の植物だから伐採が簡単だとか。
「しかも今は高級木材の需要がかなり高いそうだし。ここは宝の山ということになるわね。」
あ、そういえばリゼットが言ってたような気がする。私のピラミッドシェルターを真似て高級木材で家や別荘を建てる貴族が多いって。私は木材相場にまで影響を与えてんのか? いや、でもマホガニー系って家具に使われることが多いんじゃなかったっけ? 私のピラミッドシェルターには使われてないよな? まあいいけど……
この際だから少しお喋りしてみようかな。
「やあおじさんこんにちは。精が出るね。ところでそれってエボニーマホガニー?」
鋸で木の枝を切ってるおじさんに話しかけてみた。
「お、おお、あんたぁ見たことあるな。たしかぁ魔王さんだったか。たしかにこいつぁエボニーマホガニーだでょ」
「あぁ、やっぱそうなんだね。ここってエボニーマホガニー狙いの開拓地って感じなの?」
「おお、それもあるけど、こかぁまだ奥があるからな。中継地でもあらぁな」
なるほどね。先王だって石切してたわけだし、産物は木材だけじゃないよな。
「ちなみにここら辺は魔物は出る?」
「出るに決まってるんだらぁ。なのに最近はドノバンさんもジャックさんも早めに帰っちまうからちーと怖ぇでょ」
やっぱ出るよな。それより組合長も校長も早めに上がってるのか。体調が悪そうには見えなかったけど、ちょっと心配になるじゃん。
「おじさん達はいつごろ帰るの? 時間によってはみんな乗せて帰ってもいいけど。」
「乗せて帰るぅ? わしら十五人はおるけどなぁ。時間は、もう一時間後ってとこかぁ。四時半になったら終わるどぉ」
一時間か。それならちょうどいいかな。
「いいよ。じゃあ帰る時には言ってよ。全員乗せるからさ。あ、もしかして馬車とかある?」
「おお、そりゃあるけどよぉ」
「あるんだ……まいっか。じゃ、後でね。」
ここからノルドフロンテまで大した距離じゃないし馬車もついでに運んであげようじゃないの。
それよりここで時間はどうやって見てるんだろ? 時の魔道具なんてないだろうに。普通に太陽か?
「カース君、僕はあっちが気になるから行くね。」
「うん。では後ほどね。」
スティード君は東の方に行ってしまった。ここってそんなに気になるようなとこあるか?
「私達はどうする?」
私の左腕に回したアレクの右手に、ぎゅっと力が入った。
「そうだね。ここをぐるっと散歩しよっか。魔物も出るって言うし警戒も兼ねてさ。」
「それいいわね。実は私も気になることがあったの。歩きながらじっくり考えてみようと思って。」
みんなしてそんな、いったい何が気になるんだろう?




