214、ライトニングサンダラーボルテックス
さて、早速五人で歩き回ってみよう。といっても誰も歩いてないんだよな。みんな外で仕事してるか屋内で仕事してるんだっけ。まだまだ民間人が呑気に遊びに来れる場所じゃないもんね。
「きっと、昔のクタナツもこんな感じだったのかしらね。大地を拓いて、城壁を築いて。男は外で、女は内で。それぞれ戦って、抗って。そうして街を造り上げたのかしら。」
おお、アレク。なんか深いこと言ってる。そうだよなぁ。ここ百年ちっとも進まなかった魔境進出が今や一気に進んでるんだもんなぁ。きっと先人も同じように開拓していったのかな。
ここなんかは飛地だからクタナツ開拓より大変なはずだよな。現にもうかなり死んでるみたいだし。私達の同級生も。
「きっとそうよね……クタナツって確か数代前の辺境伯の肝煎りで開拓が進んだのよね。魔物だらけの大地を……」
おお、サンドラちゃんも。なんだか熱いものを感じるな。
「ホユミチカはホユミチカでムリーマ山脈が近いせいで定期的に駆除が必要だったそうだね。だからクタナツはホユミチカからだいぶ離れてるんだっけ。その代わり魔境に突き出る形になっちゃってさ。ほんと大変だったらしいね。」
おお、セルジュ君も詳しいな。
「ということは、今後はこの村がクタナツみたいになるのかなぁ。」
「あり得るわね。でもスティード君? そうなると、ここノルドフロンテとカースの楽園のどちらがその座を得るのか、ということになるわね。」
アレクったら。私としてはここと競うつもりはないぞ。それぞれの良さがあるはずだからね。
楽園の利点は……やっぱり何てったって防衛力だろうな。小山に堀に城壁。空飛ぶ魔物以外はそうそう通さないぜ?
ノルドフロンテの利点は……やっぱ海運か? 海が近い上に先王の船が使えるもんな。
「どうなのカース君? 楽園を発展させる構想は。五年後に動くなら今から教えておいて欲しいわよ?」
「ええぇ……サンドラちゃんさぁ。僕がそんなこと考えてると思うぅ?」
楽園なんて発展する必要ないんだよ。壊滅しなけりゃいいんだからさ。
「そんなことぐらい分かってるわよ。これだからカース君は。だから一つだけ。五年後までにギルドを置いててよね?」
「はは……場合によってはね。」
それって完全に貴族領にしとけってことじゃん。ギルドの誘致は貴族領でないと難しいんだぞ? そのくらい知ってるさ。
でもまあ貴族領にするってアイデアはアレクも賛成してるからなぁ。ここはやはり、リリスを領主にして傀儡貴族領にするってのがベストかな。私が領主になるなんて絶対いやだ。
「おう? オメーらどこのモンだあ? 見ねー顔だな?」
会話に夢中になってたら村人がいた。若いな。全員二十代中盤と見た。冒険者パーティーか?
「どこかと言われたらクタナツだな。お前らこそ見ない顔だな。」
そりゃあ見ない顔に決まってるわな。二ヶ月ぶりにここに来たんだからさ。
「ああぁ〜ん? 生意気な口ぃきいてンなよ? 俺らぁサヌミチアニの六等星ライトニングサンダラーボルテックスだゼ?」
稲光大雷高電圧?
なんと言うか……サヌミチアニの冒険者パーティーって古い言葉を使いがちなのか? しかも長ったらしい名前でさぁ。ホユミチカの冒険者パーティーは短い名前にしがちなのに。
「悪いな。知らんよ。サヌミチアニからよくここまで来たな。やるじゃん。」
あ、違う。陸路を歩いて来たかと思ったけど、こいつらたぶんグラスクリーク入江から船で来たんじゃない? 確か定期便が行き来してんだろ?
「ちっ、クタナツもんだからって調子コイてんじゃねーゾ? どうせテメーらいいとこ八等星だろがぁ。六等星様に舐めた口きいてンじゃねーゾ?」
「アレクって確か八等星だっけ?」
「ええ。もうずっと八等星だわ。そろそろ昇格を狙ってみようかしら。」
領都にいる時にコツコツ上げてたんだったよね。偉いねアレク。
「けっ! やっぱ八等星かよ! それでよくこんな所まで来れたもんだゼ!」
「ところで俺らに声かけてきたのは何か用でもあるのか?」
仲良くして欲しいんならそれなりの礼儀ってもんを弁えてくれないとなぁ。
サヌミチアニの六等星とクタナツの六等星じゃあ価値が違うんだぜ? 知らんわけじゃあるまいし。
「あぁン? てめぇらごときに用なんぞあるかヨ? ちっと先輩に対する礼儀ってモンを教えてやンかと思ってヨ?」
それを用って言うんじゃないか?
「ふーん、礼儀ねぇ? サヌミチアニの六等星ごときがぁ? 大口叩いてくれるじゃん。ねっ、スティード君?」
「えっ!? そ、そうかな!? えっと、サヌミチアニがどうかしたんだっけ!?」
そもそもスティード君は話を聞いてなかったのかい。まったくもう。
「こいつらがね。スティード君に稽古つけてもらいたいんだって。いい?」
「えぇ稽古……でもこの人たち弱そうだよぉ……」
ぶはっ、スティード君それは酷いぜ……正直すぎぃ。
「んだぁコラぁガキぃ! 舐めてっとぶち殺してくれンぞぁコラぁおお!?」
「スティード君のことをぶち殺すって言ってるよ。これは決闘だね。じゃあスティード君、やっちゃって。」
「えぇ……でも弱そうなのに……」
どこまでもナチュラルに煽るじゃないか。彼らも可哀想に……




