207、砥石の魔道具
ドワーフのフレッグとお喋りしながら歩くこと二十分。一キロルちょいの道のりの割にはえらく時間かかってしまったかな? だってフレッグがあちらこちらに興味を示すもんだからさぁ。
「おお、これは……」
「正確には社じゃなくて霊廟って呼ばれてるんだったかな。始祖エルフってのが祀られてるよ。いや違う。住んでる、いや……眠ってるよ。」
「眠っているだと? どういうことだ? 生きておるのか?」
私もあんまり理解できてないけど簡単に説明。つーか始祖エルフについては数日前に村長が話してたじゃん。一緒に聞いてたくせに。
「おお! あの時の話に出てきた始祖様のことか! ここで眠りについているということだな!」
今度は理解が早いじゃないか。
「ここは年に一回開くらしいんだけど、その時に運が良ければ始祖が喋ることもあるってさ。」
「ほほう。そう言えば去年は口を開いたそうではないか。羨ましいな。まったく、この世にはどれだけ不思議があることか。まだまだ知らないことだらけだな」
「それはそうだな。知れば知るほど知らないことが増えてく気がするわー。」
あ、私なんか深いこと言ってない? 知れば知るほど知らないことが増えていく……何かいいな。今後決めゼリフにしようかな。ふふ。
「ほう……得てして世の中とはそのようなものかもしれんな。我も長年地底にいたせいか、新しい世界を知るのが面白くてたまらん。どこまでも知りたくなるものよな」
そりゃあサンドラちゃんと話が合うってもんだよなぁ。好奇心と好奇心の遭遇かよ。
「ちなみに俺らはもう二、三日で帰るけど何ならしばらく滞在するか? その時はまた後日迎えに来てやるぞ」
「それはありがたい申し出だな。だが、やはり帰るとするかな。エデンでやるべきことがいくらでもあるからな。あちらはあちらで興味が尽きぬわい」
あれ? 楽園ってそんなに見るものあったっけ? でも気に入ってくれたのなら嬉しいね。
「おっと、一周しちゃったか。じゃあそろそろ戻ろうか。」
戻って朝飯かな。
「おお、意外と小さい建物なのだな。もう一周していたとは。我も中に入ってみたいものだな」
「ならまた来年だな。時期が良ければ中に入れると思うぞ。」
春一番が吹く日か。早めに行けば大丈夫だろ。
「おお、来年か。楽しみが増えるのは良きことだな。何から何まで恩に着るぞ魔王」
「大したことじゃないさ。ところでこの村で何か魔道具って作ったりした?」
実はこれが気になってたんだよね。農作業してたって言ってたが、この村にどんな魔道具があれば便利になるんだろうねぇ。
「おお、一つ作ったぞ。回転する砥石と前後に動く砥石だ。今のところ好評のようだ」
「おっマジか。何だかすごそうじゃん。」
「うむ。砥石の目はいくつか用意してあるので状態に合わせて研ぐこともできるぞ」
目? 粒度とか番手のことかな。それを何種類か用意したってことだな。やるなぁ。エルフって刃物を研ぐのにも魔法を使いそうなイメージだけど、そこは手作業だったのか? そこがちょっと楽になったのかな。フレッグやるなぁ。
「それ楽園にもあったら冒険者達が喜ぶかもな。」
「ふふふ、もちろん用意してあるとも。あの館に泊まった客は無料で使っていいことになっておる。代官にも喜ばれたぞ」
用意がいい……そしてサービスもいい。顧客満足度がまだアップだな。刃物を研ぐのって意外と難しいし時間もかかるからな。私なんかはちょくちょく研ぎに出してるよ。そりゃ使う度にメンテナンスぐらいはしてるけどさ。
「そいつはありがとな。助かるよ。」
「うむ。大したことではないがな」
大したことだよ。私なんか普通の砥石で研ぐこともできないんだからさ。まあそのうちやってみてもいいとは思うけどさ。難しいんだろうなぁ……
どうせなら全自動で研いでくれる魔道具とかあればいいのに。
「よし、戻るか。朝飯にしようぜ。」
「うむ。よきひと時だった。感謝するぞ魔王よ」
大袈裟だなぁ。悪い気はしないけど。
さぁーて今日もいい一日になりそうだな。何しようかなぁ。




