183、アースドラゴンのヒレ肉
ふーう。どうにか胴体部分の収納が終わった。
後脚も上手く外せたし、首もどうにか切断できた。
そして改めて脚と頭部も収納した。こっちの解体はクタナツに帰ってからでいいだろう。
何だかすっごい疲れたし……
「カース君本当にごめんね! 指大丈夫? 痛くない?」
「大丈夫だよ。そもそもスティード君あんまり悪くないんだからさ。そんな気にしないでね。王都で高いお酒飲ませてもらうことになってるんだし。」
今後は上下に分かれての作業は要注意だな。いい教訓になったわ。あと私の水鋸の切れ味の良さも。あれを飛ばしたら凶悪な威力になりそうだね。水円斬って名前にしようか?
「そ、そうかな……それならいいんだけど。やっぱり浮身を使いながら魔力庫に収納するのって難しいね……収納しようとして落としちゃってさ……」
「それはそうだね。二つ以上の魔法を同時に使うのって結構難しいもんね。」
慣れと研鑽が必要だよね。
「カース君はさらりと使ってるけど。やっぱりすごいなぁ。」
「ふふ、まあね。もっと言って。」
「カースは最高の魔法使いなんだから! いくら言葉を尽くしても言い足りないわ!」
はは、アレクが言ってくれちゃったよ。
「あはは。ありがとね。じゃあお昼の用意しよっか。村長も楽しみにしてくれてるし。」
昼は少し過ぎちゃったけど、少々いいよね。その分しっかりお腹空いたし。
さて、どでかい塊肉を食べられるサイズにカットせねば……これは大まかに切っておいて、後は各人に任せればいいよね。各々がお好みサイズに切るがよい。
とりあえずヒレと背ロース、それからバラ肉行ってみようか。
「兄貴ぃ! こんなに食っていいのかよぉ!?」
「すげえぜ兄貴! どんだけ気前がいいんだよ!」
「食うぞ!? 食っちまうぞ!?」
意外なところで遠慮がちな奴らだなぁ。
「おう。どんどん食いな。ほれ、もう熱くなってるぞ。どんどん焼きな。」
「それアースドラゴンの脂かぁ!? めちゃくちゃいい匂いじゃねぇか!」
「いくらイグドラシルに守られててもすっごい魔物が来そうだよなぁ?」
「おお、この匂いはたまらんぜ……これで肉を焼いた日には!」
普段はミスリルボードに脂なんか引かないけど、今日は特別だからね。とことんドラゴンの味を堪能したいからさ。バラ肉に付いてる脂をたっぷり引いてやった。これマジで腹がへるわぁ……
さあ、私も焼くぞぉ。いきなりヒレからだ。やたらでかいヒレだったけど一口サイズにまで小さくすると猪のヒレとあんまり区別がつかないな。
うっは、脂とヒレが同時に焦げる匂い。マジで魔物が寄ってきてもおかしくないかも。香ばしいにも程があるぜ。上からミックス塩胡椒をふりふり。これ絶対美味いやつだろ。さて、ひっくり返して……うはぁー、いい感じに焼けてやがる。
よし。いい頃合いだろう。では、いただきます。
うおっ、おお、おおお……柔らかい……弾力はあるのに一度歯が入るればするっと噛み切れてしまう。そして、何という味の濃さ。一回しか噛んでないのに旨みが口中に炸裂してるじゃないか。おほっ、一噛みするごとに何度でも旨みが襲ってくる。脂なんてほとんどないってのにさぁ。うますぎる。これ王都で食ったら一切れで金貨十枚はいくんじゃない? いや、もっとかも。
「うおおおおおい兄貴ぃ! これ美味すぎんだろぉーー!」
「すごいぜ兄貴ぃ! めちゃくちゃ美味えよ!」
「旨みが口ん中で暴れまわってやがるよぉ!」
私もそう思う。まだ一口しか食べてないのに美味すぎる。こりゃあ箸が止まらんね。他のみんなも夢中で食べてるし。これもう部位なんてどうでもいいや。ひたすら焼きまくり食べまくろう。食欲に身を任せるんだ……
うおぉ……食えば食うほど腹がへる気すらするぞ。どんどん食欲が……あー、マジで止まらん。これ他の人が焼いてる肉を横取りしたら刃傷沙汰になりかねないな……マジでみんな超集中して焼いてる……
村長ですら厚めに切ったヒレステーキの周りに風の魔法で何やら仕切りを作ってるし。ステーキいいな……私もそうしよ。厚めに切って、じっくり焼きつつ並行して他の肉も焼くんだ……火力が高いから気をつけないとすぐ真っ黒に焦げてしまうけどね。あー美味い……美味すぎる……間に酒を飲む時間すら惜しい。ひたすら食いたいぞ……
はは、もう誰も喋ってないじゃん。みんなミスリルボードを睨んで超集中モードか。私もだけど。
よーし! 極厚ヒレステーキいくぜ! もうこのままかぶりつく! 熱っ、熱い熱い! でも止まらん! 口いっぱいに幸せの塊を頬張る! くあぁー! これ安い肉だったら口が閉まらずどうにもできなくなるパターンじゃん? なのに、この肉は……うはぁ! あっさりと噛み切れて、咀嚼が容易い! すげぇすげぇすげぇ! マジですげぇ! これどんだけ美味いんだよ! 頭がくらくらしてくる! 凶暴なまでの旨みが、うおぉぉ……止まらない……
あーこれやばいわ……
喉を通る時すら美味い。いつまでも噛み続けていたいけど、早く飲み込んでしまいたい。食うだけなのになぜこんなに悩ましいんだよ!
気づけば極厚ヒレステーキはもうなくなっていた。あれ三百から四百グラムはあったよな? それが体感では一瞬でなくなった……腹もそろそろいっぱいだが……
なのにまだ食いたい。食欲だって湧いてくるし……これは危険な肉だな……
よし、食おう。とことん食うんだ。ピリオドの向こうまでさ。行こうぜコーちゃん……次は背ロースだ……




