170、三度目の正直
見えた。
アレクが来てる。
『アレク、次あいつが動く直前に右前脚を落穴で狙ってくれる?』
アレクからは返事の代わりに風弾が飛んできた。背中にパチンと。
さて、後はあいつを上手いこと動かすだけだが……
『風操』
普通に飛んだ方が早そうだな。奴の目の前をちょろちょろと。
くっ、やっぱブレス吐いてくるのかよ。しかもこれ全方位ブレスと収束ブレスの中間、拡散ブレスって感じか? さすがに避けきれん……『氷壁』
ちっ、やっぱ威力がえげつねぇ……私の氷壁が一瞬で蒸発するじゃん。
『火球』
すかさず撃ち返す。
鉄をも溶かす私の火球だが、こいつには効かない、か。表皮が多少焦げたぐらいか? でも、イラッとしただろ? ほーれほれ、目にだって当てちまうぞー?
ほぉら来たぁ!
私を食らおうと大口開けてさぁ。
どどっと前進したけど? ナイスタイミング! こいつの前脚サイズ、直径二メイルはある落穴が炸裂したぜ!
バランスを崩したアースドラゴン。右側が下り左側がやや持ち上がっている。狙いは左側面。ぶっとい首の付け根のやや装甲が薄いところ。
『風操』
死ねやぁおらぁぁぁ!
おどりゃ往生せいやとばかりに不動を構えて特攻。数センチでも刺されば私の勝ちだ……
ちっ、いい反応しやがる。首だけこっちに向けて拡散ブレスかよ。とっさに避けたもんだから首元じゃなくて横っ腹に突っ込んでしまった。残念ながら不動はささってない。
だが、チャンスは継続中だ。奴は何やら引っかかってるらしく落穴から足が抜けないようだ。それだけ体重があればひと苦労だろうさ。
ならば、もう一回やってやるよ。
『闇雲』
奴の顔を覆ってやった。が、だめか。一瞬で散らされてしまった。それでも時間は稼げた。
前も後ろも、横もだめなら……上だろ?
『浮身解除』
上空から自由落下。やはり狙いは首の付け根だ。おっ!? アレクが落穴を追加してくれたか!? 左前脚まで落ちてるじゃん。必然的に頭部が前傾し、狙いやすくなった。
『風操』
加速する。うおおおお! 往生せいやぁ!
ちっ……マジでしぶといな。落穴から足が抜けないもんだから穴ごとぶち壊すよう体を横に一回転させて逃げやがった。とんでもないパワーだな。私の狙いに気づいてるのか? それともただ癇癪を起こして暴れただけなのか?
どちらにしても、またやり直しか。おまけに今度は奴の上半身が泥だらけで狙いにくくなってるし。
『水球』
ならば洗ってやるさ。
ちっ、魔声か? 私の水球を打ち消してやがる。せっかく洗ってやろうってのに。この不潔野郎が。お前はアイリーンちゃんかよ。
おっ、援護か。アースドラゴンの体を挟むように二方向から水の魔法だ。よし、きれいになった。これでまた狙えるな。おまけに辺りが泥濘んできたし、あいつは動きにくいだろう。
おっと、少し動きを止めるとすぐに拡散ブレスが飛んでくる。徹底的に私を狙っているってことか。魔物にしては上出来じゃん?
『炎槍』
効かないのは分かってる。でも、拡散ブレスを吐いてる最中はかき消しにくいだろ? おまけに、こいつを顔にぶち当てると、あいつは目を閉じるからな。
追加だ。
『豪炎』
やはり顔にぶち当てる。こいつはしばらく消えないぜ?
さあ、三度目の正直といこうか。
不動を腰だめに構えて……『風操』
体ごと突っ込む! おどりゃ往生せいやぁぁぁぁ!
よっしゃあ! 左側の首元、十センチは刺さってる! 勝った!
『乾燥』
それも魔力特盛だ。人間なら即死どころか即塵になってるぜ?
うおっ、大暴れかよ。吹っ飛ばされた。顔の火も消えてる。おっと、逃がすかよ。脱水症状どころじゃないほど体内が乾ききってるはずだが、水を飲んで回復なんてされちゃあ困るからな。もっとも、普通ならこの状態から水をいくら飲んでも回復など不可能だが……ドラゴンは分からないもんなぁ。
『燎原の火』
視界を塞ぎつつ、そこら辺の水分を全て蒸発させる。さっきの泥濘とかもね。
ほら、逃げんなよ。『狙撃』私はこっちだぞ?
うっわ……やばいぐらいに暴れまわってやがる。巻き込まれたらミンチになりそう……
このまま放っておいても死にそうではあるが……万が一イグドラシルをぶち折られたりすると困るな。あそこまで来るとは思えないが……
やはりとどめが必要だな。




