164、六芒星ヘキサグラ
ふぅ……
終わった。あぁ疲れた……
結局あれから三十分ぐらいキープしてたかな。ダークエルフ達が大量の土砂を投入して、水を撒いて、押し固めて。そしてまた土砂を乗せて完成だ。
そういや肥料なんかを漉き込んだりしてないようだが特に問題ないのか?
「ありがとうカース殿。これで他のエルフ族に顔向けできる。ひとまずだがな……」
勝負はこれからってか。元通りになるまで何百年かかることだろうね。
「よかったね。これでひと安心かな?」
「ひとまずはな。本日からしばらくは警戒を厳重にせねばならぬがな。」
ほーん、そんなもんなのね。あ、そうだ。あれ聞いとこう。
「そういやさ、なんでわざわざ動かしたの? この場所でないとまずいとか?」
「おお、説明してなかったか。これはすまぬ。エーデルトラウトヤンフェリックス様からイグドラシルは全部で六本あることは聞かれたのだったな。そうなのだ。この位置でないとちとまずいのよ。」
おお、マジでそうなのか。
「うんうん。どうまずいの?」
「この大地、カース殿達は山岳地帯と呼んでいたな。この辺りがまだ平地だった遥かなる太古、始祖様はヘキサグラとお呼びになっていたそうだ。何でもイグドラシルの配置からそう決めたらしい。分かるかな?」
ヘキサグラ……あ、ヘキサグラム!? イグドラシルは六本だから……六芒星か!
マジか…….こんなにくっそ広いのに正確に六芒星を描けるように植えたってことか? 始祖すげぇな……
「なんとなく分かる。だから位置が大事ってことだね?」
「さすがはカース殿。そう。イグドラシルの効果を最大限に発揮するためには星を象ったこの位置でないと少々まずいらしい。そのためエーデルトラウトヤンフェリックス様からも、可能な限り元の村から近い位置で育てるよう言われていたのだ。」
マジで始祖やるなぁ……
やっぱ適当に六本植えたわけじゃないのね。どんだけ上空からなら六芒星だとはっきり見えるんだろうか。
つーかそんだけ超重要な木を枯らしてまでダークエルフ族と他の村を守ろうとしたばあちゃんの覚悟たるや……想像もつかない……
「数日に一度こちらの様子を見ては、いつ元の位置に戻すか検討している最中だったのでな。カース殿が来てくれたのはまさしく天祐。どこまでも我らを助けてくださるお方よ。本当に助かった。」
「たまたまだけどね。来てよかったよ。それで、この後はどうする? まだ終わりじゃないんだよね?」
だって建物も引っ越さないといけないだろ? 畑も作り直しだろうし。
「うむ。もしカース殿の魔力に余裕があるならイグドラシルに魔力を注いでもらえぬかな?」
あ、それがあったか。
「もちろんいいよ。ゆっくり注ぐからさ、もし多そうだったら止めてね。」
「ありがたい。多すぎるということなどないとは思うが、存分に頼む。」
「あっ、それなら私も提供するわ。クロミには随分と助けられたし。」
おおアレク。なんと義理堅いね。クロミに世話になったのは私も同じだからね。協力できるところは何でもやってやるぜ。
「アレックスちゃんがやるなら私もやるわ。微々たるものだけど。」
「もちろん僕もやるよ。」
「スティード君も? 仕方ないなぁ。なら僕もやるよぉ。」
「おお、これはありがたい。かたじけないな人間達よ。」
サンドラちゃん達はダークエルフに義理なんてないだろうに。できた人間だね。さすが我が友たちだ。
『浮身』
イグドラシル周辺は泥まみれだからね。歩けたもんじゃないだろう。ボードに乗ってみんなで行こう。
では私から……ゆっくり錬魔循環をして……
我が心すでに空なり……空なるがゆえに……
村長からストップがかからないなぁ。なら、ここまでにしておこう。だいたい五割はつぎ込んだぞ。ふぅ。
「お、おお……さすがカース殿。なんという膨大な魔力よ。そうなると話は変わるな。人間よ、すまぬが少々待ってくれるか? その魔力は温存しておいてくれ。」
おや、どうしたことかな?




