128、ライブハウス楽園へようこそ
宴会が進むに連れて酒も進んだらしい冒険者達。その間に館の従業員、女達が入り込み酌をしている。ご苦労なことだ、と思ったけど、あれもしかして営業なのか? 偉いねぇ。
普段館に行かない客層の開拓も兼ねてるのかねぇ。リリスは本当にやり手だわ。任せてよかったよかった。おお、よく見れば線の細いイケメンも女冒険者に酌してるじゃん。そういやいつの間にやら男娼もいるようになったんだよな。どのタイミングだったかは覚えてないけど。
ほんっと、うちの館はサービスいいよねぇ。領主自ら肉を焼いてんだしさ。領民が困ってたら魔境の中にだって探しに行くし。
「はいカース。グラスが空よ。これ飲んで。」
「おっ、ありがとね。うん、美味しいね! もしかしてセンクウ親方のお酒?」
この繊細で上品な感じはそうだろ?
「ええそうよ。さすがカースね。私も気に入ってるわ。」
「やっぱり美味しいよね。おっ、サンドラちゃんも飲んでる?」
「ぷはぁ! 飲んでるわよ! めったに飲めないお酒だからたくさん飲むわよ!」
あれ? サンドラちゃんってこんなキャラだっけ? さてはもう酔ったのか? いつの間にやらドワーフに囲まれてるし。ドワーフってやたらサンドラちゃんが好きだよなぁ。
「魔王ぉぉーー! 肉ぅぅーー!」
「魔王ぉぉーー! 飲んでるかぁー!」
「魔王ぉぉーー! 何か芸しろよぉーー!」
こいつらも酔ってきてんなぁ。まずは肉を追加して、と。
で、芸だと? 私の芸と言えばギター、じゃなくてリュートしかないぞ? 仕方ない奴らだなぁ。そんなに私の歌が聞きたいってのか? いやぁ催促されたからには仕方ないじゃないか。歌ってやるとも。
『光源』
イメージはライブハウスだ。派手な照明を点滅させてやるぜ。エイトビートに合わせてな。
『鼓動』
照明に合わせてビートを刻んでやるぜ。エルフの村で使った『花火』の魔法から光だけを抜いたやつだ。これでバスドラとスネアの音を再現してやる。
ドゥッダァン ドゥドゥダァン ドゥドゥダダドゥッダァンといった具合にね。
これいいなぁ。ノリがノリノリだわ。
『拡声』
リュートの音を大きくしつつ音色まで変える。ロックなディストーションサウンドにな。
鼓動の魔法を応用してベース音も鳴らしたいところだが,さすがに脳みその容量オーバーだわ。これだけの魔法を同時に制御してるだけで普通なら脳みそ破裂する上に一瞬で魔力が切れるだろうぜ?
さあ、イントロが終わる。
『拡声』
『いくぜてめぇらぁーー! ライブハウス楽園によく来てくれたなぁーー! そんじゃ一曲目いくぜぇーー!』
スピード感にビート感、グルーブ感。全てが高い次元で絡み合う名曲だ。
青空のもと、青空にむかって、胸をはだけて、素っ裸になって駆け出したくなる。溢れる衝動をそのままに……そんな曲だ。あぁ……最高……
立て続けに四曲。
もう無理……めちゃくちゃ疲れた……腕がつりそう……頭も割れそう……
冒険者達もへたり込んでる。嬉しいじゃないか。さっきまでノリノリで動き回ってたからな。いわゆるライブにおける正統派な訓練されたノリではなく、各自が衝動に身を任せて動き回っていただけ。嬉しいじゃないか。
締めといこうか……
『てめぇら……今日はよく来てくれたな。最後の一曲だ。そのまま座って聞いてくれ。お前らの幸せを願う曲だ。』
照明は一つだけ。ドラム音もなし。
リュート一本の生音で弾き語るぜ。生声でね。
しっとりとしたバラード。
いつも、いつまでもお前のことは見守っているからな。だからお前は気にせず自由にどこまでも高く飛んでいいんだ。
そんな静かに聞かせるバラード。お前らの幸せを願ってるぜ……
「いよおっ! 魔王ぉ!」
「なんかすげえ! 魔王が作ったんかぁ!?」
「歌ぁともかくいい曲だぜぇ!? 吟遊詩人に歌わせたらいいんじゃねぇ!?」
もちろん私の曲なんかじゃない。ただ私が好きな曲ってだけだ。たった五曲しかやってないのに、死ぬほど疲れた……
初めて使った『鼓動』の魔法と『光源』の点滅を連動させるのめちゃくちゃ大変……照明の魔道具を改良してどうにかできないもんかね。
あぁ……疲れた。
でも、すっごくいい気分だよ……




