127、経営者・従業員・客
おっ、アレクいたいた。館の玄関ホールで、ちょうど出るところだったみたいだね。
サンドラちゃんとスティード君も一緒だし。
「スティード君おはよ。肋の調子はどう?」
「いやぁ面目無いよ。リリスさんが治癒魔法使いさんを連れてきてくれてね。治ったよ。」
「それはよかった。じゃあたっぷり食べられるね。あ、そうだ。スティード君が狩った魔物だけど半分ぐらい解体しちゃったからさ。残りはまた渡すね。」
そしてたっぷり飲んでもらおう。昼間のネタでたっぷりと弄らせてもらおうではないか。
「あっ、ごめんね。僕が解体するはずだったのに。」
「いやぁ、あの数だとどうせ今夜に間に合わないからね。問題ないよ。」
でもスティードが狩った獲物をしれーっと宴会に出しちゃってごめんねー。
「ついでだから残りも近いうちにみんなでやってしまおうよ。欲しい素材があれば自分でやればいいしね。」
「それもそうだね。解体はなるべく自分でやるっていうのも強くなるためには必要だしね。」
おっ、フェルナンド先生の言葉だね。死んだ魔物も生きてる人間も斬り方は同じってやつ。
おかしい……私はフェルナンド先生に教えを受けた身なのに棍術に行ってしまった……あ、でも先生なら棍術だって達人のはずだ。今度会ったら教えてもらおう。
さあ、宴会を始めようか。
「うおぉい魔王! 早く焼けぇーー!」
「待ってたぜぇ! この時をよぉー!」
「あれが魔王か! 見覚えあるぜぇ!」
見た感じ百人ぐらいか? 肉、足りるかなぁ……
『お前ら久しぶりだなぁ! 魔王が帰ってきたぜぇ! 今日は友人もいるからな! よーく顔ぉ覚えておけよ! そんじゃあ焼き始めるからな!』
今回は酒が自前だからね。こいつら用に乾杯の音頭はなしでいいだろ。各自で好きに飲んでくれ。私達も好きに飲むからさ。
では、ミスリルボードを出して、と。
『浮身』
『浄化』
『火球』
塊の肉をそのまま投入。一口サイズにまで切るのは各自でやってもらおう。焼き加減の調整もね。
「くあぁー! 相変わらずいい匂いさせやがるぜ! こりゃあ何の肉だぁ?」
「ラスティネイルボアじゃねぇか? 見ろよこの分厚い脂肪をよぉ。こいつが甘ぇんだよなぁ!」
「こっちぁギャングエルクかぁ? この赤身がうめえんだよなぁ!」
さて、私達の分はこっちの小さなミスリルプレートで焼こう。小さいと言っても一メイル四方の正方形だからな。分厚いから盾としても使える優れものさ。取手はないけど……
「よし。飲み物は行き渡ったね。じゃあ乾杯。」
「カースの楽園に乾杯。」
「カース君に乾杯。」
「カース君とサンドラちゃんに乾杯。」
「僕ら五人の友情に乾杯。」
「ピュンピュイ」
「ガウガウ」
おお、セルジュ君がいいこと言ってる。私もそれにすればよかったな。
「おう魔王! 肉くれ肉ぅー!」
「えらくうめぇぞぉ! やっぱ魔王が焼くと違うなぁおい!」
「ミスリルで肉ぅ焼くなんて贅沢してるからじゃねぇかあ? こいつぁいいぜ!」
もうなくなったのか。生焼けで食うなよ? まあ解体したのもこいつらだから大雑把に寄生虫チェックとか食えない部位のトリミングとかやってんだろうしね。
さあ、またどっさり投入してやったぞ。
ふと思ったけど、塊肉ならプレートではなくピザ窯みたいなやつでじっくり焼いても美味そうだよな。いつだったかヒュドラを土に埋めてから焼いたみたいにさ。よし、そのうちやろう。
「旦那様。お邪魔いたします。」
「おおリリス来たか。お前達も遠慮なく食べてくれよ。こっちのでもあっちのでも、どっちでもいいからな。」
「ありがとうございます。」
「いい匂いさせてるじゃねえかあ。遠慮なくもらうぜえ?」
シュガーバも一緒か。リリスの右腕っぷりが板についてきたかな。館の従業員とも上手くやっててくれればいいが。見た感じ来てる従業員は半分以上かな。ゴーレム執事とゴーレムメイドはもちろん来てない。元冒険者執事とその家族も来てるようだな。奴隷連中は見当たらないけど。
「おう食え食え。ところでリリス、シュガーバは役に立ってる?」
「はい。楽園の守りという意味でも館の警護という意味でも役に立っております。また情報収集にも長けてますので助かっております。さすがは旦那様が推薦されるだけのことはあるかと。」
「へっ、リリスさんにそう言われると照れるぜえ。おっ、こいつあ美味いぜえ」
おやおや? シュガーバの奴マジで照れてやがる。あれあれ? もしかしてシュガーバったら……? ここは従業員同士の恋愛は別に禁止じゃないからね。青春しちゃってもいいんだよ? でもリリスはモテるからねぇ。冒険者の中にも親衛隊がいたはずだ。
がんばれシュガーバ。




