124、風の槍
日没までもう一時間ってとこかな? セルジュ君と他愛もないお喋りをしながら散歩中。魔物は全然現れない。まあこの辺だしね。もっと南の砂漠外縁まで行けば違うんだろうけどさ。
「そろそろ帰ろうか。宴会に備えて魔物を解体するからね。」
「スティード君たら斬りまくりだったんだって? カース君と一緒なもんだから張り切ったんだね。こっちはこっちで何か手頃な魔物に出遭いたかったなぁ。」
「そんな時に限って全然現れないんだよね。もっと南の方に行けば違うんだけどさ。」
「あっ、それならさ。何か一匹出てくるまで歩かない? 僕が適当に魔法使うからさ。」
おや、セルジュ君が積極的だ。昨日は魔境散歩を嫌がってたのに。歩いてるうちに気が変わったのかな?
「いいよ。任せる。何系の魔法にするかも面白いところだね。」
思い出すなぁ。コーちゃんがひょっこりと現れたのは土系の魔法を使った時だったもんなぁ。
さあセルジュ君。何系の魔法で誘き寄せるんだい?
『風槍』
げっ……
「ちょっとぉー、セルジュ君何すんだよー。」
「えへっ、ごめんごめん。でもカース君めっちゃ無傷じゃん。そりゃあそうだろうと思ったけどさぁ……」
いやいや、今のが顔や頭に当たったら即死だよ……まあ顔に来たら避けるけどさぁ。風系の魔法は見えないから避けるのも楽じゃないんだぞ……
「まったくもう。じゃあもうちょっと強めに撃ってみて。今のって早く撃つことを重視してたよね? あれじゃあ大物には通じないからさ。」
「さすがカース君はお見通しなんだね。それにさ? 呑気に魔力を練ったらバレちゃうじゃない? そうでなくてもバレてるのに。」
私にバレても問題ないのに……
もぉー、セルジュ君たら。
「普段から練り練りしてるといいよ。いや、それはそれで困るなぁ。それよりセルジュ君、もう一回撃ってみようよ。しっかり魔力を込めてからね。」
「よおし。この際だからじゃあ、あの岩に向けて撃ってみるね。」
『ヘンキーアン ニョーウーカン イッサーイン 専雑に執心せよ 風浅深極重悪の 正弁 を穿ち廻れ……』
おお、きっちり詠唱してるじゃん。魔力もすっごい込められてるし。
『風槍』
おっ、いいね。さて深さは……
「お見事。きれいな穴が空いたね。深さは……二十センチってとこかな。」
「ちえっ、貫通させるつもりだったんだけどね。カース君みたいにはいかないね。」
いやいや、風槍であれだけできたら上出来だよ。私なら徹甲弾でごり押しするし。まあその場合はあんなきれいに穴は空かないと思うけど。
それよりも……
「さあセルジュ君。もう一発だよ。この穴をぴったり狙ってね。しかも魔力をもっと込めて。」
「ええ……無茶言うなぁ……」
貫通までもう三十センチぐらいかな? そこまでやれば魔物も来るだろ。なんせ時間切れが近いからね。早く帰って解体しないと。
『風槍』
さらに魔力を込めたね。しかし残念。穴を外しちゃったね。新たな穴が増えただけだ。そろそろ割れそうだな。
「これだけ魔力をたっぷり込めると狙いをつけるのが難しいよぉ……カース君、お手本お願い。」
「いいよー。」
『狙撃』
あ、割れた。
「見えなかったけど、最初の穴に命中したの?」
「うん。どうにかね。これだけ魔力を使ったことだし、そろそろ何か来る頃かな。で、五分待って来なかったら帰ろうね。」
私の狙撃は『自動追尾』の魔法を併用すれば百発百中なのだが、対象が岩のように魔力を持たない無生物の場合はそうはいかない。
だから今のは実力だ。自動追尾なしでもだいたい二十メイルまでの狙撃ならピンポイントで百発百中する自信はある。三十メイルでも、まあ大丈夫かな?
「そうだね。でも絶対来ると思うよ。カース君が『すないぷ』使ったから……風槍のお手本が見たかったのにー。」
「あはは……ごめんごめん。そっちは自信ないの。あ、反応あり。来たよ。セルジュ君やるよね?」
十五メイル先にいる。
「うん。任せてよ。あっ見えた。」
こいつすごいな。どこから来たんだ? もう十メイル圏内に接近してやがる……




