109、壊れかけのスティード
「エルフの村!?」
ふふふ、スティード君はかなり驚いたようだな。話だけは何度かしたことがあるけど。いざ自分が行くとなると、また別だよね。
「そうそう。いつか話したよね。うちのメイドにマリーっていたじゃない? その故郷だよ。歩いていくと一ヶ月かかっても着かないぐらい遠いよ。」
距離ってよりは環境が問題なんだけどさ。
「でもカース君ならーぁ?」
「二時間ってとこだね。」
全開で飛ばせば……もっとも、この五人なら私は飛ばすことだけに集中できそうだし、もっと早いかもね。
「聞こえたわよ! エルフの村に行くのね!? いつ!? 明日!?」
いきなりどうしたサンドラちゃん。そこまでエルフに興味あったっけ!?
「明日でもいいけど、少しゆっくりしたくない? 今日来たばっかなんだからさ。」
「そうね! じゃあ明後日ね! 考えてみればちょうどいいわ! よーしカース君! 明後日お願いするわね! 楽しみね!」
サンドラちゃんどうしたんだ? ちょうどいいとは?
「じゃあさカース君! 明日は何する!?」
スティード君まで。やっぱ旅でハイになってんのかねぇ。普段通りなのはセルジュ君だけかな。
「特に予定はないんだし、各々好きに過ごそうよ。あ、とりあえずここの風呂はおすすめだよ。後で入ってきなよ。」
「いいね! カース君てお風呂にこだわるよね! 僕はもう行くよ。」
おっ、セルジュ君は動きが早いね。私はもう少し飲みたいんだよね。
「ガウガウ」
げっ……お前セルジュ君に頼むのかよ。まあいいけど……
「セルジュ君ごめん。カムイが洗ってくれって言ってる。お願いしていい?」
「えっ!? いいの!? 実は前からじっくり触ってみたかったんだ。任せてよ。行こうカムイ君。」
おお、セルジュ君たら意外にケモナーの素養があるのかな? 確かにカムイの毛並みは極上だし埋もれたくなるのも分かるよね。
「じゃあ悪いけど頼むね。風呂にはここの客や女もいると思うけど気にしなくていいからね。」
「そうなの!? す、すごいんだね……」
あれ? 大浴場だって伝えてなかったっけ? この館の従業員と宿泊客ならみんな利用できるってさ。
「ふーん、そうなの? ここの女達もいるの? なら私も行こうかしら。」
お? サンドラちゃんの悋気を感じるぞ? セルジュ君たら愛されてるねぇ。
「じゃあさカース君! 明日だけど僕と森に行かない? ちょっと冒険者の真似事をしてみたくてさ。」
ええ……明日はゆっくりしようって言ったのに……
スティード君どうしたんだよ……
「いいよ。ノワールフォレストの森だね。のんびり歩こうよ。」
「のんびり歩けるの?」
なんだよ。スティード君分かってんじゃん……
「いや、たぶん無理かな?」
「だよね? 前にカース君言ってたもんね。だから行きたいんだよ。」
んもー。スティード君はストイックなんだから。これ卒業旅行ってこと忘れてない?
あ、セルジュ君とサンドラちゃんは行ってしまった。カムイも。
「ピュイピュイ」
ふふ、分かってるよ。もう少し飲もう。まだ風呂に行く気分じゃないからね。
「さ、スティード君も飲もうよ。コーちゃんもまだまだ飲みたいって言ってるからさ。」
「そ、そうだね。いただくね。」
酒はたっぷりあるからね。ぜひスティード君には泥酔して欲しい。そしてこの館にも聖痕を刻んでもらおうか。
「アレクもどう?」
「え、ええ。いただくわ。」
アレクはアレクで酔わせて……ふふっ、この後がお楽しみだからね。
「じゃ、改めて。卒業旅行に乾杯。」
「カースの楽園に乾杯。」
「かんぱい!」
「ピュンピュイ」
この食堂にはここの従業員や客もいるが、気にすることはない。度を越した騒音でない限り誰も気にしないんだから。むしろお前達も一緒に騒ぐか?
ちなみにいつもの宴会はまだいつやるか決めてない。明日でもいいけどスティード君とノワールフォレストの森に行くからなぁ。
そこの獲物でパーティーってのも悪くないかもね。獲れたらの話だけど。




