90、最後の夜の宴
どうやら村長以外のエルフも何人か 芥子毒牙虫を口にしたらしく宴会は狂乱の渦となっている。楽しそうに踊っちゃってまあ。でも大丈夫なのか? 全員ジャンキーになったりしないよな?
「ガウガウ」
腹が膨れたからもう寝るって? お前はマイペースだよなぁ。
『浄化』
たいして汚れてはなかったけど今は手洗いとブラッシングができないからな。それで勘弁してくれ。
「ピュイピュイピュイッピピ」
逆にコーちゃんはかなりご機嫌だ。二級品とは言えカンナビ草のらりらり成分を濃縮しまくった虫なんだもんな。そりゃもうぶっ飛びだね。おまけに草笛まで。こりゃもう今夜はビートイットだね。私も楽しくなってきた。
色んなことがあったけど、やっぱここはいい村だよな。エルフ好感度元通り。
コーちゃんが楽しそうに踊ってることもそうだけど、何よりアレクが楽しそうだもんね。
うふふ。汗が弾けてる。夕日に映えるアレクの汗。最高すぎるぜ。
よーし、私もまだまだ踊るぜ! ツイストでゴーゴー!
気が付けば日が沈んでいる。魔力の明かりが広場を照らし、アレクの胸元が赤く輝いている。胸元だけじゃない。耳に付いている宝石までもが煌めいている。素敵だぜ。眩しいぜ。
「アレク、バイオリン貸して。」
「いいわよ。何を弾いてくれるのかしら?」
「もちろんアレクの歌に決まってるよ!」
前回もやったように弾きながら光源の魔法で花火をあげつつビートを刻むのだ。これが難しい。でも楽しい。アレクにフォーエバーラブだぜ。
行くぜ刻むぜ情熱のビート!
「……カース。大丈夫?」
「ん……あれ? ここは……」
「村長の所のお風呂よ。カースったら魔力がなくなっても光源使ってたのよ?」
あら……思い起こしてみれば……ずっと同じ曲ばっかり弾いてたような。しかも花火の魔法でドラムの音を再現しようとしてたような……
ハイハットにバスドラ、スネアにタムと全部花火の魔法と一緒に音を出そうとさ。かなり大変だった。しかもバイオリン弾きながらそんなことをしたもんだから魔力がどんどん減るわな。で、いつの間にやら気を失ってたってとこか? あらら……恥ずかしいね。
「それよりアレク、気分はどう?」
「私のことなんかいいのに……最高よ。魔力は充実してるし、たくさん汗もかいたし。美味しい料理に美味しいお酒。その上カースが素敵な歌まで歌ってくれたし。幸せすぎておかしくなりそうよ。」
「よかった。これで心置きなく楽園に帰れるね。ちょっと装備を作ってもらうだけのつもりが、えらく長逗留しちゃったもんだよね。」
「うふふ。ラグナは今ごろ何してるのかしらね。」
「あいつのことだから適当な男と遊んでそうだよね。で色々と問題起こしてたりさ。」
「あり得そうね。ダミアン様が大好きなくせに他の男と遊ぶなんて悪い女よね? 子供ができないって悩んでるふうではあったけど。」
ラグナねぇ。私の配下に入ったのはリリスより先なんだよね。だからって楽園で先輩風吹かせてるとは思わないが。
それにしても子供か……コンドームなんてないこの世界だ。普通にヤッてればできそうな気もするが。教会に行けば避妊の魔法を使ってもらえることぐらいは知ってる。ならばその逆は? 妊娠しやすくなる魔法とかありそうなもんだけどな。
ラグナの場合、今までの悪行のせいで子供ができないってことはありそうだよな。天罰的な理由だったり、病気的な理由だったりさ。
「ラグナのことなんかどうでもいいよ。それよりさ。」
アレクにそっとキスして、抱き締める。柔らかな唇、透き通る肌。絶世の美女と同じ湯船。私は何て恵まれているんだ。最高すぎる。少し頭はふらつくけど……今夜はフィーバーするぜ。
『快眠』
あれ……今の魔法は……
「カース、ゆっくり休んでね。疲れた時は休むのが一番よ?」
「あ、え……」
うふ、カースが寝た。私の魔法で。うふふ。
普段なら効くはずもない私の魔法が、カースを眠らせた。最高の気分ね。一糸纏わぬカースが……その身を無防備に私に晒している。寝る時ですら防御魔法を周囲に張り巡らせるカースが。あぁあ……滾ってくるわぁ。
先代も今代も国王陛下が一目置くカースが、今だけは私のもの。私が自由に、その身体を……
『浮身』
まずは優しく身体を拭いてから……
あははぁ、いい身体してる。本当にカースは素敵……
うふふ……夜は長いもの。動けないカースは私のもの。私だけのものよ。
さあ、寝室に行くわよ。カースったら、よく眠っているわね。かわいいわ。うふふふ……




