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異世界金融 〜 働きたくないカス教師が異世界で金貸しを始めたら無双しそうな件 〜 #いせきん  作者: 暮伊豆
第5章

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1989/3108

78、村長の頼み

翌日、村長宅の裏庭で錬魔循環をしていたらアーさんがブラシを持ってやってきた。昨夜は広場で飲んでいたかと思えば、いつの間にやらいなくなってたんだよね。もしかしたらこのために? いやー悪いね。


「ありがとね。カムイも喜んでるよ。」


「ガウガウガーウ」


「うむ。狼殿が喜んでくれたのなら光栄だ。」


赤雷猪(ルアジュレーキボア)の毛、柄にはエボニーエンツォ。超高級品だね。この贅沢モンめ。


「ガウガウガーウ」


「大喜びしてるよ。ありがとーって。」


「うむ。それからこれもだ。ついでに作ってみた。」


お? T字だ。スリッカーブラシか? それにこれは……羽?


「ガウガーウガウ」


「どちらも炎神輝王鳥ガルーダ・ガルトマーンの羽根から作ってみた。狼殿の気分によって使い分けるがいいだろう。」


「これはいいね。ありがとね。カムイも大喜びしてるよ。」


炎神輝王鳥ガルーダ・ガルトマーン の羽根、その根本を使ったT字のスリッカーブラシか。これで大まかに毛を梳かして赤雷猪(ルアジュレーキボア)のブラシで仕上げるわけね。同じく炎神輝王鳥ガルーダ・ガルトマーンの羽根ブラシは埃取りって感じかな。とんでもなく贅沢なブラシが揃ってしまったね。今回はコームタイプはないけど、まあなくてもいいよね。


「ガウガウガーウ」


カムイも大満足だ。今回のフェアウェル村ではコーちゃん満足度も高いしカムイ満足度も最高だよね。やっぱ来てよかったなぁ。


「おーい兄貴。できたぜー」


「ピュイピュイッピピ」


おっ、自称私の舎弟だ。コーちゃんも一緒。コーちゃんたら一晩中煙の中にいたんだね。香ばしい匂いがするし、かなりご機嫌だね。


「ほら、これだよ。こっちが一級品で、こっちは二級品な。そんでこっちが極上品だぜ。混ぜると精霊様のご機嫌が悪くなるから注意してくれよ」


「おう。ありがとな。」


見た目での区別はまったくつかない。毛虫から毛がなくなって黒光りしている芋虫って感じになっているんだから。舎弟が木箱に分けて入れてくれてるから大丈夫だろう。


「ピュイピュイ」


あはは、これをツマミにスペチアーレを飲みたいんだね。そしたらコーちゃんはこう言うんだろ? 美味しくてドラゴンになるってさ。わかってるんだからね。


「ピュイピュイ」


きっとそれ以上? はは、それは楽しみだね。どんだけぶっ飛ぶことやらね……


「カース殿、もう帰ってしまうのか?」


村長まで出てきた。


「ええ。予定より長居しすぎたようですからね。」


「仕方ないのう。はぐれ共の件で協力を仰ぎたかったのだがの?」


「え? 協力ですか? 内容によりますけど。」


こうも素直に言われたら無視できないだろ……


「なに、精霊様と狼殿にはぐれの首魁を探してもらいたいだけさの。どうやら奴め徹底的に身を隠しているようでの。」


気が進まないなぁ。いつまで経っても帰れなくなるじゃないか。だからって自分の用が済んだからさっさと帰るってのも愛想がないしなぁ。コーちゃんどう思う?


「ピュイピュイ」


なるほど。カムイは?


「ガウガウ」


なるほどねぇ。二人がそう言うならまあいいか。


「村長、もう二日ほど滞在することにします。二日だけ捜索に協力しますので。」


「おお! それはありがたい。助かるでな。精霊様も狼殿もありがとうございます。カース殿もありがとうなぁ。」


まったくもう。大して困ってないくせに。そんなに私達に帰って欲しくないのかこの村長は。かわいいとこあるじゃん。ダークエルフのばあちゃんもそうだったけど、もしかして私って年寄りに可愛がられるタイプだったりするんだろうか? 素直に甘えるしね。


「で、何か匂いの元はあるんですか?」


「それが何もないのよ。捕らえたはぐれエルフは四人ほどおるのだがの。生意気にそやつらから全ての情報が消されておったわい。」


情報を消す?


「捕まった後でそんなことができるもんなんですか?」


「何やら条件付けをしていたようでの。例えばイグドラシルに何キロルまで接近するとか、ハイエルフに接触するとかの。その場合そ奴に関する記憶が消えるようになっておった。なかなかの手練れよの。」


「へ、へー……」


すごいな。さっぱり分からん。条件付け? そんなことができるのか……


「おまけに匂いや痕跡なども一切残っておらん。襲ってくるのならば話は早いのだがの。これでは動きが取れぬわけよ。それ故に放っておけとの意見もあるがの。」


「私はそう思う。はぐれごときに霊廟は破れぬし、ましてや始祖の即神体に何かできるはずもないだろう。」


あー、なるほどね。アーさんは放っとけ派で村長は対策したい派なのね。そりゃあ村長が正しいだろう。ただ問題は対策しようがないってことか。だからアーさんは放っとけ派なのかもね。


「その話はまあよい。まずは精霊様にお任せしようではないか。それでも見つからなければ放置すればよい。まったく、やれやれじゃの。」


何だかコーちゃんの責任重大じゃない? そもそも匂いの元もなしに見つかるかってんだ。


「いくら精霊様や狼殿でも奴の痕跡もなしに見つかるとは思えん。精霊様、徒労に終わるかも知れませんがよろしくお願いします。」


アーさんって村長にはタメ口なのにコーちゃんには敬語なんだよね。これはエルフあるあるかな。クロミもコーちゃんには丁寧に接してたし。


「ピュイピュイ」


でも具体的にはどうするんだ? 適当にそこらの山を歩くだけか? そんなの絶対見つからんだろ。


「で、村長。何かいい考えでもあるんですか?」


「あるわけなかろう。ないからカース殿に頼んでおるのだからな。」


うぉーい! 村長も秘技丸投げの使い手かよ!


「二日だけですからね……」


「うむ。すまんが頼んだぞ。」


んもー……今日は帰る予定だったのに。

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― 新着の感想 ―
[良い点] > 「ガウガウガーウ」 お! [一言] 読ませて戴き、ありがとうございました。
2023/04/15 18:26 退会済み
管理
[一言] 見つかるんですかね。
感想一覧
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