75、ナイストリップコーネリアス
村に戻ったら戦利品のお披露目タイム。お披露目ってよりはコーちゃんが早く出してくれとおねだりしてるんだけどね。
まずは大量の毛虫……
一軍と二軍、そしてレギュラー。
「おっ、芥子毒牙虫じゃね? 兄貴よく知ってたなー」
「何それ。知らんよ。コーちゃんが欲しがっただけだよ。で、こいつ何なの?」
「カンナビ草よりヤバい成分を溜め込んでるアルコカロンって木があってな。その木に好んで取り付く虫なんだよ。つまり魔物すら食わねぇほどやべぇ虫だぜ?」
んん? つまり……いけない成分が濃縮されまくり?
「ピュイピュイ」
あ、そうなのね。やっぱコーちゃんはそこまで分かってて……すごいな……
「しかも何だこれ? もう処理が終わってんのか。すげぇな兄貴。あらら、こっちは失敗したやつか」
こいつはこいつで腐ってもエルフか。見ただけで状態を把握してやがる。二軍を見て処理失敗だと言いやがった。
「これはこれでもう完成してんの?」
「そうなぁ、仕上げに煙を纏わせたりもするけど、やっておこうか?」
「ピュイピュピュイ」
もうコーちゃんの機嫌が鰻登りだ。コーちゃん満足度が天元突破。それはそれとして、鰻が食べたくなったじゃないか……カレーも食べたいし……カレーと言えばアーニャ、綾子……私は今になってこんなことを。だって連想してしまったものはどうしようもない。悲しくなってきた……
鰻、カレー……
「兄貴、兄貴って。どうすんの? やっとこうか?」
「お、おお。頼む。」
「はいよ。そんじゃカンナビ草くれよ。たっぷり持ってんだろ?」
「あ、ああ。ある。」
ん? 何の関係が?
「とりあえずあるだけ出してくれよ」
「ああ。」
「おっ、これ根こそぎじゃん。さっすが兄貴。これは置いといて、こっちだけ貰うぜ」
私が適当に刈った方だけ持っていきやがった。一体何に……あ! やっと分かったぞ。そういや煙って言ってたもんな。燻製に使うんだろ?
「それを燃やすのか?」
「そうそう。カンナビ草で燻すといい感じにめちゃくちゃ飛べるようになるぜ?」
それって普通なら廃人一直線だろうが……
「ピュイピュイ」
「はは、精霊様に喜んでいただけるなんて光栄です。ちっと待っててくださいね!」
見たら分かる。コーちゃんが目をめっちゃ見開いて、キラキラさせてるし。
「ピュイピュイ」
あらあらコーちゃんたらもう。
「コーちゃんも一緒に行くってさ。一緒に煙を浴びたいって。ついでに酒も欲しいってよ。」
「分かったよ。そんじゃ精霊様も一緒に燻せばいいんだな。じゃあ兄貴、後でな」
「おう、頼むわ。」
それにしても……コーちゃんたら薬漬けすぎるだろ。お薬成分をたっぷり吸い取った木の栄養をたっぷり吸い取った虫を、同じくお薬成分たっぷりの草を焼いて燻製にするだなんて。どんだけ強烈にナイストリップできることか。もしかして私でもラリラリになってしまうのでは? それはいかんな……興味はあるけど。さすがにジャンキーなんぞにはなりたくないからな。ローランド王国中の笑い者になってしまう。
「カース、私もちょっと……」
「あ、うん。いいよいいよ。僕のことは気にしないで。」
分かっているとも。アレクも手に入れた何かを精製したいんだよね。私のために。
「ガウガウ」
あ、ああそうね。お前がさっき食べたのは食前酒みたいなもんなのね。いや、食前肉か……分かったって。解体するって。少し待ってろ。
まったく、カムイは食いしん坊なんだから。
ふぅ。そろそろ夕方か。今日もよく働いたなぁ。ここには遊びに来たはずだったのに……
「ここに居たか。村長が呼んでいるぞ。来い。」
「あら、そうなの?」
わざわざアーさんが呼びに来た。村長なら伝言で呼べばいいだろうに。
だいたい解体も終わったし。いいタイミングかな。あー疲れた。
なんだよ。村長んちの居間じゃん。わざわざ呼ばなくても帰ったのに。
「待たせたなカース殿。できたぞ。」
「出来たって、あ! 装備が!?」
不動と同じサイズの棍、そして鉢金に籠手、それから脛当てだ。
ふふ、ついに手に入れたぞ。最強の防具をな! これで私は無敵だ! エクスタシーだ! ふふふはははは。




