72、ぶらり草原一人旅
『落雷』
さらに威力を五割落とした。ふぅ。これで全部沈黙したな。
『浮身』
落ちた毛虫を浮かび上がらせて……
「ピュイッ!」
え? 最初に落とした奴と選別が要るの!? ちょっと……それは勘弁して欲しいなぁ……
確かに見た目の焦げ具合は多少違うけどさ。
「ピュイ」
浮身の? 威力を落とすの?
あ、なるほどね!
この中の毛虫で一番軽い奴がどうにか浮く程度の威力で……
『浮身』
おおー、七割ぐらい落ちた。
「ピュイピュイ」
ああ、今浮いてるこいつらは品質がよくないのね。二軍としてキープ? どこでそんな言葉を覚えたんだい。
「ピュイ」
ほんの少し威力を上げる? オッケー。
『浮身』
落ちた毛虫のうち三割が浮き上がった。
「ピュイピュイ」
へー。こいつらが最高品質なの? コーちゃんの嗅覚はすごいよなぁ。この場合嗅覚と言っていいのかどうかは分からないけど。
よし風壁できっちり囲んでから収納。これでいい?
「ピュイ」
おっと、最後に落ちたこいつらも収納するんだね。
「ピュイピュイ」
へー。意外にこいつらは一軍なの? ならばさっき収納したのはレギュラーかクリーンナップってところか。
それにしても……カムイだっていつの間にやらブラッシングって言葉を覚えていたが、コーちゃんもいつの間にそんな言葉を覚えたのやら。不思議だね。
あー、それにしてもキモかった。木にびっしりと毛虫が……
「ピュイピュイ」
あら、コーちゃんたらまたどこかに行ってしまった。コーちゃんもカムイも自由だよなぁ。こんな危険な山岳地帯で……まさに傍若無人だよね。
さっきまで毛虫がまとわりついていた木。一応キープしておこうかな。
『水鋸』
よし。ゲット。
さてと……とりあえずさっきいた所まで戻ろうか。そこからどっちに行くか決めよう。奥まで行くか、外縁部に戻るか。
ふぅ。少し腹がへってきた気もするが、帰るまで我慢かな。とてもこんなキモい所で食べる気がしないもんね。
さて、どっちに進もうか……行くか戻るか……
そうだ。これで決めよう。履いてる雪駄を……ぽーんと飛ばして……
あらら、しまった。勢い余って草むらに入ってしまったじゃないか。もー、これでは表か裏が分からない。
風斬……やめておくか。あの雪駄それなりに高いんだよな。仕方ない……地道に探すか。
ん? 魔物か。草むらで呑気に寝入ってやがる。その背中に私の雪駄発見。寝てるとこを悪かったな。返してもらうぜ。
『浮身』
よし。返ってきた。やれやれ。ちなみに雪駄は表だったので、このまま奥に進むとしよう。この魔物は無視でいいかな。
それにしても、上空から見ると見事な緑の絨毯なのにさ。いざ歩いてみるとめっちゃ草むらじゃん。しっかり刈らないと全然歩けないよ。
あれ? 植生が少し変わってきた? あんまり深く入ってないのに。これ何だろう……カンナビ草とは違うようだな。
そこそこ綺麗な花が咲いてるね。上の方が白くて下に行くほど紫にグラデーションしてる。他には花びらが細く千々に乱れた白と紫なのもあるのか。ほぇー。綺麗でいいね。でも葉っぱがギザギザしてて近寄りたくないな。全部刈るからどうでもいいけど。
『風斬』
まずは花だけキープしておこう。白と紫がいい感じに綺麗だからアレクにプレゼントするんだもんね。
よし。こんなものかな。これをさっきゲットした蔦で束ねて……よし。花束ができた。
では改めて……
『風斬』
地面スレスレを斬る。これはどう見てもカンナビ草じゃないよな。別に収納しておこうか。
それにしても……かなり集まったよな? これだけ草があれば……どんだけいけないお薬を作ることができるんだ? 上手くやればかなりの財産を築けるが……どうでもいいか。コーちゃんが喜んでくれたらそれでいいや。
それにしても、ローランド王国では特に規制されてないんだよな。賭博も娼館も薬物も。
全てきちんと届けを出しさえすれば合法。逆に言えば無許可でやった場合は罰則がキツいんだよな。普通に奴隷落ちだもんな。
娼館は合法なのに、いわゆる『立ちんぼ』は違法なんだよな。お薬だってそうだ。ちゃんとした店で買う分には問題ないけど、街で売人なんかから直接買ったりしたら双方とも奴隷落ちだもんたな。だからみんな普通に薬屋とかで買うんだよな。まあ、売人なんて一回しか見たことないけど。おまけに街娼なんか一度も見たことないし。
おっ、えらく大きい花だな……




