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異世界金融 〜 働きたくないカス教師が異世界で金貸しを始めたら無双しそうな件 〜 #いせきん  作者: 暮伊豆
第5章

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38、カムイとお散歩

目が覚めたら昼過ぎだった。もう少し寝てたかったなぁ。


「ガウガウ」


そう。カムイに揺り起こされたから。腹がへったらしい。昨夜はあれから肉を焼いてやったのに。


「おはよう。カースも起きたのね。何か食べる?」


「おはよ。うん! 頼める?」


アレクも起きてたのか。あー、カムイめ。私が起きないとアレクに料理を頼めないもんだから起こしやがったな? 知恵が回るなぁ。




美味しい朝食、いや昼食だった。やはりアレクは素晴らしい。


「ガウガウ」


散歩に行きたい? もちろんいいとも。行っておいで。


「ガウガウ」


え? たまには一緒に歩こうって? 迷宮でどんだけ一緒に歩いたと思ってんだよ。でもカムイにしてはかわいいこと言うじゃん。ぜひ行こう。


「ピュイピュイ」


おっ、コーちゃんも行くよね。するすると私の首に巻き付いてきた。コーちゃんもかわいいなぁ。


「アレク、散歩に行こうよ。思えばこの村の周辺ってあんまり歩いたことがなかったよね。」


「楽しそうね。確かに柵の外側って歩いた覚えがないものね。」


柵の内側はぐるっと一周歩いて三十分程度。そこまで広い村ではない。だが、外側には畑や小屋などの建造物もあったりするのに、そこまで柵で囲ってないのは何か理由があるんだろうか? イグドラシル材が足りないとか? でもこの村の歴史ってめちゃくちゃ長そうだしな。足りないはずがない。きっと違う理由なんだろうね。


「おっ、アーさんおはよ。調子どう?」


アーさんことアーダルプレヒトシリルール。この人だけはばっちり覚えてるんだよな。最年少で長老衆となった村の幹部。他の長老衆って見たことないけど。


「別に、普段通りだ。出かけるのか?」


「ちょっと散歩にね。ところで魔物が多いのってどっち方面?」


「この辺りはどこに行こうとも村から七、八キロルも離れれば魔物だらけだ。」


そりゃそうだ。


「逆に村の聖地みたいな感じで立ち入ってはいけない場所とかある?」


「いや、特にない。南側に霊廟がある程度だ。」


墓地ではなく霊廟ときたか。あ、そうか。エルフって死んだらイグドラシルに還るんだったな。だから個人個人の墓の代わりに霊廟があるのかな?


「ありがと。じゃあ行ってくるね。夕方までには戻るよ。」


「ああ。」


そんなこといちいち報告しなくていいだろうにって顔してんな。私達は来客だから一応ね。今夜の料理は何かなー。




村を出て西に進んでみた。大雑把に言えば東には蟠桃の園があり北にはダークエルフの村がある。で、南には霊廟があると聞いたので西にしてみたまでだ。




休耕田のような一帯を通り抜けると草原エリアへ出た。その向こうには険しい山々が見える。とりあえずそこまでは歩いてみよう。


「少し歩きにくいね。」


ぬかるんでるんだもん……


「そうね。履き替えるわ。」


アレクは換装を使いブーツに履き替えた。私はどうしようかな……雪駄しか持ってないんだよなぁ。早くドラゴンブーツが完成しないかなぁ。


「じゃあ僕は裸足になろうかな。」


雪駄も靴下も収納し裸足になる。たまにはこんなのもいいだろう。さすがに冷たいけど。草がくすぐったくて不思議な感覚だな。


「まあっ、カースったら。貧民街の子供みたいなんだから。」


言い方は酷いが表情は笑顔。やんちゃな子供を見る顔だ。


「この履き物を汚したくなくてさ。それにたまにはこうやって歩くのもいい気分だよ。」


たまにどころか初めてだけどさ。気分は前世の小学生時代だよ。


「ふふっ、カースらしいわね。」


「ガウガウ」


歩きにくいから先に行く? いいけどお前散歩に来たんじゃないのかよ。自由なやつだなぁ。


「ピュイピュイ」


あ、コーちゃんまで。私の首から離れて地面に降りた。そしてぬかるみをものともせずにスイスイと進んでいった。


「僕らはゆっくり行こうね。」


「ええ、そうね。ただし警戒しながらね?」


「アレクに任せるよ。」


「分かったわ。任せてね。」


なんせここは世にも危険な山岳地帯だからな。魔物の強さで言えば迷宮など比較にならない。そこを裸足で歩くなんて正気じゃないね私。しかも足裏には自動防御を張ってないのに。


『氷弾』


ほら、もう来た。地面からぬるりと頭を出したのは顔のない蛇の魔物。コーちゃんがいたら蛇をいじめないでって言うんだろうけどさ。もうアレクが撃ち抜いちゃったよ。


蛭蛇(サンシュペント)の一種かしら? 魔石だけ取っておくわね。」


「それっぽいね。肉はいらないよね。」


ヒイズルでの最初の迷宮、カゲキョーでは蛭の魔物が多かったんだよなぁ。肉の味は悪くなかったけど、好んで食べたくはないよなぁ……だいたいこいつは小さいし。


アレクは小型のナイフを器用に使い、たちまち魔石を取り出してしまった。明らかに私より解体が上手い。


「これ、どうするのがいいかしら?」


「捨ててもいいとは思うけど、一応持って帰ろうか。村のみんなが食べるって言うかも知れないし。」


「それもそうね。」


解体後の獲物を放置するのは酷いマナー違反だ。その肉を他の魔物が食べることにより強くなったりその周辺に集まりやすくなったりするからな。場合によっては悪臭や疫病の原因にもなるしね。

だがここは魔物だらけの山岳地帯。ノワールフォレストの森でも同様だが、この辺りでは一匹や二匹、いや百匹放置しようとも誤差でしかないとは思うんだよな。相当たくさんの魔物が生存競争してるはずなんだからさ。でもまあマナーはマナーだからね。エルフのマナーではどうかは知らないが、私もアレクもクタナツの冒険者だからね。冒険者のマナーに従って行動するさ。


ちなみに湿地を抜けるまでにアレクは十二匹ほど仕留めて、私は足の裏を二回吸われた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 何だかファミリーみたいですね。
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