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異世界金融 〜 働きたくないカス教師が異世界で金貸しを始めたら無双しそうな件 〜 #いせきん  作者: 暮伊豆
第5章

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35、化け物ハイエルフ







「そ、そうか……ま、まあよかろう……できぬほどではないからの……だが数日待ってもらおうかの。」


ふふふ。発注してやった。少しばかり困ってるみたいだが気にしないぜ。

不動と同じサイズの棍、そして鉢金。おまけに籠手、そして脛当てまで。全てを装備してしまえば重くて動けないだろうけど、パワーリストやパワーアンクルとして使用することもできる。

しかし注文はそれだけでない。


「魔力を流したら軽くなるようできませんか? できますよね? お願いします。」


「まったく……カース殿は無茶を言うものよ。仕方あるまい。ただし魔石は提供してもらうからの。よかろうの?」


「もちろんです。頼みますね。」


「やれやれじゃの。他ならぬカース殿の頼みだからの。仕方ないわえ。」


フェルナンド先生からいただいたエルダーエボニーエントの籠手を失って以来、腕の防御がスカスカなんだよな。そりゃあ自動防御で全身を守っているから問題ないと言えばないんだけどさ。それでも最強の防御を誇っていた籠手が無いのは由々しきことだもんな。心もとないって言うかさ。


だから今回は最強の攻撃力だけでなく最強の防御力をも求めてみた。これから先も未知の場所を旅することもあるだろうし、これぐらい用心したっていいだろう。

だいたいクロミが化け物ハイエルフって呼ぶほどの村長なんだ。『軽化』を防具に付与することぐらいできるだろ。いかに対象がイグドラシルであろうとも。


それにクランプランドのボンドゥさんはマギトレントの湯船造りで大忙しだからな。そこにイグドラシルの加工なんて頼めるはずがない。我ながらいい采配だよな。使える者はハイエルフでも使うのさ。


「おおそうだ。儂はまだ夕食が済んでおらぬ。カース殿、何か作ってくれぬか?」


「いいですよ。と言っても肉を焼くだけですけどね。」


「あ、では私がやりますわ。村長のお口に合うかは分かりませんが。」


やったー。村長の家なら台所もしっかりしてる。これならアレクも本領を発揮できるってもんだ。


「ほう? それは楽しみじゃて。うちにある物は好きに使って構わぬゆえな。」


「はい。では用意して参ります。」


「ピュイッ」


コーちゃんがアレクの首に巻き付いた。さてはつまみ食いするつもりだな?


「ついでにカムイを治してやってもらえないですか?」


「ガウガウ」


ついで扱いするなって? はは、まだ元気あるじゃん。


「ほう? もしやカカザンと戦ったのは狼殿だったか。ふむ、勝つには勝ったがそれなりの手傷を受けたか。どれどれ……」


村長はカムイの額に手を置き、魔力を流している。


「むっ、これは酷いな。左の前脚はきれいに折れておるだけだが、後脚は砕けておるではないか。さてはカカザンに握られおったな? 以前も同じことがあった気がするがの。まあよい、少々待ってもらおうか。先に前脚を治すからの。」


あれ? そんなこともあったっけ? だめじゃんカムイ。


「すいませんね。どうもカムイのやつ序盤は真正面から戦ったようで。あ、魔力が要るなら吸ってくださいね。」


帰りの板の上で少し聞いたのだが、カムイとしては力押しで勝ちたかったらしい。その気持ちはよく分かるけどね。だからってそんなごり押しする所まで私に似なくていいのに。


「特に不足はない。が、せっかくカース殿が申し出てくれたのだ。いただくとしようかの。」


カムイの左前脚を治した後、村長は私の額に触れた。


「では、いただくぞ?」


「ええ、どうぞ。」


おおっ!? え、マジで!?


「ほほぉ……分かってはおったが……何という莫大な魔力よの。やはり勇者ムラサキなどとうに超えておる……」


一瞬で半分抜かれた。マジで? 村長そんなに魔力容量あるの?


「ちなみに村長……今もう満タンになってます?」


「まんたん……確かムラサキ殿もそのような言葉を使っておったな。儂の魔力が限界まで回復したかということじゃな。そもそも元からほとんど減っておらぬわ。この際だから少々多めに貰ったまでよ。」


ん? 減ってないのに吸えるの? どういうこと?


「くくく、不思議か? 内緒、と言いたいところだが……どうせみんな知っておることだしの。大した秘密ではないさの。」


「秘密……ですか?」


「儂の魔力についてよ。儂の魔力総量はカース殿の二割といったところか。とても相手にならぬ程度しかないわえ。だがの、カース殿の魔力を全て吸い取ることもできる。理由は……」


理由は?


「儂がイグドラシルと繋がっておるからよ。」


ん?


「イグドラシルと? ちょっと意味が分からないんですけど……」


「くくく……儂も分からぬさ。ただ分かっておることに、儂はイグドラシルの魔力を自由に使えるということよ。逆に儂の魔力をイグドラシルに注ぐこともの。この村の中にいる限りいつでも自由にの。」


「そ、それって……」


めちゃくちゃだ……マジかよ……


「そう。儂の魔力は理論上は無尽蔵だということよ。あくまで村の中にいる時に限るがの。」


「と、とんでもないですね……」


「どうだ? 見直したかの?」


「ええ、お見それしました。さすが化け物ハイエルフと呼ばれるだけあるかと。じゃあカムイの後脚もしっかりお願いしますね。」


頼りになる相手はとことん頼りにさせてもらおう。


「任せてもらおう。カース殿のそんな顔を見れたことが何よりの対価よ。」


どんな顔してたんだ? かなり驚いたことに間違いはないが。


「それはよかったです。ちなみにそれができるのは村長だけなんですか?」


「おおとも。このフェアウェル村ではの。他の村がどうかは知らぬぞ? おそらくはハイエルフに至った者だけの特権らしいからの。」


「な、なるほど……」


ということはダークエルフの前村長、インゲボルグナジャヨランダばあちゃんはそこまで至ってなかったのか……

もし、その領域に至っていればイグドラシルの異変やマウントイーターの発生に気付けていたのだろうか……終わったことを考えても仕方ないが、ふと気になってしまった。


それにしても、やはりエルフって只者じゃないんだな……


あ、カムイが治ってる。やっぱやるなぁ。

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