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異世界金融 〜 働きたくないカス教師が異世界で金貸しを始めたら無双しそうな件 〜 #いせきん  作者: 暮伊豆
第5章

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32、狼猿相討つ

意外なことにサルコはアレクの慈悲を素直に受けた。ポーションの半分を首にかけられるままに。そして残り半分を注がれるままに飲んだ。


「ウキィィ……」


ばつが悪そうな顔して去っていった。どうやらカカザンの近くへ向かうらしい。加勢するのか? まあいい。それはともかくアレクの勝ちだ。




「お見事だったね。快勝ってところかな?」


「そうでもないわ……魔法は効かないし触れられたら終わりだし。冷や汗が止まらなかったわ……」


「その割にいきなり接近戦を挑んだのはどうしたこと?」


「ああ、あれはこの短剣が通じるか試しておきたかったの。もしこれが通じなかったら彼女を斬り裂ける方法がないってことだから。」


おお……さすがアレク。よく考えてるよなぁ。クレバーで素敵。


「でも、さすがのムラサキメタリックね。おかげでこれを主体に戦法を組み立てることができたわ。」


戦法ね……たまには私もじっくり考えるべきか。いや、ごり押しこそ私の真骨頂だ。いつもこの結論に至る気もするが、私はそれでいいのだ。


「色々やってたけど、結局は最後の火柱につなげるためだったの?」


「半分はね。あれだけの魔法なんだから途中で決着がついてくれてもいいのにって思いながら足掻いてたわ。最後の火柱だって闇雲でもよかった気もするし。でも音や匂いでバレたら嫌だもの。」


「あー、それはそうかも。やっぱ火柱で正解だね。火に紛れてあいつの首を斬ったんだよね? 髪の毛が焦げてないところが見事だよ。」


火柱は火で囲む魔法ではなく火の塊が立ち昇る魔法だからな。あの中を急上昇して無傷なのは見事な魔法制御と言えよう。だが……


「じゃあアレク、右手を出して?」


「え、ええ……」


ポーションばしゃばしゃ。

まったくもう。隠したってだめなんだから。酷い火傷じゃないか。白魚のような指が丸焦げだよ。無茶しないでおくれよ。


「村に帰ったら村長にしっかり治してもらおうね。」


傷一つ、シミ一つないように。


「うん……」


顔や体は風系の魔法防御で覆ったのだろうが、右の手首から先はムラサキメタリックの短剣を握ってるせいで剥き出しだったんだろう。手袋ぐらいすればいいのに。その余裕がなかったのかな。


ま、今回はそんな短剣で首をざっくり斬られても生き残ったサルコも褒めてやろうかね。アレクを相手によく戦ったよ。首が飛んでもおかしくなかったはずだもんな。


「よし。カムイを見に行こうよ。もう終わってそうだけど。」


「そうね。カムイだってヒイズルで強くなったものね。」


なんせ迷宮では悪食の魔物に一対一で勝ったんだからな。たしか 修蛇渕(しゅだぶち)って言ったっけ? あれに比べればカカザンなど相手になるまい。






「ガウゥゥゥ……」


「キキィィ……」


げっ、いい勝負してるじゃん……

カムイは左前脚が折れてる。カカザンは胸が斜めにざっくり切れてる。大きく目立つ傷はその程度だが、どちらも全身傷だらけだ。切り傷のカカザン、打撲のカムイってところだろうか。


「ガウァァ!」


「キキィ!」


おお、最後の攻防か!?

カムイは低く身構える。今にも弾け飛びそうなバネのように。

カカザンは先にいくほど太くなる棍棒を高々と構える。今にも落ちてきそうなギロチンのように。


よく見るとカカザンのだいぶ後方にサルコがいる。木の陰からひっそりと顔を覗かせているじゃないか。お前は剛球投手の姉かよ。


「ガアアァ!」


うおっ!? カムイの姿が消えた! いつもの超スピードだ! カカザンの体に次々と傷が増えていく! カムイったら脚が一本折れてるのに……

だが……致命傷には至ってない、か。カカザンは耐えつつも構えを崩さず、棍棒を振り上げたまま。きっと渾身の一撃を狙っているのだろう。


「キッ!」


土が爆発した!? 一瞬にして棍棒を振り下ろしたのか! なんて威力だ……

カムイは大丈夫なのか? どこにいる?


「キキキィ!」


いた! カカザンの右手に噛みついてる!


「ギギィ!」


おお、棍棒を落としたぞ! それを……マジかよ! 咥えていきやがった! カムイ、棍棒使えるのかよ。クソ重そうなのに。


「キキキッ!」


あ、ほらぁ! そんな重いもん咥えてるから容易く追いつかれたじゃん! カカザンだってノロマとは程遠い魔物なんだからさ!


おおっ!? カムイやるじゃん! 急停止からの後ろ蹴り! 後ろ脚がずぶりとカカザンの腹に刺さってる! カムイの爪は鋭利だもんな。


「ギギィ……」


なっ!? 無事な左手でカムイの左脚を掴み、腹から抜いた!? で、振り上げて……地面に叩きつけた!? しかも叩きつけては持ち上げて……一回、二回……おっ!?


「ガウッガガアッ!」


おお! 三回目に叩きつけられた後、一瞬の滞空時間で身を捩ったカムイ。魔力刃がカカザンの左手を斬り裂いた! が、切断には至ってない。マジかよ……こいつの毛皮ってこんなに堅固だったか?


だが、これでカカザンは両手が使えなくなった。その代わりカムイもふらふらだ。全身を叩きつけられた以外に三半規管にだってダメージがあるのだろう。あ、左後脚も折れてるじゃん……やっぱカカザンの握力はとんでもないな。


それにしてもカカザンめ、胸や腹の出血が止まってないのに元気だな。そろそろ手当てしないと死んでしまうぞ? こいつに死なれると困るんだけどな。


「ガウゥゥ……」


「ギギィ……」


今度こそ最後の睨み合いか。お前らもう仲良くしろよ……

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[一言] まだまだノーサイドとは言えませんか。
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