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異世界金融 〜 働きたくないカス教師が異世界で金貸しを始めたら無双しそうな件 〜 #いせきん  作者: 暮伊豆
第5章

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26、草笛霧奏

草笛の音色が一段と艶を増し、音量も上がった。曲調も複雑さを見せ、最高潮に達した。ここはサビか?


アレクは私に抱きついて腹に顔を埋めてぐりぐりやってる。めちゃくちゃかわいいんだけど!


あ、単調になった。半音違いの二音を長めに繰り返してる。なんだかそら恐ろしい音階だな……でも悪くない。浸れるって言うのかな。いい気分だよ。




魔草曲(まそうきょく)『幻惑草原の調べ』より『サティバエル』でした。皆の者。ご清聴ありがとう」


「いよっ! ゾルゲンさん!」

「エルフ族一の笛吹き!」

「ラリラリでノリノリ!」

「ピュイーピュイー」


コーちゃんも尻尾で地面を叩いて喜んでる。まさか草笛でここまで盛り上がるとは。


「おお、精霊様。ご満足いただけましたか。お聴きくださりありがとうございます」


「酒との相性が抜群だと言ってます。僕もいい曲だったと思います。」


「カース殿にまでそう言ってもらえるとはありがたい。では演奏に使ったこのカンナビ草は進呈しよう。ご自由にお使いくだされ」


いくら美形でもオッさんが咥えた草なんかいらーん!


「ピュイッ」


あらら、コーちゃんが……


「ピュイッピィー!」


葉っぱを噛み噛みしちゃってるよ……しかも美味しいって? 美味しくてドラゴンになる? それ前にも聞いたことがあるね。


「おお、お気に召してくださいましたか。これは幻惑草原ことエブロワール大草原に群生しております薬草『カンナビ草』の若葉です。採取してから乾燥させないように毎日魔力を通しております。」


よく分からないが手間暇かけて育てた楽器ってことだよな。


「ピュイッ」


「また欲しいそうです。で、さっきの演奏は何だったんですか? えらくいい気分になりましたけど。」


アレクは未だに私の腹にぐりぐりしてるし。


「ああ、このカンナビ草は薬草ではあるんだけど、使い方を誤ると極限の快楽で頭が狂いかねないんだ。人間ってこの手の薬が好きなんだろう? 我々エルフも嫌いじゃないんだよ。私はそれを演奏に乗せて皆の疲労を癒すことを特技としてるのさ」


ん? よく意味が分からん……

つまりこの草は、コーちゃんが好きな気持ちよくなるお薬の原料ってことか?


「ピュイピュイ」


あ、やっぱりそうなのね。コーちゃんの好きなお薬なのね。あれって南の大陸産が上物なんだよね。それと対等なレベルなんだね? エルフやるじゃん。

それにしても気になったことがあるぞ。マリーパパに聞いてみよう。


「さあ次は誰だ? ゾルゲンツァファリーアスの草笛霧奏そうてきむそうに負けてよいのか? まだまだ日は高い! どこまでも楽しむとしようぞ!」


「村長待ってください。少し話がしたいです。」


「なんじゃカース殿。酔いが醒めることを言うでないぞ?」


私を何だと思ってんだよ……


「魔草曲『幻惑草原の調べ』より『サティバエル』って言ってたじゃないですか。てことは他にもたくさんあるんですか?」


「ほう? せっかくだ。ゾルゲンツァファリーアスよ、カース殿に説明してやるがよかろう。」


あ、そこまでマジな話じゃないんだけど……


「カース殿! 我々の魔草曲に興味を示してくれて嬉しいぞ! そもそも魔草曲とはな…………」




ほうほう。魔草曲(まそうきょく)とは草笛を使って奏でるメロディ全般のことなのね。その中でも曲名に幻惑草原を冠するのは楽器として使う草にエブロワール大草原ってとこで採れたやつを使用する場合だけなのね。この山岳地帯にも草原ってあるんだな。そりゃあってもおかしくないとは思うけど……

で、その草原は……へぇー! やばい植物だらけなのね。クタナツの北に広がってるグリードグラス草原もそこそこやばいけど、こっちは桁が違うんだろうなぁ。


そんな中でわざわざ若葉を採らないといけないとは……なかなか大変だね。あぁ、ポーションの原料にしたり酒に混ぜたりもするのね。カンナビ草かぁ……便利な草もあるもんだね。


で、そんな草で笛を吹くと催淫や酩酊、享楽や弛緩などと言ったいけないお薬の効果を出すこともできるのね。すごいね。もっとも、奏者の腕前次第と。


私達もそうだけど魔力が高いといけないお薬を楽しんでも全然依存症とかにならないんだよね。それなら楽しんだもん勝ちって気もする。だいたいクタナツでも王都でも普通に売られてるしね。

でも高いから依存症になって身を持ち崩す奴って意外と少ないんだよな。だいたい薬物中毒になる奴って自制心のない愚者ってことでめちゃくちゃバカにされるし。もっともバカにされる頃には残り寿命も少ないってんで適当に身ぐるみ剥がれて人生にとどめ刺されるんだけどね。やっぱ薬中(ジャンキー)になっちゃあいけないよね。


「といった感じさ。我々にとって草笛霧奏(そうてきむそう)の技術も大事だが魔草曲という代々歌い継がれる伝統も大事なのだよ。」


「なるほど。よく分かりました。」


草笛霧奏って笛を吹きながらお薬の成分を周囲に舞い散らせる技術のことだったのね。よく吹きながらそんなことできるな……

ギター弾きながら歌いながら魔法を使うようなもんだろ? すごいな……


「さあ次は誰かの? 草笛自慢はゾルゲンツァファリーアスだけではないというところを見せてみよ!」


うーん、面白くなってきたね。

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― 新着の感想 ―
[一言] ギター弾きながら、歌いながら、いせきんを書いてたりして。
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