805、降り注ぐ氷塊 ※
さあて……どうしてくれようか……
『クロミ! 場所を移す。こいつを穴の上から誘き寄せるぞ!』
『分かったし! ニンちゃんがいる方でいいっしょ?』
『おう! 頃合いまで静観しててくれ!』
『分かったし!』
ホワイトドラゴンには私一人に集中してもらわないといけないからな。
『火球』
とりあえず鼻先にぶつけてやるが……
鼻息ひとつでかき消しやがった……鉄でも溶かす火球なんだけど……
『キュオオォ!』
おっと、さすがに近寄ると避けにくいな。まだ余裕があるとはいえ、結構ヒヤヒヤする。このくそ寒いのに冷や汗が出る程度には……
『烈風斬』
こいつに効くとは思えないが、この魔法だとかなり魔力対効果が高いんだよな。
全て命中。避けもしなければかき消しもしなかったな。眼中にないのか、それとも見えなかったのか……
『烈風斬』
ただし今度は数百単位だ。お前の皮膚装甲に効かないことは分かっている。しかし、こいつで目を狙われるとどうだ?
『グォゴォオオ!』
なるほどね。やっぱかき消すんだな。わずか数発とはいえ目に当たった後で。
なるほどね。
『クロミ、こいつ魔力の感知が甘いな。死角からの魔法ならそこそこ当たりそうだ。魔力を練りつつ待っててくれ。』
『分かったしー。』
私もやるぜ。
『舞い踊る砂塵』
大規模砂嵐だ。こっちからお前の姿は見えるが、お前からは見えまい? 目も開けてられないだろう。
『グォゴォオオ!』
『キュオオオオ!』
ちっ……全方位ブレスでかき消した後、一瞬で私を捕捉して収束ブレスを撃ってきやがった。その早業は見事なものだが、やはり目に頼ってるってことか。魔力探査なんて細かいことなんてやる気がないのかできないのか。
一進一退の攻防を続けながらもじわじわと後退していった。私が退けばホワイトドラゴンは追ってくる。退かなくてもブレスで狙ってくるし、近寄りすぎると爪を振るってきたり大口を開けて食い殺そうとしてくる。
正直こいつが口を開けてる時ってチャンスなんだけどさ……開けてから閉まるまでが一瞬すぎてなかなかタイミングが難しそうなんだよな。
だが……やったぞ。ついにホワイトドラゴンを大穴の上から氷の上へと誘き寄せた。どうもこいつって大穴の上から離れたくなさそうなんだよな。ここまで引き連れてくるのは結構苦労したんだぞ?
そして……各自に伝言での連絡もバッチリだ。
『氷炎響叉』
きたぁ! クロミのお得意魔法! ホワイトドラゴンの頭部を両サイドから炎と氷で挟み込んで……しかもそれぞれが十メイルの特大サイズ! クロミが大穴の暗闇に身を隠したまま撃ち込んだせいか、かき消されることもなく直撃だ! あいつの顔が炎と氷に潰されてる。
「ガウガアァァ!」
そこを狙いすましたカムイ。魔力刃をフルに伸ばしてあいつの脚を駆け登る! 表皮を斬り裂きながら! さすがカムイだ。ドラゴンの皮膚だろうとお構いなしか。
大穴の上にいられたんじゃあいくらカムイでも何もできないからな。
そしてアレクも。
『グォゴオオオオオオオオオオオオオオ!』
よほどカムイが邪魔だったんだろう。かなり強力な全方位ブレスでぶっ飛ばした。クロミの魔法直撃をくらっておきながら大したもんだ。
だが、カムイに構ったせいで……隙だらけだぜ?
『降り注ぐ氷塊』
アレクのフル詠唱、全魔力特盛バージョンだ。平民宅ほどもある氷塊が数百単位で落下してくる。もう三秒ブレスを待つべきだったな。
『全員退避!』
巻き込まれたら大変だからな。
『グォゴオオッ』
遅い! 直撃だ!
広範囲に落としたせいか命中率は二割ってとこか。だが、充分だろう。一発当たるとブレスで反撃する余裕がなくなったようだからな。
ここでダメ押し!
『メテオストライク』
今なら確実に当たるだろう。なるべく高くから……特大の氷塊を一つ。
アレクの魔法が終わる前に……ぶち当ててやるよ。
『キュオオオオ!』
くそっ、もう立て直しやがったのか!? 落ちてくる氷塊に向けて収束ブレス一発!
でもなぁ、私だってそれなりの魔力を込めてんだよ。その程度のブレスで霧散させられてたまるか! 間に合わせに吐いた程度のブレスでな!
『徹甲連弾』
ほぉら、上だけ見てると腹に穴が空くぜ?
「ギガァァッ!」
ちっ、さすがに穴は空かないか。だが、充分だ。こっちを見てる場合じゃないだろう? 上から来てるぜ?
収束ブレスで半分ほど霧散した私の氷塊が直撃。ホワイトドラゴンを氷上に押し潰す。
やったか?
やったよな!?
絶対やっただろ!




