753、剛力聖女フラン
あぁ?
ジュダの野郎……もう魔石爆弾を使いやがったか。確かに密封される前に使えば衝撃も少ないだろうけどさ。威力はそこそこのようだ。確実に私の鉄塊ミサイルを弾き返すほどに。生意気な……
それにしても、一体いくつ魔石爆弾持ってやがんだよ。そしてクリムゾンドラゴンの魔石爆弾、あれはもう使ったのか? それともまだ温存してるのか? そこが気になる。
東の上空で私に使ったあの大爆発。あれがそうだと思ってはいるのだが、さっきのもかなりの威力だった。永久凍土のような部屋が溶岩になったんだからな。
「待てやぁ! こぉんなちまちま撃ちあってたって面白くねぇ! 男なら剣でかかってこいや!」
バカが何か言ってる。
「いいだろう。僕ごときに勝てない君がカースの相手をするなんて一生、いや三生無理だね。かかっておいで。」
くぅー兄上かっこいい! 私は相手をする気などなかったのに。間髪入れず受けて立つなんて男だねぇ。そりゃあ兄上だってクタナツの男だもんな。
それにしても……今日初めて手にした私の不動だろうに、えらく巧みに使うよなぁ。やっぱ一流は全てに通じるってことなんだろうな。基礎ができてれば応用が利く的なさ。
「う……うう……」
あ、バルテレモンちゃんが姿を見せた。この子も全身ムラサキメタリックだけあって吹っ飛ばされただけで無傷なんだろうなぁ。つーかどこまで飛ばされてんだよ。
「おお聖女フラン、無事だったか。いやよかったよかった。」
「へ……陛下のおかげをもちまして……」
ぷっ、ジュダにやられたくせに。そういやバルテレモンちゃんは洗脳されてるのか? どうでもいいけど。
「ジュダ、こっちも決着つけようぜ。構えろよ。そのライフルぶち壊してやるからよ。」
「へぇ。大きく出たね。見れば分かると思うけど、これって砲身がアイリックフェルムなんだよね。できるぅー?」
「できるに決まってんだろ。お前みたいに狙いを外す下手くそとは違うんだよ。ほれ、撃ってこいよ。」
「では遠慮なく。」
ジュダの奴はゆっくりとライフルを構えた。そして引き金を……あれ? 引き金ないじゃん。どうやって撃つんだ? まあ、どうせ遅いけどね。
『狙撃』
「な? 上手いもんだろ。あっさり壊れたようだな。ほれ、他にもライフルがあるなら出していいぞ。」
「まさか銃口に命中させるとは……」
見た目的に壊れたのかどうかはよく分からないが、弾詰まりを起こしていることは間違いないようだ。変な爆発音もしたしね。
『狙撃』
ついでだから手元から弾いてやった。ぼけっとしてやがるな?
「まだやるか?」
やるに決まってるだろうけどね。
「ふふふ、いやー参った参った。魔王君てとんでもないんだね。原始人なんて言って悪かったよ。ねぇ縄文人君?」
「あ?」
これは挑発してるつもりなのか? 乗ってやるけどさ。
『火球』
『金操』
溶けかけた鉄をしっかり溶かして、バルテレモンちゃんを覆っておく。顔だけ出して。
「ちょっ、この下級貴族! 何をする気よ!」
いつでも殺せる状態にしただけ。どうやらこの子の鎧は純ムラサキではないのな。
「なあジュダよぉ。この子って必要なのか?」
「んー。まあ必要かな。だってかわいいしね。魔力は高いし治癒魔法だって使える。あと個人魔法だっけ? そこそこ使えるものを持ってるもんね。」
そこまで言わなくてもいいのに。個人魔法なんかどうでもいいんだよ。
「ジュダ様ぁ! ありがとうございます!」
「うんうん。ちょっとかわいい顔が見たくなっちゃった。兜脱いでよ。」
「はいっ!」
バカなのか? うわ、マジで兜を収納しやがった。この部屋が今何度あるかも分からないのか?
「あっ、熱っ! ジュダ様あつ、熱いで、す熱っ!」
「うん。いい子だね。はーい熱くない熱くない。それより君は最強の戦士だよ。剛力無双だ。さあ、それをぶち破って出ておいで?」
「はい……私は最強の戦士……剛力無双……ここから……出ます……」
何だぁ? いきなり目がとろんとしたぞ?
「出てきたら兜をかぶっていいからね。」
「はい……兜をかぶります……」
はぁ!? 何だそりゃ! ほぼ固まった鉄をぶち壊しただと? そんな細腕で!? どうなってやがる……
「どうだい、すごいだろ。やっぱり国王ともなると下の者が実力を発揮しやすい環境を作ってやらないとね。」
「その子まで使い捨てにするのか。」
「使い捨て? 変なことを言うね。道具ってのは使ってこそ意味があるものだよ。壊れない限り大事に使うに決まってるさ。」
やっぱこいつ外道だな。どうやったのかは知らんがバルテレモンちゃんのリミッターをぶち切った感じだろう。これができるってことは偽勇者の怪力もこの方法なのか? あれだけの大剣を軽々と振り回すなんてさ。
「貴重な治癒魔法の使い手が惜しくないってか。贅沢でいいな。じゃあもう終わりだ。」
『金操』
ぶっ飛べ。鉄塊メテオだ。お前の鎧がべこべこにぶっ潰れるまでやってやるよ。せいぜい防いでみやがれ。
「くっ、ぐっふっ、うっ……ふふ。」
マジかこの野郎……その手があったか……
直撃でダメージを受けつつも自分の魔力庫に収納しやがった……
それって勢いを完全に殺さないと不可能なはずだが、こいつの魔力庫はどんな設定してやがるってんだ……
「さあ、どんどん来てよ。ヒイズルで鉄は貴重だからね。寄付してくれて嬉しいねえ。」
「カース! こっちは任せて!」
むっ! バルテレモンちゃんが突っ込んで来やがった。アレクにお任せだな。
「任せた!」
さてこっちは……
『風操』
「そんなそよ風を吹かせてどうするんだい? そんなんじゃ小揺るぎもしないねえ。」
ふん……気が進まないけどな。一番確実な方法でぶち殺してやるよ。




