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異世界金融 〜 働きたくないカス教師が異世界で金貸しを始めたら無双しそうな件 〜 #いせきん  作者: 暮伊豆
第4章

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745、地下二十六階

はあぁ……アレク特製のシチューだぁ。めちゃくちゃ美味しい。体の芯まであったまるねぇ。ふうぅ最高。

シチューってご飯にかけて食べたいんだよな。しまったな。シチューだと分かっていればご飯も頼んでおいたのに。アレクの魔力庫に米は少しばかり入っているはずだから。うーん惜しかったな。




そして仮眠。がっつり眠りたいところだが、ジュダに追いつくのは少しでも早い方がいいからな。なるべくならあいつが外に出る前に追い詰めたいものだ。ジュダがここに入ったのは私達より二、三日前ってとこだろう。だとするとそろそろ追いついてもいいと思うんだよなぁ……




それからおよそ半日後。二十六階にまで到着。我ながら何という早さだ。地図があるとこんなにも違うのか。

さて、ここからは地図が少し複雑なんだよな。天井は低いしたくさんの氷の塊が道を塞いでいるもんだから。それでも丁寧に描いてあるせいか迷わずにすみそうだ。


「さすがの魔王もこっからぁゆっくり行くんかぁ?」


「当たり前だろ。どこに罠があるか分かったもんじゃないからな。何ならドロガー、先頭行くか?」


「やめとくぜ。足手まといにゃあなりたかねぇからよぉ?」


ここからの階層は罠が厄介らしい。なんせ視界は悪いし死角も多い。いい点はさっきより少しだけ寒くないってことだろうか。


「アレクはアーニャを頼むね。」


「ええ。任せておいて。」


ちなみに先頭は兄上が行くことになっている。近接無双の兄上なら適任だよな。私はそのすぐ後ろで地図を見ながら追随するのだ。行き先の指示を出しながら。


「兄上、そこ右ね。」


「分かった。」


おっと、魔物か。


「ゲギャギャギャギャギャア!」

「コガガガガガガガギギギィ!」

「ゲギャッギャッギャッギャ!」


ゴブリンだ。あいつらから聞いた通りではあるが。こんな中層でゴブリンが出るとはなぁ。通称『ホワイトベレー』。

カゲキョーの三十階あたりでも出たよなぁ。レッドキャップって厄介なゴブリンがさ。強さ的にはそいつらと同じ程度らしい。違うのは全身真っ白ってことぐらいかな。いつもなら黄色く汚い乱杭歯のはずだが、こいつらは歯も真っ白だもんな。白い歯っていいね。


「ゴブリンにしては強いな。」


「だよね。やっぱ迷宮だもんね。」


そんなホワイトベレーも兄上にかかっては一瞬だったが。ゴブリンなら一振りで三匹仕留める兄上が、一匹に三振りかかったから強いと評してるのかな?


「でも気をつけてね。こいつらが厄介なのはそこじゃないからね。」


「ああ。気をつけよう。」


そうなんだよね。ホワイトベレーどもって自分らも危ないくせに、全く気にせず罠を作動させまくるそうなんだよな。魔物って愚かだよなぁ。


それからもホワイトベレーは現れ続けたが、兄上は全く危なげない。姿勢も乱れなければ剣筋にも狂いなしだ。もちろん呼吸も乱れてない。このクソ寒い中で身体を動かしてるのにさ。いやぁすごいね。


「兄上、その先はしばらくまっすぐね。でも細いみたいだから気をつけてね。」


「分かった。」


げっ……マジで細いじゃん。横幅が一メイルもない。これはだめだな。アーニャが通れない。いや、アーニャが乗ってる鉄ボードが通れない……


「兄上、ちょっと待って。少し実験してみるから。」


「いいぞ。何をするんだ?」


『火球』


道が狭い原因は両側が氷の壁に挟まれてるからなんだよな。だから溶かせばいい。


うーん……だめだなこれは。確かに溶けるけど、効率が悪すぎる。鉄を溶かすより溶けにくいじゃん。氷のくせに。


「お待たせ。溶かすのは諦めたよ。」


「カースの炎でもあそこまで溶けないとはな。さすがは神の試練といったところか。」


「そうみたいだね。」


ならば仕方ない。


「アーニャ、そのままじっとしておいてね。」


「う、うん。」


点火(つけび)

金操(きんくり)


鉄ボードの形状を変える。上を向いた『コ』の字のように。そこにアーニャは横向きに寝てもらう。これなら通れるだろ。


「よし。これで大丈夫だね。兄上、先頭を代わるよ。」


「そうか。任せたぞ。」


こんな細い道だからな。天井だって低い……二メイルちょいしかないし。どんな罠が隠れてることか……


氷柱(こおりばしら)


そーら転がれ転がれ。こいつを先に行かせておけば罠なんて怖くないのさ。おっ、あそこか。氷柱が横にスパッと切れた。あの罠はいい切れ味してるね。

はいもう一回。


『氷柱』


罠がなくなるまで何度でもやるぜー?


ふむふむ。同じところは作動しないのね。いつも通りか。

他には落とし穴が開いたり上から槍が落ちてきたり。定番の罠ばかりのようだ。




「よし。一応だいたいの罠は見えた。そんじゃ行くよ。みんな油断しないでね?」


「ああ。」


兄上が油断するわけないよなぁ。




よし抜けた。だいたい二百メイルってとこか。狭っ苦しいところだったなぁ。出た瞬間を魔物に襲われることもなかったし。思ったより危なくなくてよかったよかった。こんな狭い場所で水でも流されたら堪らないからな。だから私が先頭を歩いたわけだが、何事もなくてひと安心だ。


さあ、ここを過ぎたら安全地帯までもう少しだ。安全地帯に立ち寄らず、いきなりボス部屋に行ってもいいんだけどね。やっぱ一応ジュダがいないかチェックしておかないとね。




やっと着いた。二十六階に着くまでは早かっただけに、ここまでがやけに遠く感じちゃうよ。あー疲れた。ここまでぶっ通しだったもんなぁ。


暖かい料理。旨い酒。そして風呂。相変わらず迷宮内とは思えない快適さだけど。まあ、贅沢を言えば風呂がマギトレント製じゃないことが惜しいよなぁ。普通に水壁の魔法で湯船を作っただけだ。寒いから維持するのに普段より魔力を食うんだよなぁ。




よし。全員さっぱりしたね。では仮眠タイムといこうか。クロミの水魔法に包まれて。はぁー快適快適。

例によって見張りはアーニャだ。


次に目が覚めたら、ジュダに追いつくまで止まる気はないからな……

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[一言] そろそろジュダに追いつきますか?
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